「富士山は、人生を変える山だと思います」
そう語るのは、富士山の写真を26年間撮り続けてきた写真家・小岩井大輔さん。彼にとって富士山とは、単なる被写体ではなく、心の深いところに根ざした存在だ。
「稜線が左右均等で、麓から見上げたときの美しさは格別です。しかも、日本一標高が高い山でもある。そんな富士山に登った時の達成感は特別で、登る前と後では、物の見え方すら変わってくる気がします」
小岩井さんが初めて富士山に登ったのは19歳の時。友人誘われて登頂したものの、高山病に悩まされ、景色の記憶もほとんど残らなかったという。「もう二度と登りたくない」と感じたのが正直なところだった。転機となったのは、数年後。父とともに訪れた精進湖で、夜明けの富士山を見た時だった。
「シルエットになった富士山が朝日で少しずつ染まっていく。その姿を見て、“この山はすごい”と感じたんです」















