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冬の時期“雪のない山”での登山で気をつけたいこと

山の疑問・難問、山岳ガイドが答えます!
基礎知識 2020年02月03日
匿名希望さんからの質問!

質問:冬の期間、登山はいつもお休みしていますが、今年は、雪のない山で登山を楽しんでみようかなと思います。雪のない冬山で注意すべきポイントを教えてください。

 

雪のない冬山へ。注意すべき5つのポイント

太平洋側の山々は、冬の時期は晴れ間が多く、乾燥した空気の下で展望がききます。登山者も少なく、静かな山が楽しめます。ただ、首都圏近郊の山で言えば、丹沢や奥多摩などで、標高1000m前後の山であっても、絶対に雪がないという保証はありません。都心で冷たい雨の降った後などは、低山であっても山には降雪があったと考えた方が良いでしょう。

太平洋側の低山に限って言うと、以前は、1月末頃までは、全く雪の無いことが多かったのですが、ここ数年、こういった季節感の常識は当てはまらなくなりました。記憶に新しいのが、 2020年1月8日。 新年を迎えたばかりの1月に春一番に近い南風が吹きました。春一番が吹くのは、名前の通り春の気配がしてから、というのが普通でしたが・・・。

3月の雲取山。東京の一角でも例年雪に覆われる

 

そこで、雪のない冬山を楽しむために、以下を注意すると良いと考えます。

  • まずは、“雪のない冬山を楽しみたい”と考えていても、雪への備えは忘れないことです。シューズはミドルカット以上の深みのある登山靴で、雪や霜解けのドロが靴の中へ侵入するのを防ぐスパッツ(ゲイター)を準備し、積雪や踏み固められた氷雪に備えて軽アイゼンやチェーンスパイクを用意します。特に最近、多くの登山者が愛用しているチェーンスパイクは、踏み固められた雪だけでなく、霜解けのドロ道でも歩行しやすく、かつ登山道をアイゼンのように削って傷めることが少ないなど、この季節に持っていたい装備のひとつです。

  • 山行10日前頃から天気の推移を確認します。登山予定の山域で降雪があったと考えられる際は行先を変えたり、雪の準備を万全にすると良いでしょう。

  • もし、実際に山へ行って、登山道を覆うほどの積雪があった場合は、あっさり引き返すことをお勧めします。

  • 日没の時間は少しずつ遅くなり日照時間は延びてはいますが、それでも冬の時期は安心して行動できる時間は少ないです。時間的に無理のない計画を立てましょう

  • 積雪や地面の凍結などの冬ならではの困難は、北側斜面にある可能性が高いです。暖かく乾いた南面から寒い北面に横断するような山行計画は慎重に!

2019年3月の春分の日に、奥多摩の三頭山を訪れた10名を越える登山グループが、南面の「都民の森」から歩きだし、折からの降雪の中、山頂に立ち、北面の急斜面を奥多摩湖に向けて下山する途中に滑落や行動不能に陥った事故がありました。春分の日と言えば、都心では、最近は桜の開花も見られる季節です。「まさか雪!」と思われる人も多いかと思いますが、実は、太平洋側の低山では3月、4月の雪のトラブルは少なくありません。山には山の季節感があるのを忘れないでください。

 

冬に歩くのを楽しみにしている「浅間嶺」

冬ならではの低山歩きで、僕のとっておきを紹介すると、奥多摩檜原村を流れる南秋川と北秋川の真ん中を通る浅間尾根と浅間嶺を行くルートです。この尾根は、かつては甲州古道と呼ばれていた生活道路で、標高900m前後を緩やかに上下する展望の良いルートです。

冬枯れの明るい雑木林を歩く

広葉樹が落葉した日当たりの良い林、カヤト跡など陽だまりの道、一転して、杉、檜の植林帯と変化に富み、晴れて展望が開けた日には真っ白な富士山も見られます。下山は、「払沢(ほっさわ)の滝」へ下ります。毎年、“滝が凍結する日を当てる”イベントがあることで知られている滝で、運が良ければ美しい氷瀑とも出会えます。この季節の山の良さを味わえる好ルートだと思っています。

「冬は、登山はお休み」などと言わずに、無理のない冬の山を楽しみましょう。

モデルコース:浅間尾根~払沢の滝[約11.6㎞]

行程:
浅間尾根登山口・・・数馬分岐・・・人里峠・・・浅間広場・・・浅間嶺・・・時坂峠・・・払沢ノ滝入口・・・払沢ノ滝・・・払沢ノ滝入口

⇒浅間嶺周辺のコースタイム付き登山地図

 

冬山用品 雪山・冬山 日本の山
教えてくれた人

山田 哲哉

1954 年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。著書に、登山技術全書「縦走登山」(山と溪谷社)ほか、「奥秩父、山、谷、峠そして人」(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」
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