丹沢一の紅葉と展望を丹沢最高峰の蛭ヶ岳で味わい、富士山をシルエットにした落日を鑑賞する

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広い丹沢山塊の中でも、特に紅葉が美しい場所の1つが最高峰の蛭ヶ岳の北側、姫次付近のカラマツ林だという。丹沢に本格的な紅葉シーズンが訪れるのは11月初旬から、この時期に蛭ヶ岳に宿泊してみるのはいかがだろうか?

姫次から左に目を転じると、丹沢山系最高峰の蛭ヶ岳がそびえ、カラマツ林が延びる(写真=白井源三)

 

アルプスなど高山の紅葉が話題になる9月下旬から10月初旬から1ヶ月ほどすぎると、関東近郊の山々にも紅葉の便りが届くようになります。

関東南部の丹沢山塊に紅葉前線が降りてくるのは11月上旬からです。もし、丹沢最高峰、標高1637mの蛭ヶ岳に訪れるなら、この時期を狙いたいものです。この時期の丹沢は空気も澄んでいて、展望も期待できるからです。

蛭ヶ岳へは、どのルートから入るにしてもアプローチが長く、日帰りで行くには日の短いこの時期はたいへんです。そこで、蛭ヶ岳の山頂で一泊するプランで行ってみるのはいかがでしょうか? 蛭ヶ岳は360度の展望に恵まれるうえに、静寂な山旅が出来るでしょう。

蛭ヶ岳山頂の売り物でもある相模平野の夜景観賞。遠く都心も灯り、眼下には相模湾と相模平野、また小田原方面まで煌めく(写真=白井源三)


さらに、11月初旬の蛭ヶ岳は、夕刻にダイヤモンド富士も見られる時期とも重なります。その日時にあわせて宿泊するのも良いでしょう(※2020年は11月1日頃の予定)。

紅葉と展望を満喫するには、相模原市緑区青根地区から入山し、丹沢主脈を辿り、北丹沢と富士山の展望台を通り、姫次の見事なカラマツの黄葉を鑑賞してから蛭ヶ岳登山するのがお勧めです。

公共交通手段が不便なこのルートはマイカー登山が一般的となります。マイカーで国道413号(通称どうしみち)神ノ川林道に入るルートを紹介します。

モデルコース:神ノ川林道~姫次~蛭ヶ岳

行程:
【1日目】神ノ川林道ゲート・・・八丁坂ノ頭分岐・・・ゲート・・・青根分岐/黍殻山避難小屋・・・八丁坂ノ頭・・・姫次・・・地蔵平・・・蛭ヶ岳(泊/約5時間)
【2日目】蛭ヶ岳・・・地蔵平・・・姫次・・・八丁坂ノ頭・・・青根分岐/黍殻山避難小屋・・・ゲート・・・八丁坂ノ頭分岐・・・神ノ川林道ゲート(約4時間)

⇒蛭ヶ岳周辺のコースタイム付き登山地図

 

黄金色に輝くカラマツ林から丹沢最高峰の蛭ヶ岳を望む

バス路線を使いにくい本ルートに入るには、マイカーで国道413号を進みます。青根から神ノ川林道に入っていくとゲート手前に駐車場があるので、ここに車を停めて出発です。

登山口からさらに林道を詰めていくと、八丁坂ノ頭に登るルートと分岐します。ここを通過して15分ほど先にある釜立沢ルートから登ります。本ルートは東海自然歩道のサブルートにもなっているため、登山道はよく整備されていて安心です。工事用モノレール車庫からが本格的な登山道の始まりです。

堰堤を越え、ベンチのある場所を過ぎて青根分岐を目指します。分岐下には黍殻避難小屋が設置されていまが、この避難小屋は綺麗で清潔のため利用価値がある場所です。

青根分岐からは焼山から延びてくる丹沢主脈(東海自然歩道)に合流して、姫次方面へと向かいます。分岐から20分ほどにある八丁坂ノ頭へ、さらに25分ほどで姫次に到着します。

丹沢主脈の展望台となっている姫次は、11月になると周囲のカラマツが鮮やかな黄金色に輝く(写真=白井源三)


ここからが紅葉の美しい場所です。黄金色に輝くカラマツ林から、これから登る蛭ヶ岳や前方の北丹沢の盟主・檜洞丸や大室山、そして背後にそびえる富士山を展望できます。

展望を十分に堪能したあとは、一段下に降りて原小屋平へ。ここから地蔵平までは、美しい落葉樹の紅葉のプロムナードが続くので、姫次とは違った紅葉を楽しめるでしょう。やがて山頂直下、階段が現れて急登すると蛭ヶ岳へ飛び出します。

蛭ヶ岳の広い山頂にはベンチが置かれ、相模平野や相模湾を正面に通年営業の蛭ヶ岳山荘が建っています。ここに宿泊すれば、富士山をシルエットにした落日、食後には相模湾を前方に都心から小田原方面の煌めく夜景が鑑賞出来るでしょう。

夜明け前、満月の山頂に佇むと、月光に照らされた富士山が雲海に浮かび、神秘的な光景が展開していた(写真=白井源三)


宿泊の翌朝は、相模湾から昇るご来光や赤く染まる富士山を初冬の冷気に触れながら展望出来ます。西丹沢・檜洞丸や表丹沢・塔ノ岳方面へ縦走路が延びているのを見ると、このまま縦走へと誘われていきそうです。交通手段が確保できるのなら、どちらに進んでも丹沢の山々を堪能できるでしょう。

蛭ヶ岳山頂から北丹沢側を望むと、檜洞丸や大室山が広がっている。年によっては富士山に新雪が被っていることもある(写真=白井源三)

 

プロフィール

白井源三

神奈川県相模原市生まれ。1989年ヒンドゥークシュ登山隊に参加、ゴッラゾム5100mに登頂。2005~2007年に南米取材。アコンカグアBCとインカ道をトレッキング。著書に『戸隠逍遙』(クレオ刊)、『北丹沢讃歌』(耕出版刊)、『冬の近郊低山案内』(山と溪谷社・共著)、『分県登山ガイド 神奈川県の山』(山と溪谷社・共著)など。丹沢の写真展を多数開催。

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