秋田白神山地エコツアー 小林千穂さん 体験レポート
構成・文=小林千穂、写真=秋山まどか、デザイン=a-pex design、協力=白神ツアーズ、世界遺産センター・藤里館、特別協賛=秋田県自然保護課
10月中旬、6人の仲間たちと
秋田白神山地2泊3日のエコツアーに参加してきました。
新しさいっぱい、発見いっぱい、充実した山旅の様子をお伝えします。
旅した人
小林千穂(こばやしちほ)
山岳ライター・編集者
山好きの父の影響で子どものころに山登りをはじめ、里山歩きから雪山、海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。著者に『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などがある。日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド。
案内してくれた人
斎藤栄作美(さいとうえさみ)
1949年藤里町生まれ。子どものころから自然に親しみ、林業に従事しながら東北や北海道の山々を歩く。世界遺産登録と同年の1993年、秋田県自然保護指導員に。ガイド歴は35年。日本山岳ガイド協会認定 登山ガイドステージⅡ。日本自然保護協会 自然観察指導員、白神山地世界遺産巡視員。

本当の自然に触れる!

白神山地ってどんなところだろう、世界遺産の森ってどんな感じだろうと興味津々で訪れた秋田。東京から飛行機と車を利用し、あっという間に麓の町の一つ、藤里町にやってきました。

1日目は白神山地世界遺産センター(藤里館)へ。そこで待っていた藤里町在住のガイド・斎藤栄作美さんが白神山地の概要をレクチャーしてくださいました。

1993年に屋久島とともに日本で最初の世界自然遺産に登録された白神山地。登録された理由は、東アジア最大規模の原生的なブナ林が残っていること。そしてそれは、地元の方々による自然保護運動のたまものであることを教わりました。

2日目は斎藤さんの案内で、秋田白神山地を代表するトレイル・黒石沢コースから藤里駒ヶ岳をめざします。下山後にはシンボルツリーのある岳岱自然観察教育林を見学しました。

3日目はいよいよ、世界遺産登録地域内にある二ツ森トレッキングです。どこまでも続くブナの自然林を体感します。

白神の旅で手つかずの森に触れ、まるでどこか別世界に来たように奥深く、美しい自然を満喫しました。この体験以来、自然のありがたさ、貴重さについて、より真剣に考えるようになりました。

楽しい思い出とともに、大きな影響を与えてくれた白神山地。それではさっそく、私たちが今回訪れた3カ所のネイチャーフィールドを紹介しましょう。


見どころが詰まった藤里駒ヶ岳

藤里駒ヶ岳は標高1158m、白神山地の南東部にある山です。今回は旧道、新道で周回できる黒石沢コースを歩きました。

歩きはじめてすぐに現れるのは、田苗代湿原。19haもの広さがあるこの湿原は、初夏から夏にかけてミズバショウやニッコウキスゲが咲くそうです。私たちが歩いたときには、カエデやダケカンバなどの美しい紅葉が迎えてくれました。青空の下に広がる大湿原、そしてその中に続く木道。開放感いっぱいで、思わず「来てよかったね~!」とみんなの笑顔がこぼれます。

ブナの大木の間を縫うように進みながら、途中では斎藤さんが、クロモジの木がとってもいい香りがすることを教えてくれたり、大きなキノコ・ツキヨタケを見つけてくれたり。楽しい発見がいっぱいです。

そして励まし合いながら山頂をめざして急坂を登っていきました。2時間ほどでたどり着いた山頂は、360度の大展望が広がっていました。北西側に二ツ森をはじめ、白神山地核心部の山々が見えます。鉄塔や電線、ダム、林道など人工物がいっさいない景色。日本ではめったに見られない大自然を目の当たりにして、感動に浸ったひとときでした。


自然のままに木々が暮らす岳岱自然観察教育林

藤里駒ヶ岳の黒石沢登山口にほど近い、黒石林道沿いにある岳岱自然観察教育林は、世界遺産登録されているブナ原生林の核心部と同等の生態系が保たれています。遊歩道が整備され、一周1時間もあれば散策が可能です。

入口周辺は、太さも高さも揃ったブナの美しい二次林が広がっています。ここは第二次世界大戦末期に伐採され、その後75年を経て、自然に帰りつつある林だそう。

10分ほど歩いたところにある多目的展示施設の先からが、手つかずの森が広がるエリア。統制のとれた二次林とは明らかに違い、大小の木々が入り交じり、世代交代を続けている本来の森の姿を見ることができます。その森のシンボルが「400年ブナ」。根元に立てば、長い年月を生き抜いてきた巨樹の迫力がひしひしと伝わってきます。

観察林のなかでは、林床に落ちたブナの実をみんなで拾ったり、森から湧き出したばかりの水を味わったりと、豊かな森の恵みを体感しました。


二ツ森で世界遺産の森を実感!

二ツ森は青森との県境に位置する標高1087mの山。斎藤さんによると、二つのピークを持つことからその名が付いているそうです。

地元の人たちの自然保護活動で建設がストップした青秋林道の終点にある登山口からスタート。登りはじめるとすぐに県境稜線に着き、そこから先が世界遺産登録地域です。一面、ササに覆われた尾根にブナの大木が茂り、雰囲気のいい道を歩いていきました。朝まで降っていた雨がしっとりとブナ幹を濡らし、木々の間をゆっくりと霧が流れています。やがて背丈を超えるようなササをかき分けて進むと、もう山頂に到着。登山口から1時間ほどでピークに立てるのも二ツ森のいいところです。

この日は残念ながら山頂も霧に包まれ、展望は得られませんでした。でも、太古から続くブナの森が、間違いなくこの先に広がっているのだと想像するだけで満たされた気持ちになりました。もし、地元の方々による自然保護活動がなかったら、白神の森はまったく違う景色になっていたでしょう。

下山後、斎藤さんがご自身で採られた山の幸・キノコをたっぷり入れたお味噌汁をごちそうしてくれました。この地にお住まいの斎藤さんならではのおもてなしをしていただき、まさに身も心も温まるすてきな思い出で、旅を締めくくりました。

いっしょに旅したみなさんからの感想・メッセージ
  • 秋田県側の白神山地はなかなか行く機会がないうえ、地元のガイドさんにその魅力をたっぷり聞くことができ、採れたてのキノコも食べられて最高でした!/ふみさん
  • 推定樹齢400年、白神山地の主といわれるブナの姿に圧倒されました。ブナ林に湧き出る水もまろやかで、とてもおいしかったです。次はガイドの斎藤さんオススメの新緑の季節に訪れたいと思います!/岸順子さん
  • 大事な水源のブナの森を守りたいという気持ちが世界遺産になったこと、また白神の主といわれる大木も、無理な保護をせず自然に任せる姿勢。自然を守るということを考えるきっかけになりました。/青山亜希さん
  • 「世界遺産」という言葉につられ、なんの知識もないまま参加した自分。見るものすべてに感動、夢のような3日間でした。自然との関わり方を改めて考えさせられた日々でもあり、とても感謝しています。/麻子さん
  • 秋田県!白神山地!現地ガイドの方との山旅!すべてが初めてで、興味の尽きない場所でした。ブナが生きる貴重な森を守りながら、四季を通して楽しめる地元の幸を味わいに、ぜひ誰かを誘ってまた訪れたいです!/yukineさん
  • 山に入って、ブナの実を殻から取って食べたことがありますか?クロモジの香りを嗅いだことがありますか?ここ秋田の白神山地では、こんな貴重な体験ができるんです!経験豊かなガイドと一緒にひと味違った山旅を楽しみましょう。/mameさん
写真=小林千穂
 
アーカイブ動画、見られます!
エコツアー最終日に開催したトークイベント
 

主な立ち寄りどころ

今回の秋田白神山地のエコツアーで訪問したスポット。秋田白神の魅力、秋田の自然の豊かさを感じ、学ぶことができます。周辺フィールド情報などもあるので、山旅の前にぜひ立ち寄りたいスポットです。

白神山地世界遺産センター(藤里館)
白神山地の自然を模型やパネルなどでわかりやすく紹介している。白神山地や周辺フィールドの情報も得られるので、トレッキング前に立ち寄りたい。森好きが育つさまざまな体験プログラムも開催される。
藤里町藤琴里栗63(TEL0185-79-3005)、9~17時(12~2月は10~16時)、火曜・年末年始休(12~2月は火・水曜休)。
白神山地森のえき
観光案内所とお土産店を兼ねた施設。カフェでは地元産ブランド羊・サフォークラム肉の丼やソフトクリームが人気。秋田白神ガイド協会の事務所もあり、ツアーの相談も可能。ガス缶の販売・回収サービスあり。
藤里町藤琴里栗38-2(TEL0185-79-2518)、9~17時(12~2月は9時30分~16時30分)、年末年始休。
 


アクセス
藤里町へ【白神山地世界遺産センター(藤里館) まで】
【飛行機で】大館能代空港から車で約30分、秋田空港から車で約90分。
【電車で】JR二ツ井駅から路線バスで30分。
【車で】秋田方面から・・二ツ井白神ICから国道7号線、県道317号線経由で25分/東北道方面から・・大館能代空港ICから国道7号線、県道317号線経由で30分
八峰町へ【あきた白神体験センター まで】
【飛行機で】大館能代空港から車で約70分、秋田空港から秋田自動車道で能代南ICを経由して約110分。
【電車で】秋田駅からあきた白神駅へ、在来線で約100分、または、リゾートしらかみで約90分。あきた白神駅から徒歩5分。
【車で】能代南ICから約45分。秋田駅から一般道で約120分。