下越の谷川岳と呼ばれるように、阿賀野川に注ぐ広谷川の源流各沢に展開する、斜長石英粗面岩の岩壁群が、戦後にクライマーから注目され、東京や地元の山岳会によって、標高差800mの岩場にいくつかのバリエーションルートが拓かれた。
　一般登山道は昭和34年（1959）に開通した栄太郎新道で、湯沢左岸の尾根から山伏峰、殺生窪を経て頂上に達するが、御神楽岳東面岩壁の壮観に目を奪われながらの登降が楽しい。
　昔は伊佐須美明神を祭る山としてあがめられ、西山日光寺の覚道上人が、山上で神楽を奏したり、西面室谷川流域の村人が雨乞いに登ったと伝えられるが、その瀬戸沢、大森尾根の道は平成8年に地元観光協会の手で再開発された。室谷から山頂までは約4時間の行程。
　福島県へ通じる峰越林道が付け替えられ、日尊倉山や貉ヶ森山の登山が容易になったので、御神楽岳周辺の山域も、やがて登山者で賑わうことであろう。
　福島県側はJR只見線会津川口駅からタクシーまたはマイカーで霧来沢の登山口まで入り、杉山ヶ崎尾根の急登から本名（ほんな）御神岳を経て頂上へ。登山口から4時間。