このエントリーをはてなブックマークに追加

ヤマビルの体はどうなってるの? 吸った血はどこへ行くの? 解剖してお腹の中を見て見ると・・・

「子どもヤマビル研究会」によるヒルの生態研究
基礎知識 2019年11月25日

小さな体で血を吸うヤマビルは、吸血すると小豆粒のようにふっくら膨らみます。ヤマビルのお腹の中は、いったいどのようになっているのだろう? 誰もが気になるテーマです、ね? (知らなくてもいい?)  きっとお腹の中は風船のようになっていて、ここに血をためているのだろう、そう思っていましたが…。子どもたちの研究の成果をご覧ください。

 

解剖している研究員


早速、ヤマビルのお腹を切り開いてみると、風船ではなく、中にいろいろな臓器がつまっていました。ヒルが吸った血はどこに入っていくのだろう、と話し合いました。ヤマビルの親せき、チスイビルの解剖図が手に入り、合わせてみたら、消化管は細いすじのようでした。

チスイビルの解剖図 [参考文献  日本動物解剖図説 1971 森北出版]


この中央を通る細い消化管(赤色)に、たくさんの血が入って、大きくふくれるとは考えられません。それで、解剖図に色を付けてわかりやすくすると、「嗉嚢・嗉嚢盲管」という人間にはない臓器が、かなりのスペースを占めていることがわかりました。ここに、血を貯めているのではないかと思い、解剖を進めていきました。

この中をもう少し切ってみよう


実体顕微鏡で観ながら解剖を進めると、嗉嚢・嗉嚢盲管がはっきり見えました。

そこで、本当にここに蓄えられるかを確認するために、ヒルの口から注射器で牛乳を押し込んでみました。内臓を傷つけないように慎重に解剖してみると、袋のようなものがいくつかあり、それをつぶすと牛乳が出てきました。嗉嚢盲管に牛乳が入っているのがわかります。

嗉嚢盲管から牛乳が出てきた


今度はそれを詳しく確かめるために、先にヒルを解剖して、実体顕微鏡下で牛乳を入れてみたら、ちゃんと嗉嚢盲管に入っていくのが確認できました。

実体顕微鏡下で確認する研究員2人


ヒルが吸血するときは、まず前の部分を膨らませて吸血し、そのあと後ろの方に血を送る動作をします。嗉嚢に吸い込み、それを嗉嚢盲管に移して貯えているのです。この解剖結果と一致します。

以上の解剖と嗉嚢盲管に血液を貯めることを見つけたことで、「子どもヤマビル研究会」は、2018年三重生物研究会において、「中日新聞社賞」を受賞しました。

次に、ヒルは一度にどのくらいの血を吸うのか、測定してみました。注射器で口から水を入れ、吸血したときと同じくらいの大きさに膨らませます。

注射器で水を入れてみる


個体差はあるけれど、測ってみると、大体0.3cc~0.8cc(平均0.6cc)くらいでした。

この量、どう感じますか? ヒルに吸血された後は、服が真っ赤になるほど血が出るので、たくさん吸血されるように思いますが、ヒルの体に入るのは、たかだか0.8ccだったのです!! むしろ、出血が止まらないので、大量の血を吸われたような錯覚に陥るのでしょう。

本題に戻ります。ヒルは、雌雄同体です。移動距離もわずかなので、交接して産卵する過程を効率よくするために、生殖器は他の臓器に比べてとても発達しています。一番大きく目立っているのが、膣です。お腹を開くと、一番に目に飛び込んできます。最初のころは、心臓かと思っていました。

ここから産卵した卵は、ハチの巣構造になっていて、卵塊と呼ばれています。柔らかい地面に産み付けられ真珠のようにとてもきれいです。外径は1cm位です。この卵塊を産む瞬間はきっと神秘的だと想像しているのですが、まだ誰も見ていません。いつかぜひカメラで撮りたいと思っています。

ヤマビルの卵塊。これを産む瞬間は見たことがない


さらに別の研究員が、「山にはたくさんヒルがいるのに、そのお腹を満たすだけの動物と出合えるのかな」と疑問を持ちました。一説には、ヒルは1年に一度吸血すれば、生きていけるとも言われています。それを確かめようと、8月中頃、ヒルを50匹捕まえて来て、解剖して調べることにしました。

一晩で50匹の解剖をやってのけた強者研究員


その結果、50匹のうちの約70%は、嗉嚢盲管に血液を残していましたが、その量は少なく、しばらく前に吸血したということがわかります。残りのヒルは、吸血した形跡はなく、全体としてやせ細っていました。

つまり、満腹のヒルは出てきていなくて、この50匹は、吸血しようと出てきたものばかりだということです。ヒルは、お腹が空いたら吸血しに来る、ということが分かったのです。

このことは、2019年2月に、三重生物研究発表会で発表し、「三重県教育委員会賞」を受けました。

そうなると、ますますたくさんの動物と出合わないと、ヒルは栄養が摂れません。吸血できないと餓死することになりますので、「きっと何かほかのものを食べているに違いない」。子ども研究員の探求心は、食べ物に向いました。

この写真は、解剖したものを標本にしたものですが、消化管ははっきりしています。実際は髪の毛くらいの太さです。食道が長く胃や腸は、肛門近くにあります。

顕微鏡下の消化管(×10)。
たくさんの小さな命を頂いて研究しています。ヤマビルに感謝。


長い進化の過程で、これがはっきり残っているということは、今も使われていることが考えられます。動物に出会えない場合、生命維持のために何か血液以外のものを食べているのでしょう。ヒルはミミズの仲間なので、腐葉土などを食べているのではないかと思っていて、このテーマは現在も調査中です。吸血以外にどんなものを食べて栄養としているか、新たな発見があるかもしれません。

 

***

 

研究員たちは、解剖にも一生懸命取り組み、新しい疑問が浮かんでは、考え話し合い、仮設を立てて、次の実験をしています。

次回は、鈴鹿山脈では、「御在所岳より藤原岳の方がヒルが多い理由」、について研究成果を紹介したいと思います。

調査 危機管理 自然観察 スキンケア
教えてくれた人

子どもヤマビル研究会

「子どもヤマビル研究会」は、三重県の鈴鹿山脈の麓で、子どもたちが主体となってヤマビルの生態を研究している団体です。自然や生き物が大好きな小・中学生数名が集まり、身近な自然を観察し、そのしくみを解き明かしていく中で科学する心を身に付け、将来の科学者を志す子を育てたい、身近にいるヤマビルを使って、科学の手法を会得し、自然の不思議さ、偉大さやを理解して、自然に対する畏敬の念を育んでもらいたいという、子ども主体のとてもユニークな研究団体です。

活動はブログでも公開しています ⇒子どもヤマビル研究会

同じテーマの記事
連載最終回「ヤマビル雑学いろいろ」 ~子どもたちの好奇心を実験へ~
過去4回にわたって連載した「子どもヤマビル研究会」によるヒルの生態研究。最終回は、子どもたちの好奇心から行った楽しい実験の数々をご紹介!
ヤマビルが集まる場所と理由は? 御在所岳より藤原岳の方が、ヒルが多いワケ
同じ鈴鹿の山なのに、ヒルの多い山と少ない山があるのはなぜ? そんな質問を受けた「子どもヤマビル研究会」が、いくつかの着目点をもとに検証。山中のヒルを徹底観察して分かったこととは?
ヤマビルは、何に反応して集まってくるの? 足音、体温、呼吸――、その真偽は?
子どもたちが主体となってヤマビルの生態を研究している団体「子どもヤマビル研究会」。今回は「いつの間にか忍び寄り、吸血しているヤマビルは、は私たちの何を感知して近寄ってくるのか?」についての研究レポート。
ヒルは木から落ちてこない、すべて地面から登ってきたもの! ヤマビルについて正しく知ろう
「子どもヤマビル研究会」は、自然や生き物が大好きな小中学生数名が集まって、子どもたちが主体となってヤマビルの生態を研究している団体。
今回は「ヒルは木の上から落ちてくる」というウワサの真相を紐解く。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

晴時々曇
明後日

(日本気象協会提供:2020年4月7日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW グレゴリーの中・大型ザック「スタウト&アンバー」モニター募集!
グレゴリーの中・大型ザック「スタウト&アンバー」モニター募集! 背面長が無段階に調整できる「スタウト&アンバー」がアップデートにより快適性が向上!モニター4名を募集します
NEW 好日山荘で聞いた! グレゴリーバックパックの選びかた
好日山荘で聞いた! グレゴリーバックパックの選びかた 銀座 好日山荘のスタッフに、グレゴリーの登山用ザックについて、それぞれの特徴を聞きました。ザック選びの参考に!
NEW 新しい「トレントシェル」をフィールドテスト
新しい「トレントシェル」をフィールドテスト パタゴニアの定番レインウェア「トレントシェル」が、3層生地で耐久性アップ! 山岳ガイド佐藤勇介さんがフィールドでテスト
NEW マウンテンハードウェアの最新ウェアを試す!
マウンテンハードウェアの最新ウェアを試す! 高橋庄太郎さんの「山MONO語り」。今回はアクティブインサレーション「コアシラスハイブリッドフーディ」をレポート
NEW 海を渡り、山に登ろう。いざ、島の山へ
海を渡り、山に登ろう。いざ、島の山へ 全国各地の島の山から6山を厳選して紹介! いざ、海を渡り、山へ。
登山は「下山」してからが楽しい!?
登山は「下山」してからが楽しい!? 登山後、すなわち下山後の楽しみの1つが山麓グルメ。ご当地名物料理から、鄙びた食堂の普通の料理まで、その楽しみ方を指南!
安全登山に向けて、これからの登山情報収集術
安全登山に向けて、これからの登山情報収集術 ITジャーナリスト、山岳ガイド、書籍の著者の方々に話を聞きながら、安全に山を登るための情報収集の方法について、改めて考え...
サクラ咲く山で花見登山! オススメ桜の名所の山
サクラ咲く山で花見登山! オススメ桜の名所の山 街でサクラが散るころに始まるサクラの花見登山。山の斜面をピンク色に染める、桜の名所の登山ポイントを紹介
花の季節の前奏曲、カタクリの花が咲く山へ
花の季節の前奏曲、カタクリの花が咲く山へ 種から7年目でようやく花咲く、春を告げる山の妖精――。ひたむきで美しいカタクリの群落がある山を紹介!
何度登っても魅力な秩父・奥武蔵の山
何度登っても魅力な秩父・奥武蔵の山 のどかな里山を囲むように山々が連なる、埼玉県南西部・秩父・奥武蔵の山々。
春、花に会いに低山へでかけませんか?
春、花に会いに低山へでかけませんか? 暖かくなって、春の芽吹きが始まります。風のさわやかな低山を歩き、春を感じてみましょう。春を告げる花があなたを待っています...
春~初夏にツツジがキレイな山
春~初夏にツツジがキレイな山 花数が多いうえに花も大振りで存在感がある山、ツツジ。一斉に咲くと、ピンク、赤紫、白などの色が山の斜面を染める。