八ヶ岳で本格的雪山登山への第一歩。 唐沢鉱泉より天狗岳周回

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12月になり、寒さも厳しさを増し、いよいよ雪山シーズンが到来。雪山装備を整えて、まずは八ヶ岳・天狗岳で足慣らしへ。

稜線から、めざす西天狗岳頂上へ(写真=奥谷晶)

 

12月中旬にもなると、高山は徐々に厳冬期へ向けて厳しさを増していきます。八ヶ岳は、通年営業の山小屋も多く、雪山登山のデビューやシーズン初めの足慣らしに丁度いいエリアです。

2017年12月15日、冬型気圧配置なる直前の晴れ間を見定めて、唐沢鉱泉より西天狗岳~東天狗岳へと周回してきました。まずは雪山の足慣らしと冬装備の実践的チェックが目的でしたが、直前の降雪もあり、すでに充分に厳冬期の様相を呈する本格的雪山登山の第一歩となりました。

西天狗岳の西尾根の樹林帯を登ると東天狗岳が見えてきた。鞍部に根石岳山荘も見て取れる(写真=奥谷晶)

 

モデルコース:唐沢鉱泉~天狗岳~黒百合平~唐沢鉱泉

行程:
【日帰り】 唐沢鉱泉・・・枯尾ノ峰分岐・・・第一展望台・・・第二展望台・・・西天狗・・・東天狗・・・黒百合平・・・唐沢鉱泉分岐・・・唐沢鉱泉(約7時間)

⇒天狗岳周辺のコースタイム付き登山地図

 

岩と雪の稜線から、大展望の頂へ

唐沢温泉より天狗岳西尾根を登り、西天狗岳〜東天狗岳をへて反時計回りに周回するコースです。樹林帯は10cmから20cmの新雪あり。すでに2、3人のトレースもありました。

朝方、唐沢鉱泉でマイナス8度、稜線ではマイナス12度ぐらいでしょうか。八ヶ岳山域ではそよ風といってもいいくらいの微風でしたが。寒さは厳しいものでした。樹林帯ではストックとチェーンアイゼン、第一展望台からは、強風が吹き荒れているという想定で、ピッケルと12本アイゼンとバラクラバなどの防風対策を施して進みましたが、予想通り、その対策が充分に必要なくらいの風の強さでした。
 

 樹林帯を抜けると岩混じりの岩稜が広がる(写真=奥谷晶)

 

予定通り、第一展望台でアイゼンとピッケルに換装、岩稜帯を進みます。西天狗岳の頂上へのゴロ石積み重なった岩場の登りは新雪と強風のせいか、岩についた印が隠れ、トレースが消えかかってわかりにくく、トレースを外すと太ももまで潜り込む吹きだまりもありました。

 

 西天狗岳頂上。赤岳、阿弥陀岳が姿を見せた(写真=奥谷晶)

 

頂上からは360度の大展望にめぐまれ、北アルプスが大パノラマが広がります。西天狗岳頂上から東天狗岳へ向かう時の雪の急斜面は、滑落に注意しなければならないところですが、クラストしていてアイゼンがしっかり効いて気持ちよく下りることができました。このあたりの稜線は遮るものがなく、吹雪・強風が吹き荒れる時には最大の注意が必要で、遭難事故も多く発生しているところです。(この2週間後にも吹雪に阻まれ低体温症で二人が亡くなる事故が起きています。)

 

 東天狗岳頂上より西天狗岳頂上を振り返る。北アルプスが背景に広がる(写真=奥谷晶)

 

東天狗頂上からは中山峠経由で黒百合ヒュッテを目指しましたが、雪の積もった岩稜帯の下りは踏み抜きやアイゼンの引っかけに神経を使いながら、下山しました。黒百合ヒュッテからはしっかりトレースがついた樹林帯の下りで登山口へ戻りました。

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 黒百合ヒュッテ。通年営業の貴重な八ヶ岳冬季登山の拠点(写真=奥谷晶)

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

 

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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