冬山登山では夏山以上にアクシデントに対応できるような準備を 島崎三歩の「山岳通信」 第173号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年12月19日に配信された第173号では、冬山での遭難救助の難しさについて言及し、夏山以上にアクシデントに対応できるような準備をしておくことを促している。

 

12月19日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第173号では、12月14日~15日に起きた2件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 12月14日、八ヶ岳連峰横岳裏同心ルンゼで、仲間と2人で入山した50歳の男性がアイスクライミング中に足を滑らせ滑落し、負傷する山岳遭難が発生。男性は茅野署山岳遭難救助隊と諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊により救助された。

八ヶ岳連峰横岳裏同心ルンゼの遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)12月16日付

  • 12月15日、北アルプス西穂高岳で、仲間と3人で入山した39歳の男性が下山中に何らかの原因により滑落し、死亡する山岳遭難が発生した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

12月9~15日の期間では、八ヶ岳と西穂高岳で遭難が発生しました。八ヶ岳ではアイスクライミング中に足を滑らせ滑落し、骨折等の重傷を負っています。現場周辺は強風により、ヘリコプターによる救助はできなかったため、救助活動を地上から行わなければならず、救助活動は深夜に及びました。西穂高岳では滑落により県外に居住する男性が亡くなっています。
冬山で遭難すると、状況によっては救助されるまで相当の時間がかかる場合があります。その間、遭難者本人や同行者は現場で風雪と寒さに耐えながら、救助を待たなければなりません。
冬山に入山する以上、遭難のリスクは誰しもあるものです。アクシデントに対応できるよう、非常用の装備を携行し、訓練を積んでから入山してください。

 

長野県令和元年冬山情報 配信中

長野県警察では、長野県内の冬山での活動での注意点などをまとめた、「令和元年冬山情報」を今年も発表した(PDF)。本ドキュメントには、冬山で遭難しないための心構えや準備、各山岳地域の情報のほか、近年とくに増加傾向にあるバックカントリースキー中の遭難事例について詳しく説明している。

また特定非営利活動法人日本雪崩ネットワーク理事の出川あずささんへのインタビューなど、冬山での活動のためになる情報が多数掲載されている。

令和元年冬山情報

冬山は、吹雪や寒冷、雪崩など、厳しい自然条件下での登山となることから、他の季節にはない特有のリスクがあります。冬山を登るためにはそれらのリスクを回避する経験、判断力及び強靱な体力、確実な技術が必要になります。

昨年12月から本年3月までの期間中、53件の遭難が発生し、死者7名を含む61名が遭難しています。凍結した稜線での滑落、悪天候下での行動による低体温症、バックカントリースキー・スノーボート中の雪崩や立木への衝突など、遭難の態様は様々ですが、自己の実力や状況を適切に判断していれば防ぐことができたと思われるケースも見受けられます。

入山前は気象情報や積雪状況などを確認して、事前の計画段階から、厳しい環境に対応できる準備を整え、余裕のある日程で安全な登山に心がけてください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

編集部おすすめ記事