福岡近郊の山へ氷瀑を見に行こう。福岡県三郡山・宝満山

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冬限定の氷の芸術! 寒波が来たら、河原谷の大つらら(難所ヶ滝)を見に行こう。1000m以下の低山で氷瀑が見られる人気の山。

自然がつくりだした氷の芸術・河原谷の大つらら(写真=池田浩伸)

 

福岡近郊の山に、冬限定の見事な氷爆が見られることをご存知ですか?「氷瀑」とは、聞き慣れない言葉ですが、氷結した滝のことです。

冬でも暖かい九州で「滝が凍る」と聞けば、熊本から宮崎へと続く九州中央山地や、九州の屋根と言われる九重連山などの標高1700m級の白銀の峰々を思い浮べると同時に、寒くて危険なのではと不安な想像もしてしまいそうです。

しかし、ここで紹介する滝は、宝満山(ほうまんざん、829m)と三郡山(さんぐんさん、936m)をつなぐ稜線直下にあり、雪山初心者でもしっかり準備をすれば、「河原谷の大つらら(通称・難所ヶ滝)」を見ることができる人気のスポットです。例年、1月~2月に見ることができます。防寒対策とアイゼンを準備して、大自然が作り出す氷の芸術を見に登りませんか? 

難所ヶ滝鑑賞だけでも充分な見応えですが、登山経験があれば福岡県中央部を南北に貫く三郡山地の主峰・三郡山と、福岡で最も人気の宝満山を結ぶ稜線のスノートレッキングもおすすめです。経験と体力に合わせて、難所ヶ滝・三郡山・宝満山を組み合わせて計画を立ててください。

雪のトンネル。積もった雪がドサッと頭に落ちて驚くことも(写真=池田浩伸)

 

モデルコース:一本松公園(昭和の森)~難所ヶ滝~三郡山~宝満山~一本松公園(昭和の森)

 

行程:
【日帰り】 一本松公園(昭和の森)・・・河原谷コース・・うさぎ道分岐・・・難所ヶ滝・・・縦走路難所ヶ滝分岐・・・三郡山・・・宝満山・・・河原谷分岐・・・一本松公園(昭和の森) (計約6時間5分)

⇒コースの詳細を確認する

 

雪のトンネルを抜けて、大つらら鑑賞

三郡山地は、日本海からの季節風を直接受けるので、降雪量が多く、厳冬期には素晴らしい雪景色を見せてくれます。しかし、稜線上は厳しい寒さを伴う冬山です。アイゼンや防寒具などしっかりとした装備が必要です。

登山準備が整ったら、いざ出発。一本松公園(昭和の森)の第1駐車場のゲートの横には、福岡県森林浴100選に選ばれた昭和の森や四季の楽しみ方や登山の注意事項が書かれた説明板があり、一読しておきましょう。

一本松池の北側を回り込むように未舗装の道を進みます。途中、難所ヶ滝までの距離を示した標識が目安になります。

しばらく行くと、大きな岩が並んだ宇美新道分岐があります。体が温まってきた頃でしょう、汗をかく前に衣服調整の休憩をとりましょう。

砂防ダムを過ぎると登山道らしくなり、岩まじりの歩きづらい道に変わります。難所ヶ滝鑑賞だけが目的の人たちは早くも下山してきています。「綺麗だった」「すごかった」の声に気持ちがはやりますが、一歩一歩確実に進んで行きましょう。

次第に雪景色となり、標識がたくさん付いたうさぎ道分岐に到着します。うさぎ道は宝満山へ通じる道です。ここは直進して三郡山方向へ進みます。

すぐに、沢の中の岩を伝って対岸へ渡るポイントが現れます。積雪の状況によりますが、私はこの付近でアイゼンをつけるかどうかの判断ポイントにしています。

たくさんの氷の柱ができた小つらら(写真=池田浩伸)

 

更に進むと、右に「小つらら前」の標識があり、その後ろに、鍾乳洞の天井から垂れ下がった鍾乳石のような氷の柱が幾段にも重なった氷の壁が現れます。これだけの迫力があっても小つららです。大つららへの期待が膨らみます。

難所ヶ滝分岐を左へ行くと、いよいよ大つららです。岩肌をつたい落ちる雪解けの水や雨が、強い寒気によって凍ったもので最大で長さ20mにも発達すると言われ、大自然が作り出す巨大な氷の芸術に言葉を忘れてしまいます。付近は足場が悪く、暖かい日が続くと氷が落ちてくることもあるので、安全な場所で鑑賞しましょう。

大つららの前は混雑するので、谷を少し登ってツララをバックにポーズをとる人(写真=池田浩伸)

 

難所ヶ滝を右に見て、谷を進むと縦走路・難所ヶ滝分岐に出ます。ここからは、緩やかなアップダウンの稜線をスノーハイク。

緩やかなアップダウンが続く三郡山までの雪の縦走路(写真=池田浩伸)


頭巾山分岐を過ぎるとレーダー施設がある三郡山山頂に着きます。英彦山や脊振山地など展望は雄大です。
稜線を戻り展望岩、長崎鼻、八葉の峰展望台を過ぎて、竈門神社上宮が祀られた宝満山山頂へ。展望を楽しんだら河原谷分岐まで戻り、急坂を下ると往路に合流して出発点まで戻ります。

宝満山頂からの展望と雪景色(写真=池田浩伸)

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

プロフィール

池田浩伸

佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。

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