沼津アルプスを縦走し、全館畳敷きの宿「楽山やすだ」の展望露天風呂で疲れを癒やす温泉登山

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第3回は沼津アルプスを歩き、伊豆長岡温泉へ。

写真・文=月山もも

 

静岡県沼津市にある沼津アルプスは、気温の低い晩秋から春の間に登るのにちょうど良い低山群です。一番高い鷲頭山でも標高は392メートルですが、起伏に富んだコース上には岩場もあり、縦走すれば6時間ほどかかりますので登り甲斐があります。

最寄り駅の沼津駅まで新幹線を使えば東京から1時間少々という便の良さや、駿河湾や富士山の眺望が美しいこと、エスケープルートがいくつもあって体力や体調によってルートのアレンジが容易なことで、首都圏から登りに来る登山者も多い人気の山域です。ルート上にある「香貫山公園」は、桜の名所としても知られており、3月下旬ごろからはお花見登山も楽しめるのではないでしょうか。

この日は桜にはまだ早いタイミングでしたが、香貫山公園から入山し、南下するルートを歩くことにしました。
登山コースは地元の登山愛好会によって整備され、手作り感溢れるカラフルな道標が疲れた体を元気づけてくれます。

この日は、富士山は雲に隠れて見えませんでしたが、太陽の光をうけてキラキラと輝く駿河湾や、遠くには南アルプスの美しい姿を眺めることができました。

沼津アルプス登山後は、沼津港で駿河湾の海の幸を楽しむのもいいですが、今回は温泉宿に向かいます。コースの最も南側にある「多比」という登山口に下山し、伊豆長岡温泉駅行きのバスに乗って20分ほどで本日のお宿「楽山やすだ」に着きました。

2018年9月に改装リニューアルオープンしたばかりの宿で、館内は全館畳敷きなのでスリッパを履く必要がありません。縦走登山で疲れた足にも楽でうれしいですね。チェックイン時には女性客へのサービスということで、色浴衣を選ばせていただきました。

案内していただいた8畳の和室は琉球畳が敷かれており、思わず寝転がりたくなります。しかも、部屋の奥にはなんとマッサージチェアが!お風呂上がりに絶対使うぞ、と心に決めました。

楽山やすだには、時間帯で男女が入れ替わる大浴場と、最上階に貸切で利用できる展望露天風呂が4室あります。展望露天風呂には洗い場がついていないということでしたので、まずは大浴場へ向かうことにしました。

シャンプー&コンディショナーや化粧水・乳液などのアメニティ類も豊富に揃い、設備の整った大浴場で登山の汗を流し、体が温まったところで最上階の展望露天風呂に向かいます。展望露天風呂は服を脱ぎ着する場所も屋外ですので、まずは大浴場でしっかり温まっていくのがおすすめです。

展望露天風呂は屋上に4室あって浴室ごとに眺望が異なります。1回40分以内で空いていれば何度でも貸切で利用でき、予約の必要はなく空いている浴室に入って内側から鍵をかければOK。

街を見下ろせる浴室もあったので、きっと夜間に入浴すれば夜景がきれいなのではないでしょうか。展望露天風呂はチェックインから夜は深夜0時までと、翌朝7時から利用可能です。

私は「源氏山」という山を間近に眺められる露天風呂が気に入り、弱アルカリ性のつるつるするお湯を楽しみながら、さっき歩いてきた沼津アルプスの山々を思い出していました。

お風呂からあがったら自室に戻ってマッサージチェアタイム! 腰と背中をマッサージしてくれるコンパクトなものでしたが、登山で疲れた体がかなりほぐれました。登山後の温泉後のマッサージチェアって、最高の癒やしコースではないでしょうか……。

マッサージで癒やされた後は、自動演奏のピアノが流れるロビーでコーヒーをいただきながら、のんびりと読書。チェックインから夕食までの時間帯と翌日の朝食後に、ロビーではコーヒーや紅茶がサービスでいただけます。

夕食は食事処で。席と席の間も広く、目隠しの衝立なども置いてあるので一人でも他のお客さんの視線は気になりません。お気遣いがありがたかったです。
 
お酒は静岡の地酒「花の舞」をいただきます。一合瓶があるのがうれしい。生で貯蔵して1度だけ火入れしたお酒だそうで、ほんのりと甘く、フレッシュな香りと味わいです。

食事では「黒毛和牛の和風ビーフスープ鍋」がとても気に入りました。味噌ベースの濃厚なスープにまずは野菜を投入し、煮えてきたところで美しくサシの入った黒毛和牛をしゃぶしゃぶしていただきます。

〆のご飯は桜海老ご飯でした。沼津港でいただける生桜海老も最高ですが、炊き込みご飯はもちろん、間違いのないお味です。満腹なのにしっかりと平らげてしまいます。

そして毎度のことながら展望風呂から夜景を見る余裕もなく、ふかふかのお布団で眠りにつきました……。

翌朝の朝食も同じ食事処で、大きな鯵の開きはあらかじめ焼かれてあるものを、卓上でさっとあぶって熱々でいただきます。

イカの塩辛や明太子など、朝からお酒が飲みたくなるようなおかずが並びます。ご飯をお茶漬けにできるよう、あられや海苔、出汁などの用意があったのがうれしかったです。

朝食後は男女が交換された大浴場で温泉につかって目を覚まし、身支度を整えてチェックアウト。さてこの後は、やっぱり沼津港に向かって深海魚水族館でも眺めていきましょうか、それとも沼津駅前で昼からやっているクラフトビールのお店に立ち寄りましょうか。沼津周辺には楽しみが多すぎて、何度でも沼津アルプスに登りたくなってしまう私です。

(取材日=2020年2月上旬)

*掲載情報は、取材時の内容です。

楽山やすだ

伊豆長岡温泉にある2018年にリニューアルしたばかりの温泉旅館。館内は全館畳敷き。

料金:1泊2食付き/1室1名20250円~、1室2名26000円~
住所:〒410-2201 静岡県伊豆の国市古奈28
電話:055-948-1313
HP:https://www.rakuzan.net/​

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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