北海道能取岬で流氷観察トレッキングとアイスクライミング

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オホーツク海に面した北海道・能取岬。毎年2月にはロシアから流氷が接岸し、冬の名物となっています。流氷観察トレッキング、さらにはアイスクライミングも楽しめる特別なエリアです。

荒れ狂うオホーツクの海と斜里岳(写真=谷水 亨)

年が明けると北海道各地の氷瀑でアイスクライマー達が我先に氷に張り付いていきます。オホーツク海に面した網走国定公園にある能取岬(のとろみさき)の海岸部には、湧水が作り出した青白い綺麗な氷瀑がいくつもあります。しかも流れ落ちる川が凍ってできる滝と違って、地表下からの湧水が絶壁から海岸に向かって染み出し、ゆっくりと凍っていくので、氷の層が非常に厚く澄んだ綺麗な氷で安定しているのです。そのため、その氷瀑の美しさに、北海道各地から初心者や上級者が訪れます。

氷瀑に取り付くアイスクライマー達と流氷(写真=谷水 亨)

しかし、もう一つの楽しみを味わうためには流氷が接岸する2月に訪れるのがベストです。この時期になると網走湖でワカサギ釣りを楽しんだり、流氷を割りながら進む流氷観光船に乗って海の動物たちを観察したり、流氷そのものを楽しんだりする観光客が一気に押し寄せます。アウトドアも楽しみたいなら、氷瀑と流氷、オジロワシやアザラシなどが見られるスノーシューでの海岸トレッキングがおすすめです。ただし、この海岸は崖で切り立っているため、海岸に降りるルートは初心者では見つけにくく、日によっては気象条件も厳しいので、必ずツアーに参加しガイドと共にトレッキングを楽しむことをおすすめします。

 

能取岬周辺地図・トレッキングエリア案内図

 

壮大なロマンを感じる流氷観察トレッキング

トレッキングには、とにかくあたたかい服装を心がけること。オホーツクの海はいつも荒々しいです。しかも、流氷が接岸する条件が「陸に向かって強い風が吹き付けていること」と、非常に寒いことなので、しっかりした準備が必要です。また、風向きや気温によっては、わずか数分で目の前にあった氷の塊が沖へと離れていくこともあるので、流氷の上に乗って楽しむ際には、十分気をつけましょう。

能取岬の海岸をトレッキングする観光客(写真=谷水 亨)

ユーラシアの大地をゆっくりと流れたアムール川の水が、大地の栄養分と共に凍り、オホーツク海へと流れつき、海の動植物たちを豊かにしている壮大なロマン。その圧倒的な風景の他に、大空ではオジロワシが優雅に飛び回り、流氷の上ではアザラシが休憩している姿が見られるかも知れません。足下では氷がぶつかりきしむ「流氷の鳴き声」さえも聞こえてくるでしょう。

クライマーの上空を優雅に舞うオジロワシ(写真=谷水 亨)

 

アイスクライミングを楽しんだ2日間

さて、ご紹介した海岸トレッキングも良いのですが、私は流氷を眼下にアイスクライミングを楽しむのが好きで毎年訪れています。この能取岬の氷瀑は北海道三大アイスクライミングの一つで、約1kmのエリア内に数個の大きな氷瀑があるため、何個か渡り歩きながらアイスクライミングを楽しむことができます。

マイナス5℃の中アイスクライミングを楽しむ(写真=谷水 亨)

2019年2月は、天候にも恵まれ、比較的温かく、流氷も接岸し(2日目は離れていってしまった)クライミングの合間にオジロワシの撮影もできました。

1日目は「オオワシ」「オジロ」と言う名の付けられた氷瀑に何本かのロープを張り、数本楽しみ、翌日は「オノコ」「メノコ」と言うアイヌ語の名前が付けられた氷瀑に取り付き、流氷の景色と共に、アイスクライミングを楽しみました。帰る頃には空気も澄んで遠く流氷の向こうには斜里岳、海別岳、羅臼岳を有する知床連峰も望むことができて楽しい2日間を過ごしました。

氷瀑に取り付くアイスクライマー達との記念撮影(写真=谷水 亨)

 

▼今回の山行動画

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

※流氷は、その時の風向きや気温、潮の満ち引きで状況が大きく変化します。ガイド等が不在の際には、長時間または長距離、上に乗ることは避けましょう。

プロフィール

谷水 亨

北海道富良野市生まれの富良野育ち。サラリーマン生活の傍ら、登山ガイド・海外添乗員・列車運転士等の資格を持つ異色の登山家。

子育てが終わった頃から休暇の大半を利用して春夏秋冬を問わず北海道の山々を年間50座ほど登って楽しんでいる。

最近は、近場の日高山脈を楽しむ他、大雪山国立公園パークボランティアに所属し公園内の自然保護活動にも活動の範囲を広げている。

Youtubeでも北海道の山々の魅力を動画で配信中。Youtubeチャンネル

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