紅葉の山に行こう! 多くの種の紅葉になる木が生える群馬県みなかみ市/大峰山

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秋の深まりと共に、紅葉はさらに標高を下げていき、中級の山、そして低山へとその色づきを移しつつある。紅葉の美しい山はたくさんあるが、写真家の高橋修氏は、多くの種の紅葉になる木が生える​群馬県・大峰山を大峰沼経由で登ることをオススメしている。

北側から望む秋の大峰山。たくさんの種類の紅葉の木が植生する

 

10月中旬になり、そろそろ高山の紅葉の時期も終盤になる。10月下旬からは、中級山岳の紅葉がピークになり、11月には低山が紅葉のシーズンを迎える。9月から12月まで、日本の紅葉は長く楽しめる。日本はなんとすばらしい自然があるのだろうか。

日本で紅葉がすばらしいのは、日本海側の山が多い。これはスギやヒノキの植林帯が少なく、落葉広葉樹林が多いのが理由だ。さらにもうひとつ、落葉広葉樹は寒暖差が大きいと美しい紅葉になりやすく、急に冷えこむことが多い日本海側の中級山岳は条件としてとてもよい。

しかし、東京近郊から近い場所でも、美しい紅葉の山はある。私の好きな山は、群馬県のみなかみ町にある大峰山(1254m)だ。大峰山と言っても、紀伊半島の修験道と霊場で有名な大峰山ではない。関東の大峰山は、みなかみ町にある、谷川連峰の前衛峰とも言うべき中級山岳である。群馬県といっても、日本海側と同じ豪雪地帯で、気象条件は日本海側とほぼ同じだ。

紅葉の時期でも、リンドウの花もまだ咲いている


大峰山は、吾妻耶山とふたつのピークが並んだ山だ。展望がよい吾妻耶山と違い、大峰山の山頂は地味で、山頂よりも少し尾根を行ったところにある展望台のほうがよいだろう。紅葉はとても美しく、ブナやミズナラを中心に、ヤマモミジ、ウリハダカエデ、ヒトツバカエデ、カジカエデ、イタヤカエデなどカエデ類も多いのが特長である。

大峰山のトチノキの色づき。黄葉が美しい


よく聞かれる質問に、カエデとモミジの違いは? というのがある。結論から言うと、植物学的にはカエデもモミジも違いはない。「モミジ」は紅葉する様子の古い日本語の意味から名づけられ、「カエデ」は切れ込みの深い葉の形を蛙の手(前足の先端)から名づけられた。だから「カエデ」も紅葉すると「モミジ」になるし、「カエデ」のような葉の形をした「イロハモミジ」というカエデもある。

このようにカエデ属の植物は、たまたま「モミジ」と名付けられたものと「カエデ」と名付けられたものが混在しており、区別する必要など、はなからないのである。

オオカメノキの紅葉。この時は、まだまだら模様だった


大峰山の魅力のもうひとつは、大峰山の麓にある大峰沼だ。ここも紅葉が美しく、足元にはツルリンドウの果実が真っ赤に実っている。ヤマブドウの青黒い実、キウィフルーツそっくりの果実をしたマタタビやサルナシの果実も見られる。また大峰沼は起源が古く、関東最大の浮島があることでも知られており、ここの浮島は草もみじが美しい。

大峰沼の周辺のカラマツ。葉が陽の光に当たり黄金色に輝く


単調な紅葉ではなく自然条件が複雑な大峰山。何度行ってもいい山である。

公共交通機関はないので、マイカー登山でない場合は、JR上越新幹線上毛高原駅からタクシーでアプローチする。またはJR上越線の上牧駅から歩きはじめるが、車道歩きが非常に長い。下山後はみなかみ温泉など、下山後周辺にたくさんある温泉で、ゆっくりするとよいだろう。

 

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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