ステップアップして憧れの山に挑戦しよう! 北アルプス13日縦走までの具体例をご紹介!
登山用品専門店の好日山荘では、女性スタッフ有志が「おとな女子登山部」として活動し、ブログでの情報発信や、一般の登山者との登山イベントを行い、多くの登山者に山の魅力を伝え、安全な登山へと導いている。
今回のリレー連載では、「ステップアップして憧れの山に登るには?」をテーマに、好日山荘なんば店勤務で、登山ガイドの資格も持つ「つじまい」さんの、ご自身の体験を交えてのアドバイスを紹介する。
- 登山に目覚めてから北アルプス縦走まで。私のステップアップ
- 北アルプス長期縦走のための準備(ギア再考、経験、技術)
- ステップアップして憧れの山にチャレンジしよう!
みなさん、こんにちは。好日山荘なんば店勤務、「つじまい」です。
みなさんは登山を楽しまれるうえで、不安なことはありますか? または、いつか挑戦してみたいという目標はありますか?
登山でのいろんな不安が解消できたら、もっともっと世界が広がりますよね。登山は、適切な練習と経験によって、どんな方でもステップアップができるスポーツです。
今回は私の経験談から、登山の不安を取り除いてステップアップするための、ちょっとした秘訣をご紹介します。
運動が苦手だった私。屋久島で自然の魅力に触れ、山にハマる!
私の話になりますが、私はもともと決して運動神経が良いほうではなかったですし、体力も平均以下でした。マラソン大会では後ろから数えて何番目・・・という感じ(笑)。
ですので、大人になるまでこれといったスポーツをしていなかったんです。
きっかけは、オフィスでデスクワークをしていた2013年頃、屋久島でのトレッキングで自然の魅力に触れ、それから毎週のように山に出掛けるようになりました。
自分の周りに登山をする人がいなかったこともあって、ほぼ毎回のように「単独登山」でした。
はじめから人に頼る登山をしなかったのが、逆に良かったのかもしれません。無理をせず着実なステップアップをしてきました。
1年目 日帰り登山(屋久島の後は、金剛山周辺や奈良の低山など)
2年目 富士山、少し遠くの山(伊吹山や石鎚山など、少し遠出するような山へ)
3年目 北アルプス(テント泊で白馬、立山、穂高、剱岳など。経験を積む)
4年目 冬山(冬の伯耆大山、八ヶ岳・天狗岳、木曽駒ヶ岳など。夏には岩稜のテント泊縦走も経験)
・・・という感じです。
初めてのテント泊登山は3年目の時。まだ雪が残る奈良大峰の弥山に単独で行きました。岩稜の山を登ったのも登山を始めて3年目、槍ヶ岳でした。
その年の夏は北アルプスに夢中になり、たくさんの経験を積みました。年間100日以上、休日はほぼ登山に行っていたと思います。
山の世界で仕事ができたらどんなに楽しいだろう、と考えていた中で、「おとな女子登山部」の荻野なずな部長に憧れて好日山荘に入社したのも、この年でした。
テント泊装備を背負って岩稜帯の縦走をしたのは、4年目でした。冬山は、厳冬期の大山が初めてでした。八ヶ岳の天狗岳や木曽駒ヶ岳などに行きました。
こんなふうにステップアップをしていって、登山をはじめて5年目の2018年、焼岳から親不知まで、北アルプスを13日間かけての単独縦走に挑戦したのでした。
目標を達成するために様々な準備を行いました。ひとつずつ紹介していきます。
北アルプス単独縦走に向けた準備① 装備をより軽いものにチェンジ!
登山をはじめて5年、これまで使ってきた装備はどれも大切で愛着のあるものでしたが、この縦走を機に、思い切って一新しました。
主な装備を、より軽いものに。例えばこんな感じです。
テント:エアライズ2(アライテント)→カミナドーム1(ファイントラック)
ザック:エアコンタクト60(ドイター)→メイブン55(グレゴリー)
ヘルメット:エリア(ペツル)→シロッコ(ペツル)
スリーピングマット:コンフィライトマットレス(イスカ)→エアーマットUL LITE(エクスペド)
ガスコンロ:153ウルトラバーナー(プリムス)→ウィンドマスター(SOTO)
ただし、軽さだけを追求したUL(ウルトラライト)系のギアではなく、軽くて性能の良い、バランスのとれたギアを選ぶようにしました。
これによって1kg以上の軽量化ができました。
登山靴は丈夫なアルパインブーツを新調しました。
岩稜帯が多い北アルプスでは靴が命。靴が壊れると下山すらできなくなってしまいます。
体力が不安な方は一度、装備を見直してみてはいかがでしょうか? 新しい装備がきっと助けとなってくれますよ。
北アルプス単独縦走に向けた準備② 自分の限界を知る
みなさんは自分の限界をきちんと把握していますか?
私の場合、ザックの重量がだいたい20kgを超えると、とたんにスピードが落ちてしまいます。
ですので、北アルプスの縦走の時には、55リットルのザックに収まらなければ背負って行動できないと考え、荷物を厳選しました。おかげで水を含めた重量18kgでのスタートとなりました。
行動時間や歩くスピードも同じで、一日でどれだけ歩けるかの限界を知っておく必要があります。
山をなんとなく歩いていると分からないものですが、毎回荷物の重さを量ったり、標準コースタイムに対してどのくらいの速度で歩いているかを意識したりすると、自然と自分の限界が分かってきます。
限界を知っていれば無謀な計画を立てることもないですし、しっかり自分を信じて挑戦ができるはずです!
北アルプス単独縦走に向けた準備③ クライミングを体験する
みなさんはクライミングジムに行かれたことはありますか?
目標とされる山が、槍ヶ岳、劔岳、穂高、大キレット、ジャンダルム・・・など、急峻で岩場の登降が不可欠な場合は、事前にクライミングジムで練習しておくのがおすすめです。
一般登山道にクライミング技術なんて必要あるの? と思われるかもしれませんが、やっているのとやっていないのでは全く違います。
北アルプス縦走では、西穂高岳~奥穂高岳から大キレットや、八峰キレット、不帰の嶮、など北アルプスを代表する岩稜帯を通過しました。
大キレットでは雨風に吹かれながら行かねばなりませんでした。
2週間分のテント泊装備を背負って難所を通過できたのは、やはりクライミング技術があってのことだと思っています。
クライミングを続けていると、バランス感覚を身につけることができます。登山の練習の場合は、特に三点支持(両手・両足のうち三点で体を支え、残りの一点で登ったり下りたり、横へ移動したりすること)を意識します。
また、オブザベーション(ルートを見てどのように登るか想像する)を行う習慣がつくことで、持ちやすいホールド(岩)かどうか、どこに足を置くとより楽か、ということが自然に身についていきます。
これだけでも十分なのですが、高所が苦手だという方はぜひ、オートビレイシステムのあるクライミングジムをおすすめします。
ロープクライミングは少し敷居が高いですが、オートビレイシステムだと1人でも練習することができます。
北アルプス縦走登山の練習と思って始めたクライミングですが、次第にクライミング仲間も増え、今ではクライミング中心の生活になってしまいました。
まとめ: ステップアップして、憧れの山にチャレンジしよう!
みなさん一人一人、「苦手」や「不安」が違っているように、練習法や克服法もそれぞれの方法があります。
私の場合は、新しい装備を持つことで、かなりの不安が解消されました。
なんとなく、次の一歩を踏み出すのがこわいなぁ・・・という方は、どういった事に不安があるのかを具体的に絞ってみましょう。
私たち登山用品店のスタッフにご相談いただければ、解決することがあると思います。
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「いつかあの山に登りたい!」、そういう目標があると登山がもっと楽しくなります。
山だけではありません。
私自身も初心者からステップアップしていきながら、ガイドになろうと思ったのは、おとな女子登山部でツアー同行している中で、やはり荻野部長のようなかっこいい女性ガイドになりたい、と思ったから。
山が好き、山に登りたいという気持ちを大切にして、新しい世界へ一歩踏み出してみましょう!
プロフィール
つじまい(好日山荘おとな女子登山部)
奈良県生まれ。26歳の頃に屋久島を訪れ、登山に目覚める。2018年夏に、焼岳~親不知まで13日間かけテント泊単独縦走を行う。好きな山域は、屋久島、北アルプス、奈良大峰。ジャンル問わずクライミング活動に休日を費やす。2021年現在、好日山荘なんば店勤務。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・奈良山岳自然ガイド協会所属。
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら
好日山荘 なんば店
日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチNAMBA」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。
所在地/大阪府大阪市中央区難波千日前12-35 スイングヨシモトビル3F
TEL/ 06-6645-0630
営業時間/ 11:00~21:00
アクセス/ 大阪市営地下鉄御堂筋線・千日前線・四ツ橋線難波駅より徒歩約5分、近鉄・阪神大阪難波駅より徒歩約6分、南海難波駅より徒歩約8分、JR難波駅より徒歩約10分
好日山荘おとな女子登山部 リレー連載
登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。