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日高山脈・アポイ岳~ピンネシリ縦走――、標高1000m未満の山で2000m級の情景を楽しむ

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2019年11月06日

北海道のアポイ岳と言えば、高山植物の山として知られ、花が咲き乱れる春から夏にかけてがベストシーズンと言われる。しかし、冬が目の前に迫る11月は、もう1つのベストシーズンが待っている。この時期だからこそ楽しめる、アポイ岳の縦走登山を紹介する。

背後に海岸線の眺望を楽しみながらアポイ岳を登る(写真=谷水亨)


北海道・襟裳岬の東岸近く、日高山脈の主脈からはるかに離れた位置にそびえるアポイ岳(810m)。ここからさらに北へと進路を取り吉田岳(825m)へと伸びる稜線は、固有種の高山植物が多く植生する「花の百名山」として名高い場所として知られています。

高山植物が多く咲くシーズンは5月初旬から9月下旬までで、5ヶ月の間に約80種類の可憐な花たちの開花リレーを堪能することができます。

この山域に固有種が多い理由は、地球深部のマントルがプレートの衝突によって地表に現れ、冷えて固まった奇岩類が山を形成しているからだと言われています。

こうした土壌に加えて、特殊な気候や地理的環境によって、1000mにも満たない低標高ながら高山植物が生息しているのです。

標高が低いこと、珍しい高山植物が見られること、低山のわりに眺望が良いこと、残雪や初雪によるリスクが少ない時期が長いことなどから、5月初旬から9月下旬の間は、多くの登山者が訪れます。高山植物の好きな人、夏山登山を待ち望んでいた登山者、体力に自信のない登山初心者と、さまざまな層の登山者で賑わいます。

しかし、アポイ岳からさらに北へと足を伸ばして、吉田岳からピンネシリ(957m)までの縦走となると、花の開花時期は登山者から避けられている時期です。

アポイ岳のさらに北、ピンネシリ中腹からから、歩いてきたアポイ岳を振り返る(写真=谷水亨)


稜線には春が過ぎても雪が残っているうえに、ようやく登山道が雪の下から現れても、笹藪が生い茂ってきて、今度はマダニが発生するためです。これでは登山者から避けられるのも無理もありません。

毎年のようにお花時期にアポイ岳およびアポイ岳~吉田岳までの山歩きを楽しみしている私でも、その先のピンネシリまでは数年に1回程度しか登りません。

そこで11月の初旬に、アポイ岳~ピンネシリまで縦走することをオススメします。大雪山系や日高山脈は、すでに雪が積もってリスクが高くなっていますが、アポイ岳は未だに夏靴で登れて、マダニがいなくなるこの時期は、ピンネシリまでの稜線を楽しめる適期となります。

モデルコース:日高山脈・アポイ岳~ピンネシリ

行程:
【日帰り】アポイ岳登山口・・・(140分)・・・アポイ岳・・・(35分)・・・吉田山・・・(90分)・・・ピンネシリ・・・(90分)・・・ピンネシリ登山口 (約6時間)

⇒地理院地図で詳細を確認

 

閑散とした山に広がる太平洋&日高山脈の大展望

アポイ岳へと向かったのは、2018年11月11日。当初の計画では自転車を持ち込み、単独縦走を考えていましたが、友人と2人で登ることになったので、車2台で様似大泉林道を走り、ピンネシリ登山口に向かいデポしました。

ピンネシリ登山口。車が2~3台ほど駐車できるスペースがある(写真=谷水亨)


様似大泉林道は急カーブが多く車幅も狭く、全線砂利道ですので、低速で慎重に走らなければなりません。とくに私の2輪駆動車では、より慎重に運転を余儀なくされました。到着したピンネシリ登山口駐車場は2~3台の駐車スペースがあり、そこに私の車をデポしてからアポイ岳登山口に向かいます。

開花時期を過ぎたアポイ岳は閑散としていました。登山届には、私たちとアポイ岳往復の登山者数人だけのようです。少し風が冷たいですが晴天のため、心地よい環境の中を登ります。

アポイ岳を後にしてピンネシリ(右奥)に向かう(写真=谷水亨)


避難小屋までの樹林帯を過ぎると視界が開け、カンラン岩が露出した登山道を登り、太平洋の海岸線の風景を楽しみながら、山頂へと着きました。

カンラン岩が露出した岩稜帯を進みながら吉田岳(右手前)を目指す(写真=谷水亨)


その後はアポイ岳を背にしながら吉田岳に向かいます。この稜線もカンラン岩が露出した岩稜帯であり、開花時期は高山植物で埋め尽くされていますが、11月初旬のこの時は、周りの木々も含めて冬支度の真っ最中でした。

吉田岳の山頂からは、山間から襟裳岬を見渡すことができる(写真=谷水亨)


吉田岳を過ぎ、白樺の樹林帯に入ったあたりからピンネシリまでは、笹が多くなり、鹿の踏み跡(獣道)もあって登山道は不明瞭になってきます。そのため、公的に付けられた赤札を見逃さないように注意して道を辿ります。

登山道が不明瞭となってくる樹林帯にまもなく突入する。慎重に道をたどる(写真=谷水亨)


稜線上やピンネシリ山頂付近からはアポイ岳・襟裳岬・太平洋・南部日高山脈などが見られ、1000m級の山といえど、2000m級の山々の情景を楽しむことが出来ました。ピンネシリ山頂の景色を楽しんだあとは、南日高の山々を見ながら稜線を標高差400mを下るだけです。

ピンネシリの山頂にて(写真=谷水亨)

ピンネシリからの下山途中、天上には美しい虹がかかっていた(写真=谷水亨)

日本の山 記録・ルポ
教えてくれた人

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

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(日本気象協会提供:2019年11月13日 17時00分発表)
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