トムラウシ山
2,141m
主要山域
大雪山国立公園の南西部に位置し、北東から南西へと連なるのが十勝連峰で、その中心は活火山の十勝岳(とかちだけ)である。この山はたびたび大爆発を起こし、山麓の町村に多大の被害を与えている。最近では昭和63年(1988)12月に噴火して、しばらくは登山も禁止されていた。周辺にいくつかの噴火口を有し、今も活動を続けている目の離せない山なのである。
「丘のまち」美瑛(びえい)や、ラベンダー畑で有名な上富良野(かみふらの)から見ると、白い噴煙を上げる十勝岳を中心にして、左に美瑛岳(びえいだけ)、美瑛富士、オプタテシケ山などが、また右には上ホロカメットク山、富良野岳などがずらりと並び壮観である。これらの山の一般的な登山道は、ほとんどが北側の美瑛・上富良野からつけられている。これは北面に早くから鉄道が敷かれ、旭川や札幌からの接近が有利であったことと、白金(しろがね)温泉、吹上(ふきあげ)温泉、十勝岳温泉などが古くから開発され、また十勝岳の噴火口の付近で早くから硫黄採取が行われていたため、入山が便利であったことに起因するものだろう。
これに対し、南面の十勝川源流域は、観光的な開発が遅れ、登山基地としても、はるか奥地にトムラウシ温泉があるだけで、十勝連峰への登山は、沢登りによるしかなかった。しかし、それだけに未知の魅力があるといえる。また、林道が奥まで発達し、新得町に町立の「トムラ登山学校」が開設されるなど、トムラウシ温泉は新しい登山基地として発展する方向にある。あまり知られていないが東側から十勝岳への登山路もある。また連峰の主脈から西に大きく隔たって、円錐形の孤峰、下ホロカメットク山がある。道もなく登る人もまれな山だが、どこからでも目につく存在である。南面の原始ガ原から富良野岳への登山路も魅力的なコースだ。
山域全体の特徴として、火山性の山脈だけに、大雪山のようなお花畑は少なく、特に十勝岳付近は火山灰に覆われて荒涼とした感じが強い。これは同時に目標物に乏しいということでもあり、特に冬期、ルートを失った例が多い。
冬といえば、十勝連峰の魅力の1つはスキーを駆使した登山にある。スキーリフトは十勝岳の泥流跡の斜面にあるだけ。十勝連峰は大雪山のようにロープウェイなどで高度をかせぐことができず、しかも頂上部が切り立った山も多いので、アイゼンの用意も必要である。
冬期登山の歴史はかなり古く、大正9年(1920)3月に早くも十勝岳が登られている。北大スキー部の業績であったが、大正15年(1926)発足した北大山岳部では、吹上温泉をベースにした冬山合宿を昭和初期から長く恒例化しており、この山域の登山に大きく貢献した。
トムラウシ山
2,141m
十勝岳
2,077m
美瑛岳
2,052m
オプタテシケ山
2,013m
忠別岳
1,963m
上ホロカメットク山
1,920m
富良野岳
1,912m
美瑛富士
1,888m