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これから冬山登山に挑戦する方へ!安全に楽しむための天気のポイントを解説

山の天気を知って安全に登山を楽しもう!
基礎知識 2020年02月04日


この冬は暖冬だといわれています。それでも、SNS上には冬山を楽しむ人々の雪にまみれた写真がよくあがり、登山意欲をかき立てます。最近は冬山の魅力がメディアに登場する機会が増えて、自分も登ってみようと考えている方が増加傾向にあるようです。

ただ、山岳会や大学の山岳部などの団体に所属していた方でもなければ、冬山の知識はなかなか得ることができません。一方で、遭難事件の恐ろしい話はたびたび耳にします。どうすれば雪の積もった山でも安全に登ることができるのでしょうか。山好きの気象予報士が、天気に焦点を絞って解説します。

 

天気から見る冬山の魅力と危険性


雪が深く積もった山に登ることは、それを知っている人にとって、とても楽しいアクティビティです。空の濃い群青色、積もった雪が険しさを際立たせる山肌。ここは本当に日本なのだろうか、と思うことさえあります。

日本の山は、夏季には雪がほとんど姿を消す一方で、冬季は日本海側を中心に多くの雪が降り積もるのが特徴です。そのため、冬山は夏山とはまったく異なる世界だといっても良いでしょう。

冬の登山の特徴としてまず挙げられるのは、雪原の中から自分でルートを決めるということです。無雪期には高山植物を守るため、登山道からはみ出さないのがマナーです。ところが、雪が深く積もると登山道も植物も埋まってしまうので、自ら雪をかきわけて、ときには登山道を離れて山に登っていくことになります。

雪をかき分けながら進むことをラッセル車にちなんで、「ラッセル」と呼ぶことがありますが、このラッセルが冬山登山の醍醐味であり、苦しみでもあります。ラッセルが必要な登山では、コースタイムはあまりあてになりません。雪の質や深さによって時間が大きく左右されるので、行動しながら時間を設定する必要があります。

また、常に低温にさらされるため、十分な装備がなければ低体温症や凍傷になるリスクがあります。良く晴れて風のない日であれば半そででも暑さを感じるほどですが、実際の気温は氷点下。雪が降ったり風が吹いたりした場合や、動きを止めて休憩に入るとみるみる体温が奪われていきます。特に、山中で1泊する際はしっかりとした防寒装備が必要不可欠です。

大量の雪が積もった斜面では雪崩の危険性があることを忘れてはいけません。経験の少ない人が雪崩のリスクを見極めることは困難です。事前に雪崩の危険度に関する情報を集め、むやみに雪崩地形に入らないことが重要です。

 

山で雪が降る仕組み

そもそも、なぜ山には大量の雪が降るのでしょうか。例として、冬山登山の人気が高い長野県の山に雪が降る仕組みを考えてみましょう。長野の山に雪を降らせる主な気圧配置は「冬型の気圧配置」と「低気圧の接近」です。

 

冬型の気圧配置による降雪=北部の山岳が中心


冬型の気圧配置は日本の冬の典型的な気圧配置です。冬、大陸には寒気を蓄えたシベリア高気圧が作られますが、ここから寒気が漏れ出たり、低気圧によって寒気が引き込まれたりすると、日本付近では等圧線が縦しま模様の気圧配置となります。

冷たい空気が日本海上を通過するとき、暖かい海面からの水蒸気の供給によって雲が作られます。この雲が日本海に近い北部の山にぶつかることで、山に雪を降らせます。一方、山の風下側では乾いた風が吹き、「浅間おろし」「八ヶ岳おろし」「空っ風」などと呼ばれています。

風向きが一定である限り、同じような場所に雲が流れ、同じような場所で雪が降り続く特性があります。そのため、山域を細かく区切って見てみると、実は冬型の気圧配置になればいつでも同じように雪が降るわけではなく、雪が降りやすい風向きや、雪が降りにくい風向きがあります。

例えば、北から季節風が吹くときは、海からの風が直接ぶつかる北アルプス北部は荒れた天気になりますが、北アルプスの中でも上高地周辺では晴れることが多くなります。一方、西から季節風が吹くときは、北アルプスの南部や中央アルプスにも雪雲が流れてくることがあり、風下側になる飯山線沿線の山では雪の降り方が弱まります。

 

低気圧による降雪=中部・南部の山岳でも積雪増加


日本付近を低気圧が通過すると、冬型の気圧配置であまり雪が降らない長野中部や南部でも広範囲で雪が降ることがあります。平地では雪になるときもあれば、雨になるときもありますが、気温の低い山の上はたいてい雪になり、一気に積雪が増加することもあります。特に本州の南を低気圧が通ると、低気圧に向かって北から寒気を引き込みやすいため、中部・南部の山岳では大雪になることがあります。

できる限り、冬型の気圧配置や低気圧を避けて山に登りましょう。山に雪を降らせる要素がないときに登ることで、荒れた天気と遭遇する可能性を減らすことができます。

 

ねらい目は移動性高気圧 ただし注意点も 


夏同様、登山日和が期待できるのは本州付近が広く高気圧に覆われたときです。ただし、日本海側の山は高気圧の東側ではなかなか晴れないことがよくあります。高気圧の東側では北よりの風が吹き、寒気の影響が残るためです。どちらかといえば高気圧の中心付近や、西側のほうが晴れやすい傾向があることを知っておきましょう。

ただし、高気圧の西側は次の気圧の谷が近づいてきている局面でもあります。気圧の谷の接近に伴って天気が崩れる可能性があるので、天気の変化には十分注意してください。

また、天気図上で日本海に前線のない小さな低気圧が解析される日は、日本海側の山で快晴になる可能性があります(詳細は以前の解説記事へ)。

上手にタイミングを計れば貴重な晴れ間になりますが、この晴天は半日程度の時間しか長続きしません。低気圧が沿岸部に近づくと山の天気は急激に崩れ、雨や雪が降りだします。気象情報の確認は入念に行うようにしてください。tenki.jp登山天気アプリは天気に加え、風の強さも確認できます。冬期登山でもぜひご活用ください。

ここまで天気について解説しましたが、雪の積もった山に安全に登るには雪の上の歩行技術や、アイゼン、ピッケルの使用方法も学ぶ必要があります。道具の使い方がわからずに発生した遭難事案も多数起きています。冬山に踏み込む前に必ず雪山登山の技術を身につけるようにしてください。

 

教えてくれた人

宮田雄一朗

日本気象協会所属の気象予報士。普段はtenki.jpの日直予報士として天気ニュースの記事も執筆。
山の空気が好きで1年を通してよく登る。予報士の視点から、登山中にちょっと役立つ知識をお届けしたいと考えている。

日本気象協会

日本の気象コンサルティングサービスのパイオニアとして1950年に創立。以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行っている。
近年ではAIやIoT、気象ビッグデータの活用を通じ気象の調査解析、情報提供の精度を向上させ、気候変動への適応など持続可能な世界を実現する活動を支援している。
 ⇒tenki.jp

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