大崩山
祖母・傾国定公園の一部。山頂の一等三角点は北川町と北方町(ともに現・延岡市)の境界に位置する。大崩山は1990年3月、林野庁の「祖母・傾・大崩山生態系保護地域」に設定された。大崩山塊の北西面は日之影町に、また北東面は大分県宇目町(現・佐伯市)に属す。
山名は、遠望すると、山が大きく崩れたように見えることからつけられたとか。
九州最後の秘境で、特に「祝子川(ほうりがわ)源流原生林地区」は、国立公園クラスの景観と自然を誇る。ここの特徴は、原生樹海とこの地域独特の巨大な岩峰(だき)群(方言で崖をダキという)、美しさが三里続くという三里河原の清流にある。
地質深層は花崗閃緑岩。地表近くは花崗岩で、一部に見立礫岩を乗せている。また、大崩山塊を取り巻く形で、花崗斑岩のリングダイク地形が、可愛岳から西へ上野岳まで約40kmの長さで続く。この規模は日本有数のものである。
植物は多岐にわたり、北限・南限植物も多く、ツツジ類だけでも22種を数える。
原生林下位部は、ヤブツバキ、サカキが群生する照葉樹林帯で、中位部はモミ、ツガ、スズタケの群集となる。1000m以上の上位部は、夏緑広葉樹林で、ブナ、ミズナラ、アケボノツツジの森となる。稀産植物にはアオツリバナ、ネズ、ミヤマガンピ、ヒメコマツ、ウラジロヨウラクなどがある。動物では、カモシカ、シカ、コマドリ、ホシガラス、ヒュウガカケスなどが生息する。なお、昭和16年ごろまで生息したツキノワグマが現在も生息するという話もある。
歴史的には見立(みたて)鉱山が1583年ごろ発見され、1627年に洞(どう)岳鉱を、1628年には大吹鉱を開いたとあり、これにまつわる女郎屋敷、女郎墓が残っている。明治には、西郷隆盛が西南の役で上祝子から上鹿川へ鹿川越をし、その時宿泊した民家が上祝子に今も残っている。隆盛は座敷のほぼ中央に座り、部屋の中に弾除(たまよ)けの白羽二重(しろはぶたえ)を二重に張り巡らせていたという。
伝説に平家の落武者「若狭の守」の雀物語があり、今でも上祝子には雀がいないという。また、山域奥部には山の神の祠もなく、これらからも最近まで秘境であったことがわかる。
登山コースは上祝子川地区東の延岡市から入山すると町営「大崩山森の家」、民宿「祝子川渓流荘」が登山基地になる。登山口から30分の所に「大崩山の家」(無人)もある。山頂へは、数コースあり、いずれも登り4~5時間。
また「鹿川キャンプ場」や「鹿川山荘」もある上鹿川地区からは登山口まで林道が長いのでやや不便だが、登山口から山頂まで3時間程度。見立鉱山跡地区の頭巾、五葉岳、お姫山、鹿納山、洞岳の登山口からは、1時間から3時間。
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