槍ヶ岳・北鎌尾根への無謀な挑戦は控えること―― 島崎三歩の「山岳通信」 第162号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年9月9日に配信された第162号では、技量不足の登山者がバリエーションルートに入ることについて言及。無謀な挑戦について警笛を鳴らしている。

 

9月9日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第162号では、8月26日~30日に起きた8件(うち1件は死亡事故)の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月25日、北アルプス白馬乗鞍岳で、家族と2人で入山した62歳の男性が、白馬乗鞍岳に向けて登山中にバランスを崩して転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は翌26日に、大町署山岳遭難救助隊、長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐隊により救助された。

  • 8月26日、北アルプス槍ヶ岳で、仲間と2人で入山した53歳の男性が、小槍に向けて登山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月25日、八ヶ岳連峰赤岳で、66歳の女性が滞在中の山小屋付近で転倒、負傷する山岳遭難が発生。翌26日に茅野署山岳遭難救助隊、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊が救助に向かい、女性は27日に県警ヘリで救助された。

  • 8月26日、北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根で、単独で入山した68歳の男性が、北鎌尾根を目指して登山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

槍ヶ岳・北鎌尾根での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)9月3日付

  • 8月27日、北アルプス前穂高岳で、ツアー登山9名で入山した69歳の男性が、岳沢に向けて登山中に滑落し、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月28日、北アルプス徳本峠で、8月25日から単独で入山している79歳の男性が、徳本峠方面に登山に向かったま行方不明となっていることを確認。28日時点で連絡が取れず、松本署員が捜索している。

  • 8月29日、北アルプス大天井岳で、仲間と2人で入山した74歳の女性が、疲労等からの体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。女性は北アルプス南部地区遭対協救助隊により救助された。

  • 8月30日、北アルプス奥又白谷で、仲間と5人で入山した71歳の男性が、奥又白谷において増水した沢を通過中に流され、行方不明となる山岳遭難が発生。翌31日に県警山岳遭難救助隊が男性を発見したものの、死亡が確認された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月5週は、8件の遭難が発生しました。26日に発生した単独登山者の北鎌尾根における道迷い遭難は、当初から尾根に登り詰める沢を間違え、途中で間違いに気がついたものの、ロープなどの装備がないために、急斜面を降りることも進むこともできなくなり行動不能となったものです。

北鎌尾根は有名な山岳小説の舞台となったこともあり、バリエーションコースとして人気がありますが、近年は実力不足の登山者による遭難が後を絶ちません。今年の夏山期間中も4件の遭難が発生しており、そのうち2件は行動中の疲労によるものでした。

北鎌尾根はアプローチを含め標高差も大きい長大なルートです。また、複雑な岩稜帯を進むため、いったん尾根を登り始めたら途中で引き返したり、脱出したりすることは非常に困難です。技術、体力、経験が揃っていることはもちろん、それに加えて気象条件が揃っていなければ無謀な挑戦になってしまいます。

高みや困難を目指すことは登山の醍醐味の一つですが、着実なステップアップを心がけてください。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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