| 法華院温泉山荘
2024.04.22
寒暖差に対応する装備で。GW中は駐車場や車道混雑。登山は早出の原則を守るよう交通状況の確認を
2000m以上の高山がない九州本土。温暖な気候のため通年通して登山ができ、初心者やファミリーでも楽しめる山も多い。
九州本土の山は大きく2つの種類に分類できる。1つめは、その気候ゆえに山頂まで常緑で、落葉広葉樹が黒々と茂る森が広がる山。2つめは、熔岩が作りだす荒々しい景色とともにその恵みの温泉を楽しめる火山。さらに特徴を付け加えるなら、国の天然記念物のミヤマキリシマなど、九州の山でしか見られない貴重な高山植物との出会いもあげられる。
そこで今回は、九州本土の山の魅力をたっぷり味わえる人気の8座を取り上げる。なお、九重や阿蘇、雲仙、霧島は今も噴火警戒レベル対象なので、登山計画を立てる際には気象庁や県の情報を確認しよう。
■気象庁 火山登山者向けの情報提供ページhttps://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/map_0.html
大分と福岡の県境にあり、中岳、南岳、北岳の三峰からなる英彦山。出羽の羽黒山、大和の大峰山とともに日本三大修験道の山として知られる霊峰で、登山道はその修験の道をたどるルートだ。四季を通じて登れるが、ヒコサンヒメシャラ、ドウダンツツジ、オオヤマレンゲが咲く6月上旬と、紅葉が見事な10月下旬がとくに美しい。急坂やクサリ場、眺めのいい山頂や望雲台など、初級の山ながらも登りごたえは十分にある。
おすすめのルートは、銅の鳥居から表参道コースを進み、行者堂~中岳~北岳~望雲台を経て、英彦山野営場~銅の鳥居へと周回する4時間のコース。他に、北西に周回する北岳~南岳~鬼杉~玉屋神社を経る4時間半の周回コースも人気だ。
高低図
九州を代表する温泉地・湯布院のシンボルといえるのが由布岳だ。遠くからでも一目瞭然の個性的な山容で、古代から神います山として崇められ、万葉集などにも詠まれている。由布・鶴見火山群に属する独立峰で、山頂からは360度の大パノラマ展望を楽しめ、間近に火口跡や美しい湯布院盆地、さらに九重連山や耶馬渓山地も遠望する。5月下旬から6月中旬に咲くミヤマキリシマや冬季の樹氷など、季節ごとの美しさも格別だ。
主なコースは、正面登山口~合野越~西峰、その後はお鉢巡りをして向かいに見える東峰に登頂するルート。東峰の山頂からは鶴見山群を間近に、別府湾や国東半島、九重連山や祖母・傾山群、英彦山などの連なりを一望できる。他に、東登山口や西登山口のからのコースもある。
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角閃石安山岩が露呈したトロイデ火山で、九重火山群の主峰の久住山。西千里ガ浜から望む姿は三角峰を築き上げた山容で、東洋のマッターホルンにも喩えられる。鎌倉時代から修験の山として栄え、明治以降は登山者の憧れの山として人気が高く、近年は海外トレッカーの姿も多く見かける。初夏には北斜面に咲くコケモモや南斜面に咲くミヤマキリシマなどの群生も見事で、山開きシーズンと相まって、山道に渋滞ができるほどの賑わいになる。
主なコースは、九重連山登山口の長者原からラムサール条約登録湿地のタデ原湿原の木道を通り、夏にはノハナショウブ、秋にはヤマラッキョウの群生が見られる雨ヶ池へ。さらに法華院温泉を過ぎ、硫黄山の噴煙を眺めながら久住山に到着する5時間半のルート。この他、牧ノ戸~沓掛山~久住山~星生山の縦走ルートも人気だ。
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火の国熊本のシンボル、阿蘇山は、世界最大級のカルデラに隆起する火口丘群と外輪山の総称で、外輪山は周囲約128km、火口原には約5万人が暮らす。火口丘群のうち根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳は阿蘇五岳と呼ばれ、最高峰の高岳や中岳登山が知られる。
ここでは、烏帽子岳、往生岳、杵島岳の草原の山々をめぐるルートを紹介しよう。五岳の中でも最も新しく誕生した杵島岳と往生岳は、野焼きで維持された丸い草原の山。やや古い烏帽子岳には山襞が刻まれ、ミヤマキリシマが茂っている。コースは草千里~烏帽子岳~往生岳~杵島岳を巡り、草千里に帰る周回ルート。柔和な草原と多くの火口跡をたどりながら、阿蘇の多様な顔に出会うことができる。手軽に歩くなら、烏帽子岳をぐるりと回るコースもある。
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九州最後の秘境として、多くの登山者の心を惹きつけてやまない大崩山。花崗岩の山肌が大きく崩れたように見えることから、その名が付けられた。祖母・傾国定公園の一部で、とくに祝子川源流原生林地区は樹海と巨大な岩峰群、三里河原の清流という自然が作りだす景観に圧倒される。北限・南限植物も多く、ツツジ類でいえば22種類を数える。他に、稀産植物のアオツリバナやネズなども見られる。
コースは、大崩山登山口をスタートし、ワク塚尾根~大崩山~坊主尾根を下るルートだ。下ワク塚、中ワク塚、上ワク塚からのすばらしい眺望を存分に楽しもう。コースタイムは11時間と長く、岩場やハシゴの通過も多いので、十分な登山経験と体力は必須だ。
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長崎県島原半島の中央に位置する雲仙岳。かつては主峰の普賢岳と妙見岳、国見岳など三峰五岳からなる火山群の総称だったが、平成2(1990)年の噴火により、新たに最高峰となる平成新山が現出した。平成新山以外は噴火活動が収束したことから平成10(1998)年に解禁されたが、ルートには制限が残る。今では普賢岳でも春には高山植物の花々、秋には紅葉が茂り、山頂からの平成新山の圧巻の眺めとともに楽しめる。
ルートは、普賢岳登山口の仁田峠~妙見岳~国見岳~普賢岳へ登頂する約3時間の周回コース。山頂では、緑に覆われた普賢岳とは対象的な赤茶けた溶岩石の山肌の平成新山が目の前に広がり、思わず息を飲む絶景だ。さらに九重連山や阿蘇の山々、霧島連山、桜島まで遠望できる。
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鹿児島・宮崎にまたがり、大小20以上の火山群により構成される霧島山。霧が発生しやすく山の上部が霧の上に浮かんだ島のようだと、その名が付けられたといわれる。そして、その最高峰の韓国岳は、山頂から遠く韓の国まで見渡せるということで命名された。山頂からの眺めは360度の大パノラマで、大気の澄んだ季節には祖母・傾山群、雲仙岳、屋久島まで望める。年間を通して登れるが、火山ということで4合目より上は木陰がなく、夏の強い日差しと冬の強風には注意が必要だ。
コースは、えびの高原~韓国岳登山口~山頂へと進むルートで、4月にはキリシマ山系の固有種キリシマミズキが春の訪れを告げる。他に、大浪池登山口から入山するコースも人気がある。
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薩摩半島南端から海にせり出した独立峰の開聞岳。その名は、錦江湾の入口、海門にあることから呼ばれるようになったという。絵に描いたような美しい三角錐のその姿から、薩摩富士とも讃えられる。開聞岳は4000年ほど前に起きた海中噴火による二重火山で、途中でわずかにくびれ、後世にできたことが分かる。実際、中腹までは火山礫、上部は堅固な安山岩からできている。海側は波に洗われ断崖絶壁、陸側は裾野が長く、春には菜の花、秋にはハゼの紅葉が楽しめる。
登山コースは1つで、麓の二合目登山口から山体を螺旋状にのぼり、約2時間半で山頂に到着する。山頂の露岩上からの展望は雄大そのもの。条件がよければ、硫黄島や屋久島も遠望できる。
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