剣山から西に10km、四国山脈の主稜線がいったん1600m台に落ちた標高を、再び1900m級に持ち上げるのが三嶺である。これ以西、四国山脈は吉野川に断ち切られつつも西へ続くが、三嶺と同等の高さを獲得するのは、はるか70km先の瓶（かめ）ガ森（もり）である。三嶺は、四国東部を代表する名山であるといえる。
　この山は、四国で最も美しい山といわれる。祖谷川からすっくと立ち上がった剣山からの姿、一面のシコクザサに覆われた肢体を、惜しげもなくさらけ出す綱附森（つなつけもり）からの姿。千両役者、三嶺の魅力は尽きない。頂上からは、剣山、石鎚山から土佐湾を間近に望む大展望。山体を包むササ原にはコメツツジが点在し、6～7月の花期には、可憐な花を見ることができる。
　登路は、徳島県側からは名頃（なごろ）、菅生（すげおい）の2ルート、高知県側からは堂床（どうとこ）を起点にいくつかの変化に富んだルートがある。いずれも道はよく踏まれ、この山の人気の高さを示している。行程はコースにより2時間から5時間。最短コースは名頃からのものだが、登りは急である。また、無人ではあるが、三嶺頂上、お亀岩、八丁分岐には山小屋があり、安心して登山を楽しむことができる。