
異次元のストレッチ性能と豊富なギミック。ファイントラックのハードシェル「エバーブレスアクロ」を雪山でフィールドテスト!
各メーカーが雪山登山用にハードシェルをリリースするなか、ファイントラックの「エバーブレスアクロ」は優れたストレッチ性と多数の独自機能で一線を画すウェアとして評価が高い。そんな優秀なハードシェルが今季、ディテールを見直してリニューアル。新しくなったエバーブレスアクロの基本性能と新機能を、冬の八ヶ岳で確かめた。
文=吉澤英晃、写真=加戸昭太郎、デザイン=熊谷篤史
協力=ファイントラック [PR] 2023.11.21
文=吉澤英晃、写真=加戸昭太郎、デザイン=熊谷篤史、協力=ファイントラック
[PR] 2023.11.21
違いがわかるハードシェル「エバーブレスアクロ」

風雪にさらされる雪山の稜線。環境が厳しくなるほど高性能なハードシェルが欠かせない
雪山は厳しい世界だ。特に、森林限界を超える標高では身を隠せるポイントがほとんどなく、風雪に耐えながら長時間の行動を強いられることも珍しくない。
だからこそハードシェルは雪山登山のレイヤリングにおいて重要な存在で、雪や風など行動不能につながるさまざまな外的要因から体を守る高度な性能が求められる。

ファイントラックが作り上げたハードシェル「エバーブレスアクロ」

生地にはストレッチ性の高い防水透湿素材「エバーブレス」を採用
国産アウトドアブランド、ファイントラックがラインナップするハードシェル「エバーブレスアクロ」は、優れた性能と国内の雪山登山に幅広く対応する汎用性の高さで知られている。
使われている素材はストレッチ性を備える独自の防水透湿素材「エバーブレス」。確かな防水透湿性能を備えつつ、縦横に伸びる生地を使うことで、ハードシェルにありがちなゴワゴワする硬い着心地をほとんど感じさせない点が特徴だ。

背面の黒い生地は、「エバーブレス」よりもさらに伸縮性の高い「エバーブレスニット」。アイスクライミングなどダイナミックな動きにも追従する
そこに、効果的な換気を可能にするベンチレーター、袖口からの雪の侵入を防ぐダブルカフ、ゴーグルなどの曇りを抑えるブレスベンチレーターなど、使い勝手を左右するギミックを多数搭載。
“遊び手が創り手”を掲げるファイントラックが手掛けたハードシェルとあって、「こんな機能が欲しかった」と感心してしまうほど、とても気の利く一着に仕上がっている。

2023年3月、八ヶ岳の赤岳でテストを行なった
2023年の冬、エバーブレスアクロはさらに使いやすくリニューアルした。大きな変更点は、ジャケットに新たに配置された大型のチェストポケットと、パンツに採用した高い耐久性を誇る生地のふたつだ。
生まれ変わったエバーブレスアクロの新たな実力はどれほどか? 冬の八ヶ岳で行なったフィールドテストによるリアルな使用感をレポートする。
Point1ジャケット・パンツに備わるベンチレーターで行動が快適に

赤岳鉱泉から文三郎尾根ルートで赤岳山頂をめざす
今回のテストでは南八ヶ岳の中腹に立つ赤岳鉱泉を起点として、八ヶ岳の最高峰、赤岳を文三郎尾根からめざすことにした。
まず、樹林帯を歩きながら感心したのがベンチレーターの有用性だ。エバーブレスアクロには、ジャケットとパンツにそれぞれベンチレーター「リンクベント」が備わっていて、行動中に暑さを感じたときにこのファスナーを開けると、内側の熱を排出して上昇した体温を調節できる。

「リンクベント」を開けることで体温調節が可能に
特に下半身のレイヤリングは行動中に脱ぎ着することが難しいため、パンツに備わるベンチレーターは非常に便利。風が弱い樹林帯ではファスナーを開けて涼しく歩き、森林限界以上ではベンチレーターを閉じて行動するといった、時々の状況に応じて思い通りに体温を調節できるのがすごくいい。

ジャケットのリンクベントはザックを背負った状態でもスムーズに開けることができる
ジャケットに備わるベンチレーターは一般的な機能だが、脇下にファスナーが位置しているモデルが多いなか、エバーブレスアクロジャケットのリンクベントは体の両サイドに配置されている点が特徴だ。ザックを背負った状態でもショルダーハーネスに干渉せず、無理のない体勢でスムーズに操作できる点は感動を覚えるほど使いやすかった。
Point2ダブルカフが冷気の侵入をシャットアウト

袖口には手首にフィットするもうひとつのカフを内蔵
エバーブレスアクロジャケットの袖口は、内側にもカフを取り付けた「ダブルカフ」という仕様で作られている。ダブルカフを搭載するハードシェルジャケットは数が少なく、その実用性を知らない人は多いだろう。実は筆者もそのひとりで、ダブルカフの存在は知っていても、実際に使ったことは一度もなかった。

袖口は面ファスナーでも冷気の侵入をシャットアウト
では、現場で試してみた感想はどうかというと、こちらもかなり好印象。ダブルカフがあるエバーブレスアクロジャケットは袖口から冷気が侵入してこないので、着ていると温かく感じるのだ。さらに、面ファスナーで袖口を絞るとグローブとのあいだに一体感が生まれ、冷気だけでなく、風、雪、雨など、あらゆるものの侵入をさえぎってくれる安心感があった。

岩場で腕を上げても生地の突っ張りは気にならない
ここまで一体感があると、腕を上げたときに肩回りの生地が突っ張るだろうと推測したが、そこはさすがエバーブレスアクロ、抜群のストレッチ性で動きやすさは変わらず、両手を使って岩場を通過するときもストレスを感じずに行動できた。
Point3風雪をさえぎるフードが秀逸

頂上に近づくにつれて風が強まってきた
今回のテストにはファイントラックでマーケティングを担当する岩狭勇士さんも同行。ふたりで標高2899mの赤岳をめざしていると、頂上付近で強風が吹きつけてきた。風で飛ばされた雪の結晶がバチバチ当たって顔が痛い。このような状況で違いが表れるのがフードの性能だ。

ヘルメットをすっぽり覆うことができるフード。ファスナーを上げると鼻までカバーできる
エバーブレスアクロジャケットのフードはヘルメットに対応する大きさで作られていて、高めの襟が鼻まで覆い、ファスナーを上げると顔の露出を少なくできる。
ヘルメットに対応するフードは珍しくないが、襟が高いジャケットは手に入れたくても数が少ない。エバーブレスアクロジャケットのフードが備える高いプロテクション性能は特筆すべき特徴だ。

ブレスベンチレーター(灰色の網状の部分)があるので口元を覆ってもストレスなく呼吸できる
しかし、防御力に優れる一方で、生地が鼻や口元に当たり息がしづらいと考える読者がいるかもしれない。
その点、エバーブレスアクロジャケットは呼気の通り道となる「ブレスベンチレーター」を搭載。おかげで、顔がフードで覆われても息苦しさはほとんど感じず、着けているメガネが曇ることもほぼなかった。
このフードの完成度の高さは、環境が厳しくなるほどありがたいと感じるはずだ。
Point4グローブも入る大型ポケットで収納力が大幅アップ

晴天の下、山頂に到着
空は晴れても風は止まず、寒さに凍えながらのテストになったが、昼前には無事、赤岳に登頂。雪山は厳しい世界である一方、冬だからこそ空気が澄み渡り、山頂からの眺めは抜群にいい。雪をまとって白く輝く山並みもこの季節にしか出合えない絶景だ。

新モデルはハンドポケットをなくし、大きめのチェストポケットをふたつ搭載
ひとしきり山頂で展望を楽しんだあと、場所を移して小休止。ここで新しくなったジャケットのポケットの使い勝手を確かめた。
従来のモデルにはふたつのハンドポケットとひとつのチェストポケットが備わっていたが、今回のリニューアルではハンドポケットをなくし、代わりにチェストポケットをふたつに増加。さらに、ポケットのサイズがひと回り大きくなっている。
多くのジャケットがハンドポケットをハーネスに干渉しづらい位置に配置しているが、実際にはヒップベルトなどで一部が覆われてしまうことも多く、正直言うと使いやすいと感じたことは一度もない。それもあって、潔くハンドポケットを排除したエバーブレスアクロジャケットのリニューアルには深く共感することができた。
さらに、サイズをグローブが余裕で収まる大きさに改良した点も、ユーザー目線のモノ作りが垣間見えるポイントだ。地図や行動食なども余裕で収納でき、使い勝手はとてもよくなったと言えるだろう。

チェストポケットはグローブや地図が無理なく入る

ポケットの内側にはオーガナイザーポケットがある
そして、内側にはスマートフォンなど小物を収納するためのオーガナイザーポケットがあり、小さなアクセサリーがポケットの中で暴れない配慮にも創り手のこだわりを感じられた。
経験から生まれた機能を多数搭載
山頂をあとにして赤岳鉱泉に戻ってきてから、行動中に確かめきれなかったそのほかの機能について、岩狭さんに話をうかがった。

エバーブレスアクロに触れながら使用感や機能を確かめ合う
吉澤「赤岳に向かう途中でもエバーブレスアクロの性能の高さを充分に実感できました。ただ、ほかにも細かな機能があるということで、ひとつずつ簡単に紹介してください」
岩狭「では初めに、最も気づかれにくいマニアックな特徴からお話しますね。エバーブレスアクロジャケットは袖口の面ファスナーにこだわりがあって、オス側のパーツがほかの生地に引っかかりにくい特殊な作りをしているんです」

エバーブレスアクロジャケットのオス側の面ファスナーは特殊な形をしたプラスチックで作られている
吉澤「確かに、インナーグローブで触れてもくっつかないですね。これは言われるまで気付きませんでした。でも、面ファスナーとしてはちゃんと機能しているから不思議です」
岩狭「布製のグローブで面ファスナーに触れたとき、引っかかってそこから生地がほつれてきてしまった。そんな苦い経験からこのような素材を探しました」
吉澤「現場で得た経験を商品開発に生かしている好例ですね。ほかにも似たような機能はありますか?」

裾のずり上がりを防ぐパウダーハーネス
岩狭「裾のずり上がりを防ぐパウダーハーネスは、アイスクライミングやラッセルの経験から生まれた機能です。グローブなどを引っ掛けておけるD環も、あると便利だという経験上の理由から取り付けています。フードの裏側には音を聞こえやすくする小さな穴があり、これはフードをかぶる状況下のクライミングで仲間の合図を聞き取りやすくするための工夫です」

腰部分にグローブなどをぶら下げておけるD環を配置

音を拾いやすくするようにフードの裏側に小さな穴が開けられている
吉澤「それぞれの機能が生まれた背景をあらためて聞くと、本当によく考えられて作られていると感心します。これはパンツにも同じことが言えるのでしょうか?」

登山靴を脱ぎ履きしやすいようにパンツの裾は大きく開く

アイゼンの爪で傷つかないようにアイゼンガードは縦に長く設計されている

擦れやすい膝下はエバーブレス生地のなかでも最高強度の素材を採用
岩狭「たとえば、冬靴が履きやすいようにファスナーで大きく開く裾のデザインや、内股側に配置したアイゼンガードが比較的縦に長い設計も、経験を元にして考えられています。さらに、今年からダメージを受けやすい膝から下には112デニールのナイロン生地を採用。エバーブレス生地のなかで最も高い強度を誇る素材で、ハードなアクティビティでますます使いやすくなりました」
ソフトな着心地&充実の機能で雪山登山はもっと快適に

エバーブレスアクロの着心地のよさは快適で安全な登山を実現してくれる

エバーブレスアクロなら厳冬期の雪山縦走やアイスクライミングにも対応できる
今回のフィールドテストで強く印象に残ったのは、圧倒的な着心地の良さだ。
柔らかい生地でストレッチ性を備えるハードシェルはほかにもあるが、そういったモデルは軽さを意識したものが多く、生地の薄さが気になっていた。その点、エバーブレスアクロは主に50デニールのナイロン生地を使い、耐久性は充分。生地にはコシもあるので、守られている安心感をしっかりと感じることができた。
そして、プロテクション性能の高いフードの形状も秀逸だった。今回も風は強かったが、さらにハードな厳冬期などの吹雪を想像すると、ますますエバーブレスアクロのフードが魅力的に映る。
そこにベンチレーターや大型チェストポケットといった便利機能も搭載し、使い勝手も申し分ない。
仮に筆者が何着もハードシェルを所持していて、その時々で使い分けることができるとしたら、厳冬期のアイスクライミングや雪山縦走には積極的にエバーブレスアクロを選ぶだろう。
今回のリニューアルで一段と完成度を増したエバーブレスアクロは、あらゆる雪山で登山者をサポートする頼もしい一着になるはずだ。
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