日本のみならず、世界で最も有名な日本の山が富士山であることに、異論を挟む人はいないだろう。
圧倒的な大きさと標高、美しい山容、他に類を見ない存在感は、古来より多くの日本人の心を捉え、どの地方にも「富士山」の愛称を冠した山が存在している。
山容が富士山に似ていることから「富士」の愛称や別名が付けられたものから、まったく富士山に似ていないにも関わらず富士の名を持つ山まで、日本全国どれだけ富士山があるだろうか。
今回は冬でも登れる、ご当地富士山特集。比較的、雪の心配の少ない、早春に登りたいふるさと富士山を10コース紹介する。
榛名山は、最高峰の掃部ヶ岳(かもんがたけ・1449m)をはじめ、榛名湖を囲むように広がるいくつかの山の総称だ。その中で3番目の高さの山が榛名富士で、榛名湖越しに見る山容は、まさに富士山そのものの山容をしている。
榛名富士には南側にロープウェイがかかり、観光客の姿が多く登山者には物足りなさを感じるかもしれないが、「榛名富士見登山」はオススメだ。
最高峰の掃部ヶ岳側からは、早朝は榛名富士から登る朝日を楽しめたり、湖面に映る榛名富士を楽しめたりする。
健脚な登山者であれば、榛名湖を囲む山々を周回するのも良いだろう。
高低図
宮城県仙台市の南西、仙台市民の憩いの場として知られる太白山。どこから見ても三角錐の山容から、名取富士とも仙台富士とも言われる山だ。様々な伝説が残っている山としても知られている。
市街地から近く、2時間もかからず往復できる山だが、山頂付近は急登になっているので注意が必要だ。山頂からは富士の名前に負けないほどの展望が望め、眼下には仙台市街が広がっている。
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栃木県益子町の芳賀地方にそびえるのが「芳賀富士」だ。標高は272mと小さな山だが、三角錐の山容は富士の名前にふさわしい。
芳賀富士を登るなら、山裾にある安善寺から20分程度で登れてしまうので、この山だけを登るには物足りない。しかし、関東ふれあいの道「風薫る山里のみち」のコース上にあるので、真岡鐵道の七井駅から茂木駅までの道を関東ふれあいの道に従って登りたい。
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「○○富士」という愛称を持つ山は多いが、名前そのものが「富士山」という山も全国にはいくつか存在する。栃木県那須塩原市にある富士山は、読み方こそ「ふじやま」だが、山名は堂々の富士山。山容は、確かに富士山をほうふつとさせる。
奥塩原温泉から塩釜温泉への東西約7kmを結ぶ塩原自然研究路の途中にあるため、自然豊かな登山・ハイキングが楽しめる。
雪が消える4月中旬にはミズバショウが咲き、6月には大沼でモリアオガエルの卵塊を見ることができ、秋には紅葉が美しい。温泉も楽しめるので、本家富士山とは違った満足度の高い富士登山を楽しめる。
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富士火山帯の属する山々の中で、太平洋に浮かぶ八丈島にある富士山「八丈富士」は、同じ根っこで繋がっているからだろうか? 姿かたちとも、まさに富士山そのものだ。緩やかに広がる尾根、山頂の平な部分の形、標高以外は富士山にうりふたつだ。
八丈島と聞くと、だいぶ遠くに思えるが、飛行機に乗れば羽田空港から僅か55分。空港から歩いて八丈富士には登れるので、都心から日帰り登山も可能という距離感だ。
もっとも、登山・ハイキングはもちろん、海の観光、温泉など楽しみの多い島。隣の三原山の登山も含めて、山旅・島旅をじっくり楽しみたい。
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愛知県犬山市にある尾張富士は、南隣にある本宮山との「背比べ伝説」で有名な山だ。麓から見ると三角錐で山頂が尖った山容の尾張富士が高く見えるが、実際には本宮山が292.8m、尾張富士が275.0mと、本宮山が、だいぶ上回っている。
背比べに負けた尾張富士では、少しでも高くしようと石を積み上げる、尾張三大奇祭の1つ「石上げ祭り」が8月に盛大に行われている。
尾張富士に登山する際は、1つ石を握りしめて、標高アップに貢献してみるのも興味深い。
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福井県の北西端にそびえる青葉山は「若狭富士」の愛称を持つ山で、東側の海岸からみると非常に均整の取れた山容を確認できる。富士山と違って山頂部は尖った形をしているが、名に恥じない美しい山容の山となっている。
標高は693mと決して高い山ではないが登りごたえのある山で、スリリングな岩場や奇岩・怪岩、海の展望、固有種のなオオキンレイカの花(8月頃)など、楽しみは多い。積雪期を避ければいつ登っても楽しめるはずだ。
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琵琶湖の東側にそびえる「近江富士」の愛称を持つ三上山は、ファミリーでも健脚者でも楽しめる、ふるさと富士山だ。西側から見ると、特に三角錐の山容が美しく、新幹線の車窓からもよく見える。
信仰の対象として、「大ムカデ退治」の伝説の地として、さらには和歌や俳句にも読まれる山として地元の人々に愛され続けている。
東側に付けられた登山道はファミリー向け、西側の登山道は鎖もかかる岩場を通る山なので、周回して変化に富んだ登山を楽しみたい。
山頂からの展望は素晴らしく、琵琶湖や湖南平野を眼下に見下ろす。
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薩摩半島の南端付近に聳える、「富士山っぽさ」では随一の存在の山が開聞岳だ。「薩摩富士」の名を持つ山の標高は924mと1000mに満たないながら、海抜0m付近から山に螺旋状に付いた登山道を登っていくのは、なかなか手ごわい。
山麓から山頂までは一本調子の登りが続き、標高を上がるほど登りはキツイ。山頂付近は梯子がかかるほどの急登もあり、登ろごたえは十分だ。
しかし、半島から突出するように聳える山の山頂からの展望は、他の山では味わいない絶景で、広がる太平洋、佐田岬の様子、さらに天気が良ければ噴煙を上げる桜島の展望も素晴らしい。
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標高こそ422mと低いが、シルエットだけなら富士山そのものな山が、香川県の飯野岳だ。讃岐平野に浮かぶように聳えていて、「讃岐富士」とも呼ばれている。
どの角度から見てもきれいな三角錐をしているので、麓から富士登山気分を味わうには良い山だが、山頂からの展望はないのが残念なところだ。
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