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紅葉始まる八海山・八ッ峰の岩峰をめぐる ――スリリングな岩場を越えて絶景の展望を楽しむ

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2019年10月04日

古くから霊山として崇められてきた八海山。その頂への道は険しく長く、一定の技術と経験と体力を求められるが、紅葉の季節は、その岩峰と眼下に広がる新潟平野、そして極彩色の錦をまとった木々のコントラストがとくに美しい。

 

新潟県・八海山は、越後駒ヶ岳、中ノ岳とともに越後三山に数えられる名峰で、山岳信仰の山として険しい岩場の峰々が連なることで知らる山です。西側(上越線沿い)から仰ぐと、荒々しい岩肌に迫力があり、登山者の登頂意欲をそそる場所です。

山麓から中腹(四合目)まではロープウェイがかかっているため、一般的には山頂駅から登山を開始する登山者が大多数です。ここから山頂までの登山道は厳しい岩場を通ります。薬師岳を越えて千本檜小屋、そしてギザギザの岩峰と鎖場の登り下りが連続する八ッ峰をへて最高峰入道岳を目指すルートは、岩場に慣れた熟練者向けになるでしょう。帰路は八ッ峰をまく迂回路を利用しながらの往復となりますが、コースタイムは標準コースタイムは8時間を越える健脚も必要となります。

迂回路から見上げる八ツ峰の険しい岩峰。極彩色の錦をまとう姿が美しい(写真=奥谷晶)


しかし秋の紅葉の時期にいけば、澄み切った青空のもと岩稜を歩くスリル感満載の山旅となるでしょう。今回は最も一般的な、ロープウェイ山頂駅からの往復コースを紹介します。

モデルコース:ロープウェイ山頂駅~八海山・入道岳往復

行程:
山頂駅・・・大倉口分岐(四合半)・・・六合目女人堂・・・薬師岳・・・千本檜小屋・・・八ッ峰分岐・・・大日岳・・・入道岳往復・・・新開道分岐・・・迂回路・・・千本檜小屋・・・薬師岳・・・六合目女人堂・・・大倉口分岐(四合半)・・・山頂駅(約9時間)

⇒八海山周辺のコースタイム地図を確認

 

断崖絶壁の鎖場が続く岩稜に広がる極彩色の絶景

移動性高気圧による、つかの間の晴れが広がったのは10月17日(2016年)、貴重な秋晴れの1日を利用して八海山に行ってきました。

ロープウェイ山頂駅から赤い鳥居をくぐって急登の登山道を進むと女人堂(六合目)へと出ます。かつて女人禁制の山だった頃は、女性はここまで登って遥拝したそうです。

女人堂を経て急登の登山道を上りつめると、猿田彦の像がある薬師岳に到着します。薬師岳を越えて稜線に出ると一気に視界が開け、新潟平野が眼下に広がり、周辺には燧ヶ岳(ひうちがだけ)、苗場山、巻機山(まきはたやま)など上越の名峰の峰々の姿が目に飛び込んできます。

薬師岳を越えると展望が広がる。巻機山方面を遠望する(写真=奥谷晶)


そしてまもなく千本檜(せんぼんひのき)小屋に着くと、いよいよ本コースの核心部が見えてきます。これからめざす八ッ峰の最初の岩峰、地蔵岳、そびえ立つその特異な姿を正面に見てとることができます。ここで鎖場に向かう装備を整えます。

色づく八ッ峰稜線。ピークの向こうには新潟平野が広がる(写真=奥谷晶)


本登山のハイライトとなる八ッ峰の縦走路は、左右とも断崖絶壁の鎖場のある岩稜の登下降が連続します。八ッ峰の岩は礫岩(れきがん)で、丸みを帯びた石がもろい砂岩質に埋め込まれて堆積した岩なので、ホールドや
スタンスが乏しく、滑りやすく欠け落ちしやすいという危険な要素が多い岩場です。滑落事故も少なくない場所なので、鎖から手を離さず、細心の注意と緊張感を持って臨む必要があります。

八ッ峰の最後の岩峰、大日岳からの下りの鎖場。急傾斜で手強いので慎重に(写真=奥谷晶)


まず最初の岩峰が地蔵岳、続いて不動岳、七曜岳と続き、白河岳、釈迦岳のあとコルをへて摩利支岳、剣ヶ峰の鎖場をこえ、このコースで最も難度の高いと思われる垂直の梯子と鎖場を登り切ると大日岳です。

大日岳の頂上で一息つき、さらに最高峰の入道岳を目指します。鎖以外に手がかりのない急傾斜の岩場を慎重に下って尾根に降り、ここから尾根道をたどり最高峰の入道岳をピストンします。

大日岳からの帰路は迂回路を利用しますが、片側が切れ落ちた滑りやすいトラバースが続き、危険箇所が随所にあります。迂回路とはいえ気を抜くことはできません。

期待していた紅葉は、まさにこの八ッ峰の岩峰群より始まったばかりという印象で、この年は10月17日では少し早かったかもしれません。あと1週間もすれば岩峰が連なる八ッ峰の中腹を極彩色のタペストリーが埋め尽くす極彩色の絶景を見ることも可能でしょう。

見上げる八ツ峰の迫力の岩峰と、極彩色の錦のコントラストが美しい(写真=奥谷晶)

 

教えてくれた人

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と渓谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。週刊ヤマケイ創刊初期より5年にわたって表紙写真、登山地情報を投稿している。2019年山岳写真協会公募展入選。

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