殺風景な砂礫地に可憐に力強く咲く花、コマクサに会いに行く登山

2019年06月01日(土)
 
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山では孤高の存在な、高山植物の女王の咲く山へ

いよいよ夏山のシーズンの幕開けだ。夏山シーズン前半の楽しみの1つが高山植物だが、夏山らしい高山植物の代表としては、チングルマ、ミヤマキンバイ、コイワカガミなどが挙がるだろう。

そうした中でも存在感の際立つのが、「高山植物の女王」として知られるコマクサ(駒草)だ。他の植物が生息できない砂礫地に単独で自生し、美しく可憐なピンクの花を咲かせる孤高の姿は女王の名にふさわしい。

また、花季は1~2ヶ月と長いことも他とは異彩を放っている。群落地では夏の間ずっと楽しめる花でもある。

コマクサは、その可憐な姿とは裏腹に生命力に溢れている。例えばその根は地中深く・広くまで伸ばしている。これは、痩せた土地でも水や栄養分を取るためだけではなく、雪解け水などで砂とともに流されないためでもあるという。

また、パセリのようなきめ細かい葉は、空気中の水分を集めるためで、霧などから水分を集めて根元に補給するのだという。

力強い生命力を秘めたコマクサが自生する群生地は、行ってみればわかるが、風化した砂礫地帯や火山の噴火口付近など、殺風景で見るからに痩せた土地であることがわかる。

砂漠地帯のような荒れ地で、風雨に耐えながらも映えるコマクサ。今週は、そんな対象的な風景が楽しめる、コマクサが咲く山を7つピックアップする。

Vol.1
 

コマクサ群生地の代名詞的存在・燕岳

コマクサの大群落地として最も知られている場所の1つが、北アルプス・燕岳だ。山頂付近の風化した花崗岩群に点在するコマクサ群落は、一見の価値がある。

鮮やかな花をつけたコマクサ(写真:koharu29さんの登山記録より)

コマクサの時期は、ライチョウのヒナがハイマツから顔を出す時期でもある。東斜面は、お花畑も広がるので、夏山らしい・北アルプスらしい山旅を楽しめる。

なお、燕岳の花季は例年は7月中旬から8月中旬。近年はかなり早めに開花していて、7月初旬には、すでに咲き始めていることも多い。

行程・ルート
【1日目】燕岳登山口から稜線へ
■総コースタイム 4時間5分、標高差+1245m、-8m
中房・燕岳登山口(08:00)・・・第2ベンチ(09:10)・・・合戦小屋(11:00)・・・燕山荘(12:05)
【2日目】燕山荘から東沢乗越経由で中房温泉へ
■総コースタイム 5時間35分、標高差+191m、-1428m
燕山荘(07:00)・・・燕岳(07:30)・・・稜線下り口(08:20)・・・東沢乗越(09:25)・・・西大ホラ沢出合(10:25)・・・ブナ平(11:35)・・・中房・燕岳登山口(12:35)
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日本一のコマクサ群生地とも言われる、岩手山の大群落

国内で随一のコマクサ群生地として知られるのが岩手山だ。岩手山は言わずと知れた火山の山で、火山礫地はコマクサの成育に適した場所。

山頂のお鉢巡り付近や、焼走りコースの第一噴出口跡~ツルハシノ別レ間などで、とくに大群落を形成していて、日本一の群生地とも言われるほどの株数を誇るうえに、一株の花数も多い。

花数が多いことでも知られる岩手山のコマクサ(写真:motz さんの登山記録より)

コマクサは花季が長いので、7月初旬~8月中旬であれば見逃すことはまずないほど、株数は充実している。独特の赤茶けた火山礫地に彩るコマクサの群落を楽しんでほしい。

行程・ルート
【日帰り】焼走りコースから岩手山山頂へ
■総コースタイム 7時間10分、標高差+1493m、-1493m
焼走り(08:00)・・・第2噴出口跡(09:30)・・・ツルハシ(10:40)・・・平笠不動避難小屋(11:40)・・・岩手山(薬師岳)(12:20)・・・平笠不動避難小屋(12:50)・・・ツルハシ(13:30)・・・第2噴出口跡(14:10)・・・焼走り(15:10)
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Vol. 3

八ヶ岳を縦走してコマクサポイントをつなぐ

八ヶ岳の稜線では、コマクサを多数みることができる。硫黄岳周辺の火山礫地が広がる場所、具体的には、横岳から硫黄岳の間や、硫黄岳大ダルミから台座ノ頭あたりまでの西斜面が、コマクサの大群落地として知られる。

白いコマクサも混じる硫黄岳周辺のコマクサ群生地(写真:次郎 さんの登山記録より)

また、少し北部にいった根石岳~箕冠山のコマクサ群落も有名なので、この時期に縦走すると、コマクサをたくさん見ることができる。

花季は7月中旬~8月中旬で、例年は8月初旬がピークとなる。

行程・ルート
【1日目】杣添尾根から横岳、硫黄岳へ
■総コースタイム 5時間45分、標高差1074m(+1255m、-344m)
横岳登山口(08:00)・・・貯水池(08:30)・・・枯木帯(10:50)・・・三叉峰(12:10)・・・横岳(12:20)・・・大ダルミ(13:00)・・・硫黄岳(13:25)・・・大ダルミ(13:45)
【2日目】硫黄岳から赤岳を経て美濃戸口へ
■総コースタイム 6時間50分、標高差249m(+652m、-1825m)
大ダルミ(07:00)・・・横岳(08:00)・・・三叉峰(08:10)・・・赤岳天望荘(09:10)・・・赤岳(09:50)・・・赤岳天望荘(10:20)・・・行者小屋(11:20)・・・美濃戸(13:00)・・・美濃戸口(13:50)
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Vol. 4

静かな北アルプスを楽しめる蓮華岳でコマクサに会う

先に紹介した燕岳とともに、北アルプス随一のコマクサ大群落の地として知られるのが蓮華岳だ。輝石安山岩の砂礫に覆われた斜面が広がる山頂近くは、ふだんは殺風景な斜面となっているが、7月中旬~8月中旬は打って変わって一面コマクサの花に覆われる。

北アルプスの山々をバックに力強く咲くコマクサ(写真:Yamakaeru さんの登山記録より)

蓮華岳山頂ら北葛岳方面へ向かう稜線も、コマクサの大群落地だ。蓮華岳山頂からの下り道、通称・蓮華の大下りは、岩場・ガレ場の急斜面が続く厳しい道だが、上部ではコマクサの中を歩くほどの株数を誇る。

賑やかな夏の北アルプスの中では静かな山旅も楽しめることもポイントだ。蓮華岳までの道のりは針ノ木岳方面から来ても、船窪岳方面から来ても遠いが、静かな北アルプス縦走と共に楽しみたい場所だ。

行程・ルート
【1日目】扇沢から針ノ木峠へ
■総コースタイム 5時間、標高差+1242m、-125m
扇沢(08:00)・・・大沢小屋(09:30)・・・針ノ木峠(13:00)
【2日目】針ノ木峠から蓮華岳を経て船窪小屋へ
■総コースタイム 5時間45分、標高差+791m、-1135m
針ノ木峠(07:00)・・・蓮華岳(08:00)・・・北葛乗越(09:30)・・・北葛岳(10:30)・・・七倉岳(12:25)・・・船窪小屋(12:45)
【3日目】船窪小屋から船窪岳を経て烏帽子岳へ
■総コースタイム 8時間10分、標高差+1258m、-928m
船窪小屋(07:00)・・・船窪乗越(08:00)・・・2459m峰(09:30)・・・不動岳(11:40)・・・南沢岳(13:10)・・・山頂分岐(14:10)・・・烏帽子岳(14:30)・・・山頂分岐(14:40)・・・烏帽子小屋(15:10)
【4日目】烏帽子小屋からブナ立尾根を高瀬ダムへ下山
■総コースタイム 4時間10分、標高差+162m、-1503m
烏帽子小屋(07:00)・・・三角点(08:00)・・・ブナ立尾根登山口(10:30)・・・高瀬ダム(11:10)
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大雪山にだけ生息するウスバキチョウを見られるかも

北海道・大雪山では、コマクサだけではなく、日本では大雪山系だけに生息するウスバキチョウを見ることができる。

ウスバキチョウはアゲハチョウの仲間で、氷河時代にコマクサとともに大陸から渡ってきたとされる。幼虫はコマクサだけを食べて育ち、国内では一万年前の氷河時代と似た環境だった大雪山だけで生き残ったそうだ。
幼虫はコマクサの花と茎の付根の部分を好んで食べるので、花季に幼虫を探してみるのも良い。

大雪山系では7~8月の期間は様々な場所でコマクサを見られるが、大群落地として知られるのが銀泉台登山口~赤岳間にある場所、その名も「駒草平」。広範囲に、コマクサが咲き誇る。

行程・ルート
【日帰り】銀泉台から駒草平、赤岳、小泉岳を経て白雲岳へ
■総コースタイム 7時間5分、標高差745m(+928m、-928m)
赤岳登山口(銀泉台)(08:00)・・・駒草平(09:50)・・・赤岳(10:50)・・・小泉岳(11:15)・・・白雲分岐(11:30)・・・白雲岳(12:10)・・・白雲分岐(12:40)・・・小泉岳(13:00)・・・赤岳(13:25)・・・駒草平(14:05)・・・赤岳登山口(銀泉台)(15:05)
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コマクサと共に夏の高山植物をまとめて満喫できる秋田駒

秋田県を代表する山、秋田駒ヶ岳は、コマクサの大群落の山として知られる。横岳の南側に伸びる火山礫に覆われた幅広い尾根はコマクサの群生地で、保護柵の先にたくさんの花を見ることができる。

斜面一面がコマクサの株に覆い尽くされるような場所も!(写真:aotoさんの登山記録より)

コマクサの時期は7月初旬で、この時期の秋田駒ヶ岳は競うように高山植物が咲き乱れる時期。8合目まではバスでアクセスし、山頂付近の箱庭のような火山地形の登山道を周遊すれば、3時間ほどの登山でシャクナゲ、ニッコウキスゲ、ハクサンチドリ、イワカガミ、チングルマなど、夏の高山を代表する花を満喫できるだろう。

行程・ルート
【日帰り】八合目を起点に秋田駒ヶ岳を周遊する
■総コースタイム 3時間40分、標高差+510m、-510m
八合目小屋(08:00)・・・男岳(09:02)・・・阿弥陀池避難小屋(09:22)・・・男女岳(09:42)・・・阿弥陀池避難小屋(09:57)・・・横岳(10:17)・・・焼森(10:32)・・・八合目小屋(10:52)
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気軽に見るなら池の平湿原を越えて三方ヶ峰へ

湯の丸高原近く、池の平湿原の先にある三方ヶ峰の山頂付近および隣の見晴岳付近は気軽にコマクサを楽しめる場所だ。池ノ平湿原入口からなら、1時間程度でコマクサ群生地まで行くことができる。

コマクサは三方ヶ峰の山頂付近の砂礫地に保護されながら咲いていて、保護柵越しとなるが、すぐ近くでコマクサを鑑賞できる。

山頂はコマクサ園として整備・保護されている(写真:モーちゃん さんの登山記録より)

コマクサの時期は6月中旬頃から7月下旬、この時期は池の平湿原周辺は前半はさまざまな高山植物が楽しめる時期。早い時期はレンゲツツジ、中盤にはアヤメ、ウスユキソウ、ハクサンチドリ、シャクナゲ、さらに後半はニッコウキスゲなどさまざまな花が同時期に楽しめる。

ピークハント派は篭ノ登山への登山を含めたいが、ゆっくり湿原を散策するのも良いだろう。

行程・ルート
【日帰り】高峰温泉から三山を周回
■総コースタイム 5時間55分、標高差+約840m、-約840m
高峰温泉(08:00)・・・水ノ塔山(09:00)・・・東篭ノ登山(09:40)・・・西篭ノ登山(10:10)・・・東篭ノ登山(10:40)・・・池ノ平湿原入口(11:10)・・・忠治の隠岩広場(11:40)・・・三方ヶ峰(11:55)・・・見晴岳(12:25)・・・池ノ平湿原入口(12:55)・・・高峰温泉(13:55)
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標高3000mの斜面にコマクサが広がる乗鞍岳

3000mを超える厳しい環境となる高山にもコマクサは力強く咲く。北アルプスの南端にそびえる3000m超の乗鞍山は、冬は雪も多く風も強い場所だが、コマクサが群落する山として知られる。

たくさんの花をつけたコマクサ(写真:Jimmyおじ さんの登山記録より)

コマクサの群落が見られるのは畳平周辺が多く、魔王岳方面の斜面、富士見岳~大黒岳の登山道沿いなどで見ることができるので、畳平バス停から30分程度の散策で楽しめる。

花季は7月中旬から8月中旬。自然保護のため近づけない箇所も多いが、ファインダーにその姿を焼き付けてほしい。

行程・ルート
【 日帰り 】 総コースタイム: 2時間40分
■ 総歩行距離: 5,900m  上り標高: 393m  下り標高: 393m
畳平・・・肩ノ小屋・・・乗鞍岳剣ヶ峰・・・肩ノ小屋・・・畳平
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