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雪山での危機を回避するための4つの「防御力」を高めるための、具体的な方法例

山で必ず役立つ! 登山知識の処方箋
登山技術 2020年03月03日

雪山での危機を回避するためには、登山者自身が危機からの「防御力」を高める必要があるという。その防御力の実際と、高めるための具体的な方法について簡潔に説明する。

 

前回は、特に雪山の厳しさに対応するためには登山者自身に【防御力】が必要というお話をしました。

★「今年こそ雪山へ!」の前に、危機を回避するための「防御力」を身につけよう

今年は全国的に雪が少なく、残雪期シーズンも早く到来しそうです。最近では気候が穏やかになる残雪期シーズンに、経験不足の方の遭難が特に多く発生しています。

そこで今回は、雪山登山の危険を回避するために登山者に必要な4つの【防御力】と、それを高める方法について紐解いてみたいと思います。

 

1.「厳しい気象条件」に対する【防御力】

気象条件に対する防御力を高めるには、正しい知識と装備を身に付け、現地での的確な判断を行えるようになることが大切です。そのためには、以下のような要素を心がける必要があります。

  • 平地とは異なる「山岳気象」について、本を読んだり、講習会を受講したりする
  • 入山する地域に特有な傾向もあるので、過去の気象データや遭難事例を研究する
  • ウェアや靴、ゴーグルなど、状況に合わせた適切な装備を身につける(投資も必要?)
  • 登山期間の気象を予測し、パーティーの力量を考慮して、「安全な行動」をとる

 

2.歩きづらい「雪上歩行」に対する【防御力】

雪上での歩行は、通常の無雪期の登山道と比較すると安定させるのが困難です。歩行の技術・体力を身に付け、安全に登下降出来るようになるには、以下の要素を身に着けたいものです。

  • 雪に負けない体力が大事。日々のトレーニングを意識的に行う
  • 状況によって、適切に道具(アイゼン、ピッケル、ワカンetc…)を選択し、その道具をしっかりと使いこなせるよう練習する

 

3.「雪崩の危険」に対する【防御力】

雪山で最もリスクの高いものの1つに雪崩が挙げられます。雪崩の知識を身につけるとともに、避けるための行動をとれるようになるには、以下の点を高める必要があります。

  • 雪崩の講習会に出たり、勉強会を開催したりして知識を身に付ける
  • ビーコン操作や埋没者捜索の技術などは、仲間で繰り返しトレーニングを行い、共通の認識、意識を持てるようにする

 

4. 「人為的補助が少ない」ことに対する【防御力】

雪山の登山ルートは、夏山と違って自然そのもので、人為的な補助があるような場所は限定されています。そのため、安全なルートを見極め、自力で安全に帰ってこられる技術・体力を身に付ける必要があります。

  • 事前の計画で安全なルートを見出す「ルートファインディング力(りょく)」が必要
  • その山域の地形を頭に入れて行動(雪崩対策としても重要。無雪期の下見も大事)
  • パーティー全体と個々の力量をしっかり判断し、「撤退」するタイミングを逃さない
  • 雪洞、半雪洞泊や、低温環境での体調不良への対応など、積雪期の危急時に対する知識、技術を身につける

 

特に雪山における4つの危険を例に、その防御力をひと通り挙げると、だいたい上記のような点が考えられます。当然のことですが、上記の【防御力】は、机上の知識だけでは身に付くものではなく、何度か山に行っだけですぐに習得できるものでもありません。

また、単独で学んでいくことも有意義ですが、ある程度経験を積めば限界を感じることもあるかと思います。経験が豊かな仲間や、ガイドとともに山行回数を重ねること、また講習会などを利用することも、登山者としてのレベルを上げるために有意義な方法です。

そして、ある程度の経験を積んだら、ご自身のレベルに見合った山で「自ら考え、判断する」山行を実行してみましょう。登山者としてのレベルは、「連れて行ってもらう」だけの登山ではなかなか上がりません。自分の判断で行動し、その結果を踏まえて次回の山行につなげる、それらを繰り返すことが重要です。


登山者としてのレベルは登山と同じように「地道な一歩の積み重ね」により、少しずつ上がっていくもので、一足飛びで向上するものでもありません。是非、このようなことを意識して、登山者としての【防御力】を高めていただければと思います。

なお、長野県山岳総合センターの2020年度の講習会も、『ついて行ける』→『自分で行ける』→『連れていける』の3段階のステップを踏んで、レベルアップを図れるようにしていますので、ぜひご利用ください。

雪のある山には危険だけでなく、その季節ならではの楽しみもたくさんあります。残り少ない冬山シーズンと来る春山シーズンも、ぜひ安全に楽しみましょう!

 

冬山用品 雪山・冬山 セルフレスキュー
教えてくれた人

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター

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