赤城山・地蔵岳から凍結の小沼を横断。おろしたてのスノーシューで雪上ハイキング

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トレースのない雪面をふみわけ、凍った湖を踏破する、冬ならではの醍醐味を満喫できるスノーシューハイク。赤城山の地蔵岳から、氷結した小沼を通り、長七郎山まで周回するコースをご紹介します。

文・写真=奥谷 晶

地蔵岳山頂より黒檜山を望む

赤城山は複数の山々の総称した火山です。最高峰の黒檜山(1828m)ほか、駒ヶ岳、地蔵岳などがあり、それらの山々の中央にはカルデラ湖・大沼があります。大沼は冬季には氷上のワカサギ釣りでも人気です。首都圏からのアクセスの良さや、コースの豊富さも魅力のエリアです。

2014年3月16日、この日は午前中快晴、午後より次第に風がやや強まる天候でした。新調した登山用スノーシューの本格的な雪山のデビューのために、いろいろな条件で試すことができる新雪後の赤城山を歩いてきた時の記録です。2020年1月末現在はまだ雪が少なく、これからの降雪に期待したいところです。

MAP&DATA

コースタイム:大洞駐車場~地蔵岳~小沼~長七郎山~鳥居峠~大洞駐車場:約5時間

ヤマタイムで周辺の地図を見る

スノーシューを試しながら、雪上ハイキング

まず、大洞駐車場をスタートして、地蔵岳への標高差300mの直登に向かいます。雪質は表面だけが少し融けたあと凍ってクラスト化した状態です。アイゼン+ツボ足でも、トレースを外さない限り、それほど苦労しないと思われる状態ですが、スノーシューを試したいのですぐに装着します。最初からヒールリフトバーを上げて登り始めましたが、ちょうどぴったりの斜面で、足への負担が軽く快適でした。

登りは快調で、頂上直下の30度近い斜面でも、しっかりキックして爪を利かせて登ることができました。これ以上に傾斜が強くて滑落すれば止まりそうもないところや、雪面が硬くて爪がききにくい場合は、アイゼンとピッケルに切り替えることになるでしょう。頂上には、ツボ足や、ワカン、アイゼンなどさまざまなスタイルの登山者が見受けられました。ゴムボートでスノーラフティングを楽しむ人もはじめて見ました。

地蔵岳より、これから向かう小沼と長七郎山を望む

問題はスノーシューの苦手な下りです。地蔵岳から小沼・八丁峠に向かう下りも20度から25度程度の傾斜です。前向きに降りる場合はキックステップの下り方と同じ要領ですが、斜面に垂直に親指のつけ根を意識してヒザのクッションをうまく使わないとスムーズに下れません。片足は進行方向に、もう片足は斜面になるべく垂直にし、爪が利く方向において、ジグザグに下る方が、安心でした。さらに傾斜が強くなると、サイドステップ気味におりなければなりません。強い傾斜の下りはどうしてもスノーシューの苦手な部分なので、このあたりは、まだまだ試行錯誤と経験を積む必要があるようです。

小沼からは、沼面を横断して長七郎山に向かいます。通常は1月初め頃から凍結しますが、かつては氷上の車の競技も行なわれていただけに、まだまだしっかり凍っています。雪はほとんど風で飛ばされていて、うっすらと表面に乗っている状態でした。しばらくは(大沼でワカサギの氷上穴釣りができる3月中・下旬ぐらいまでがめやす。2020年は暖冬で10日遅れの1月22日が解禁)大丈夫だと思いますが、気温が急激に高くなってくると避けた方がよいと思われます。

凍結した小沼を横断中、下ってきた地蔵岳頂上ををふり返る

長七郎山へは、そのままトレースのない樹林帯の斜面を小地蔵にむかって直登しました。稜線にでると、小地蔵に向かってしばらくトラバースが続きます。切れた東側斜面には雪庇ができていますので慎重に進みます。足を置く幅がせまくなるので、片方のスノーシューでもう一方のスノーシューの端を踏んでバランスを崩すリスクが高まります。

東側斜面が切れ落ちた長七郎山稜線は雪庇が発達している

鳥居峠へ下る樹林帯の急斜面では、上部の雪壁が崩落したとみられる小規模(幅10mくらい)の雪崩のデブリがあり、急いで通過しました。今後気温が高くなるとさらに頻発するおそれがあるので、小規模とはいえ、注意は怠れません。

長七郎山から鳥居峠の斜面には小雪崩のデブリがあった

最後は、雪原となった覚満淵を経て、大洞駐車場へ戻りました。車道のわきを歩くところもありましたが、快適な雪上ハイキングを楽しむことができました。

広大な雪原と化した覚満淵を進む

なお、トレースのない雪面を踏み分けていくのは気持ちがいいものですが、どこでも自由に歩けそうな気がして、いい気になって進んでいくと、ルートを見失いがちです。広い斜面ではさまざまなトレースが交錯しています。木の根元などには踏み抜きの空洞が潜んでいます。方向の転換点や分岐では必ずGPSや地図などで現在地を確認しながら進み、特に視界が悪いときは、さらに注意が必要でしょう。

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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