雪山を歩いてみよう! ~雪山の楽しさ、装備の紹介と注意点~

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登山用品専門店「好日山荘」の女性スタッフ有志による「おとな女子登山部」に、山のイロハを聞くリレー連載。今回は、いよいよシーズンが始まる雪山について、その魅力と注意すべきポイント、用意したい装備などを、好日山荘銀座店の「るんちゃん」にお話を伺いました。

 

 

今年も気が付けば年の瀬、雪山の季節がやってきました。高山植物に溢れるアルプスの夏山も良いですが、白一色の世界もまた違った魅力があります。雪国育ちなのに寒がりの私ですが、雪の山を歩く楽しさと注意点をご紹介していこうと思います。

 

どこに、どんな雪山があるのかを知ろう!

(1)関東近郊

雪山というとハードルが高いと思う方も多いでしょうが、関東や雪の少ない地域でも夏山装備にアイテムをプラスするだけで楽しむことができます。

滑り止めの軽アイゼン、寒さをしのぐ厚手の手袋やインナーがあれば、積雪時期でも奥多摩や丹沢を十分に歩くことができます。

晴れた日には霧氷(むひょう)(気温が氷点下の際、空気中の水蒸気が樹木などに凍結してできる氷のこと)がキラキラ輝き、様々な動物の足跡を発見したり、冬毛になったウサギと目が合ったり・・・同じ山でも全く違った景色や楽しみ方があります。

今年から雪のある時期に山を歩いてみたいという方は、まずは積雪量の少ない近郊の山から始めてみてはいかがでしょうか。

雪山では冬毛の動物と出会えるチャンスも?!


冬でも登りやすい山 大菩薩嶺/山梨

 

(2)ロープウェイでお手軽に雪山体験

慣れてきたらお勧めしたいのが、冬でもロープウェイが使える山。ロープウェイで一気に銀世界へ。頂上へ行かなくとも、本格的な道具がなくとも絶景を楽しむことができます。

代表的な場所は長野県にある入笠山や北八ヶ岳の北横岳、中央アルプスの木曽駒ヶ岳や、群馬県からの日光白根山などでしょう。そこには雪の白と群青の空、感動的な非日常の世界が待っています。

晴れていれば白く染まった日本アルプスや富士山など、見える景色も一層ダイナミックに。スノーシューレンタルや初心者向けツアーなどもあるので、それらを利用して楽しむのも良いでしょう。

ロープウェイを降りたらそこはもう銀世界! 北八ヶ岳の坪庭


中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイを使えば、ホテル泊で千畳敷カールの朝焼けを拝むこともできます


2月から3月にかけては東北の樹氷も見頃です。蔵王連峰や西吾妻(にしあずま)山などが代表的で、こちらもロープウェイで降り立ち、雪の中を散策することができます。北国でしか見られない巨大アイスモンスターは圧巻! 夜間にライトアップもしている時期もあるので泊りがけで出かけるのも良いと思います。

蔵王のアイスモンスター


ただし悪天時や不十分な装備で遠くまで行くのは厳禁です。雪の状態によっては本格的な雪山装備の12本爪アイゼン、ピッケルが必要な場合もあるので、安易な気持ちで足を踏み入れないよう注意してください。

 

(3)豪雪地帯の山

1,000mに満たない低山、関東では雪が降ってもせいぜい数十cmでしょうが、それが豪雪地となると話が全く変わってきます。500m~600m程度の山でも真冬は胸まで雪に浸かり、一歩進むのがやっとという状況。こうした雪国の山で必要になってくるのがスノーシューやワカンといった歩行道具です。

前日に大雪が降り、翌日が快晴という日には、私の地元・新潟県の山は多くのハイカーで賑わいます。新雪の上に自分のトレース(足跡)を付けようと、みな必死に先行争いをするほど。日が昇って踏み跡が十分にできてから登り出した方が楽ですが、必死にラッセルをして汗をかくのも楽しいものです。

ふかふか雪の場合は、ワカンよりも浮力の高いスノーシューがおすすめ。ワカンでは腰まで潜ってしまうような場所も、スノーシューなら膝上くらいで食い止めることができます。

過去の体験談なのですが、ある1月の快晴の朝、友人と2人で地元の里山へスノーシューで出かけた時のこと。山頂まであと1時間という場所で、ワカンでラッセルしていた先行者がいました。

やはり腰まで潜って必死にあがいている様子。我々が近づくとパッと笑顔になり、「スノーシューが来た! 先行頼むね!」と言われました。

それだけスノーシューは馬力があり、頼りになる存在なのです。雪深い山では誰もが認める、「除雪車」のような仕事をしてくれます。

ただし弱点もあります。浮力には長けたスノーシューですが、なんせ重量と幅があるので、狭い場所では小回りが利かず、方向転換も一苦労。種類によっては傾斜にも弱くかえって危険な場合もあります。そんな時は軽くてコンパクトなワカンが力を発揮します。

新潟県の五頭山(ごずさん)でスノーシューハイキング


スノーシューでラッセル先行すれば「助かった~!」なんて感謝されるかも!?


スノーシューでラッセルに励む。新潟県の粟ヶ岳(あわがたけ)にて


ところでスノーシューとワカンどちらを買うべきか悩みますが

  • どの山にいつ登るのか
  • 荷物はどれくらいか
  • 人が入っている山かどうか(情報があるのか、トレースがあるのかどうか)
  • 休日に登るのか平日に登るのか(トレースがあるのかどうか)

といった点を、ご自身で確認していただくのがよいでしょう。

それがわかれば、店舗スタッフも最適な方をおすすめできます。

 

雪山だからこそ。地形を読む楽しさがわかります!

登山の1つの技術として、「地図を読む」のは慣れや経験が必要です。実際私もまだまだ経験が足りません。そんな私でも雪山を歩くようになって、読図の楽しさ、地形を読む楽しさが少し分かったような気がします。

雪山では、木々や建物まで雪に覆われ、様相が一変します。トレースがあったとしても、登山道が夏のように明確ではありませんが、雪の上に自由に足跡を付ける喜びを味わえるのが雪山の醍醐味だと思います。

天気の良い日は、特に尾根と谷がはっきりとするので、目の前に地形が浮かび上がったような感覚を覚えた時はとても感動しました。

また、地図と睨めっこしながら、夏のルートはここだけど、この尾根を辿れば下山口に合流できそうだ、などと検討を付けてそれが的中した時は非常に達成感があります。

足元が空洞だったり、崖だったり非常に多くの危険を孕(はら)んでいることもありますし、下りてみたら崖だったり、首まで雪に埋まってしまったりと失敗も多くありました。無事に正規ルートに復帰できたのはまぐれだったかもしれませんが、読図の楽しさを知ったのは雪山だったような気がします。


冬は尾根がくっきり分かりやすい。 新潟の菅名(すがな)岳にて

 

雪山を始めるのに必要な装備は? 夏山装備で代用できるもの、雪山のために必要なもの。

雪山に行ってみたい、雪山を始めてみたいと思ったとき、まず悩むのが装備だと思います。

季節や場所、標高、天気など様々な条件にもよりますが、標高1,000m以下の低山スタイルの場合は、基本的に夏山装備からのアップグレードが必要となります。

具体的には

  • 登山靴はミッドカットかハイカットでしっかりしたソールのものに変更
  • ベースレイヤー、パンツは秋冬物の厚手に変更
  • 防寒着としてフリースやダウンジャケットを追加


「アウターシェル」は、夏山用のレインウェアでも問題ありませんが、生地の丈夫な「ハードシェル」と呼ばれるタイプに替えると、天候が安定しない場合には、より安心です。

また、頭や、「首」とつく部位(首、手首、足首)は、皮膚と太い血管との距離が近く、外気の影響を受けやすいので、冷えてしまわないようにニット帽、ネックゲイター、手袋等でしっかりと保温します。身体の内側からは保温性のボトルを持参し、暖かい飲み物を飲むことで体温を維持するようにします。

ここで特に触れておきたいのが手袋のチョイスに関して。私自身も毎年試行錯誤しています。

夏山では1枚で済んでいたものが、雪山では濡れたときの替えを最低2枚、防水のものを1、2枚と、バーナーを使う時の作業用、寒さに耐えられなくなったときの保温用、ラッセル用…。山行に合わせて何種類かを使い分けています。

初めての雪山でつい手袋を雪で濡らしてしまい凍傷寸前に陥ったことがあります。そうなってしまうと、一刻も早く下山することばかりを考え、注意も散漫になってしまいます。

分かっていても、最初のうちは何度も痛い思いをしていました。万が一、替えの手袋を忘れた…なんてことがあれば、その日の山行は即中止。そのくらい手の防寒は大事だと思っています。

シーズンで初めて雪山へ行く前には、手袋のチェックを第一に行っていて、穴が空いたものは補修するか、夏用に回しています。

雪山を始める方は、私のような失敗をしないよう、まずは手袋を入念に選んでください。年々、高性能な手袋が出ていますので、実際に店頭で試してみるのもおすすめです。

この他にも、雪の乱反射で想像以上に肌が焼けてしまいますので、「日焼け止め」は忘れずに。目からも紫外線が入って来るので、「サングラス」は必須です。おとな女子たるもの、「日焼け一瞬、シミ一生」と、心して(笑)しっかり予防しましょう。

雪山歩きは夏山以上に注意すべきことがたくさんあります。しかしそれらを少しずつ克服すれば、この時期にしか味わえない楽しさや感動が待っています。十分な知識と装備で雪山へぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。

 

参考リンク: おとな女子登山部ブログ『山へのしたく・よそおい』冬山ギア

 

おとな女子登山部の雪山ツアー&雪山講座

おとな女子登山部では、この冬、女性限定の雪山講座、雪山ツアーを開催しています。雪山についてもっと詳しく知りたいという方、ぜひ参加してみてください。

《関東》

「初めての雪山(軽アイゼン編)」講座@池袋西口店

1月16日(木)19:00~20:00
http://www.kojitusanso.jp/school/classroom/detail/?p=3967

 

《関西》

「雪山へ行こう(初級編)」講座@グランフロント大阪店

1月8日(水)18:30~19:30
http://www.kojitusanso.jp/school/classroom/detail/?p=3281

 

おとな女子登山部 雪山ツアー、雪山講座はこちら!

http://www.kojitusanso.jp/otonajoshi/join/schedule.php

 

春に訪ねた大好きな飯豊連峰

プロフィール

るんちゃんさん(好日山荘おとな女子登山部)

新潟の自然豊かな田舎で育つ。20代後半の時、観光ポスターを見て秋の千畳敷に出かけ、山と出会う。以後、アルプスの山々に憧れて、山登りを始める。標高を問わず、長距離を歩く縦走登山が好き。最近のお気に入りは飯豊、朝日など渋めの山域。転勤してからは奥多摩に興味津々。現在、銀座店勤務。
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら

銀座 好日山荘

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチ」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。

所在地/東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビルB1・B2
TEL/ 03-6228-5018アクセス/銀座駅B7、B9出口より徒歩2分。有楽町駅南口より徒歩5分。
営業時間/月~金 12:00~21:00 土日祝 11:00~20:00
※コロナ禍で営業時間が変更になる場合があります
http://www.kojitusanso.jp/shop/kanto/ginza/

好日山荘おとな女子登山部 リレー連載

登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。

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