北海道の冬山訓練定番エリア。十勝連峰・上ホロカメットク山へ

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北海道中央部に位置する十勝連峰。安政火口付近は冬山訓練の定番エリアで、毎年12月には多くの山岳会らが集まり、訓練に励んでいる。訓練参加後には、上ホロカメットク山へ。

上ホロカメットク山頂から見た十勝岳(写真=谷水 亨)

 

12月に入ると毎週土日にかけて、北海道中の山岳会や有志達がこぞって十勝連峰・安政火口に集まってきます。ピーク時にはテントだけでも10~30張りは乱立し、100人近くは安政火口付近で冬山訓練を実施しています。本格的に冬山登山や登攀にむけて、適度な降雪はスキー歩行と弱層テスト・雪崩埋没救助訓練、適度なクラスト斜面ではアイゼン歩行・滑落訓練・ロープワークなど、多種多様の訓練が出来る条件が揃っているからです。

安政火口付近で訓練をする登山者達(写真=谷水 亨)

 

また、訓練の仕上げとして、北西稜・八ツ手岩・化け物岩の登攀や三段山・上ホロカメットク山の冬山登山をめざすパーティーも多いため、踏み跡やトレースが付いており、個人や少人数のパーティーの冬山中級者にとっては、ルート把握や経験を積める絶好の時期にもなるのです。

冬山初心者でも、安政火口までなら渓谷沿いに緩やかな斜面を登るコースになるため、雄大な富良野盆地の風景を背負いながら、スノーシュートレッキングを迷うことなく十分に楽しめるコースでもあります。時間も1時間30分もあれば往復できますので、晴れた日中をねらって楽しんでください。

訓練を終え、テント泊地に戻る登山者(写真=谷水 亨)

 

モデルコース:十勝岳登山口~上ホロカメットク山(往復)

行程:
【日帰り】十勝岳登山口・・・D尾根・・・上富良野岳・・・上ホロカメットク山(約4時間35分)

⇒上ホロカメットク周辺のコースタイム付き登山地図
*夏山のコースタイム

 

冬山訓練後に、単独で上ホロカメットク山をめざす

2018年12月3日、前日に冬山訓練を終えた私は、一人現地に残り、単独で上ホロカメットク山をめざしました。昨日までの天候とは打って変わって、快晴で天候も安定した予報でした。十勝岳登山口からスキーを装着して、一昨日に泊まったテント泊地を通り過ぎ、安政火口まで向かいます。

安政火口からはアイゼンに履き換え、ストックをピッケルに持ち換えて、火口尾根を登り始めます。隣の尾根には一昨日の訓練を行なった斜面があり、縦横無尽の足跡や雪洞を崩した後などが見えました。この火口尾根は時折、ウインドクラストして凍った土面が出ており、アイゼンの歯も5mm程しか刺さらない箇所もあり、ジグをきりながら慎重に登っていきます。前方には目印でもあるナキウサギの形をした岩が現れ、その脇を登ります。

安政火口から火口尾根を登る。ナキウサギに見える岩が目印だ(写真=谷水 亨)

 

やがて深雪になり、昨日登ったであろうパーティーの足跡がしっかりと付いていました。足跡は階段状についており急斜面でも安心して登れましたが、ピッケルが手元まで埋まる深雪です。稜線の雪庇もこの時期は発達してないので安全にD尾根に登ることが出来ました。

D尾根の稜線(写真=谷水 亨)

上ホロカメットク山頂が目の前だが上富良野岳を経由しなければならない(写真=谷水 亨)

 

ここからは、ウインドクラストした稜線上の急斜面・緩斜面に深雪の膝ラッセルを織り交ぜながら上富良野岳に登りました。天候が悪ければここから先に進むのは危険ですが、本日は晴れたり雲がかかったりの一日で、迷う程の天候でないと判断して、一旦下ってから上ホロカメットク山に登ってきました。山頂では十勝連峰の主峰、十勝岳が時折顔を覗かせます。また、ブロッケン現象も出現して本日の山行に花を添えてくれました。

山頂から見た十勝岳とブロッケン現象(写真=谷水 亨)

 

とはいっても、気温はマイナス10度以上で風速は10m程、雲が西方から湧き上がってきているので、数分ほど撮影をした後に早速下山を開始しました。案の定、上富良野岳からD尾根を下るとホワイトアウト状態になりました。地形は判別できませんが足下の踏み跡が見えたので、火口尾根取り付きにあらかじめ付けていたデポ旗まで進みました。デポ旗からも化け物岩から登ってきたであろうトレースが、その先に続いていましたが、自分で付けたデポ旗で取り付きがわかり、迷うことなく火口尾根を降りることが出来ました。

D尾根を下っていく(写真=谷水 亨)

 

▼今回の山行コースの動画

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

プロフィール

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

Youtubeでも北海道の山々の魅力を動画で配信中。Youtubeチャンネル

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