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GREGORY BALTORO COLLECTION GREGORY BALTORO COLLECTION

グレゴリーの大型バックパック「バルトロ」。
進化した人気モデルの実力を検証する

山岳用バックパックの世界では、以前から確固たる地位を占めているアメリカのブランド「グレゴリー」。 大型モデルの代表が「バルトロ」シリーズだ。「バルトロ」という名称はブランドの顔となるモデルに代々受け継がれ、数年ごとにリニューアルされてアップデートされてきた大人気製品である。僕自身、2018年に発売された前モデルを含め、これまで数タイプのバルトロを使い続けてきたこともあり、リニューアルをとても楽しみにしていた。旧バルトロから進化した部分を確認しながら、僕が実感した最新型バルトロの機能性をお伝えしていきたい。

山岳・アウトドアライター 高橋庄太郎

REVIEWER山岳・アウトドアライター 高橋庄太郎

高校の山岳部で山歩きをはじめ、いまや登山歴35年以上。さまざまなスタイルの登山のなかでも特にテント泊山行を愛している。近年はイベントやテレビへの出演が多く、アウトドアギアのプロデュースも行なっている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peaks)など多数。

幅広いシーズンのテント泊に。
細やかなフィッティングを実現した新バルトロ

2022年バージョンの新バルトロには容量65Lや75Lなどのタイプが展開されている。また、バルトロの女性モデルに位置づけられるのが、女性の体に合うハーネスを備えた「ディバ」である。僕は今回のテストのために、バルトロ65を選んだ。テント泊装備は寝袋や防寒着のかさばりのために季節によって変わり、宿泊日数によって持参する食材の量が変わるが、容量が65Lもあれば、無雪期ならば3~4泊くらいまでは充分に対応できるサイズ感である。もちろん週末の1泊2日程度ならかなり余裕を持ってパッキングできる。

バルトロ

さて、新バルトロの特徴について、具体的に見ていこう。

これまで代々のバルトロはフィット感のよさを最大の売りにしてきた。もちろん、この新バルトロも例外ではなく、それどころかさらに進化したシステムが採用されている。

バルトロは3色展開。写真はアラスカブルー

まずは背面パネルとショルダーハーネスを見てほしい。

以前からグレゴリーの大型モデルは使用する人の体格に合わせ、背面長とヒップハーネスは数種のサイズが展開されていた。旧バルトロの背面長はS、M、Lの3サイズで、それぞれの背面長の長さは調整できないものの、2サイズ展開が多い他メーカーに比べると細かく選べるのが大きなメリットだった。しかし新バルトロはS、M、Lの3サイズ展開を維持しながらも、さらに背面長の調整ができるように進化。これは僕にとって驚きのひとつだ。

グレーのパネルの上部に注目。この部分が上下にスライドし、適切な背面長に合わせられる

それを可能にしたのが、新しい“アダプタブル・フィット・システム”だ。以前ならば、間違ったサイズを購入するとあとで調整しきれなかった。しかし新バルトロは、S、M、Lのそれぞれが3インチ(約76mm)の幅で調節でき、対応できる背面長が、SとM、MとLがそれぞれ2インチ(約58mm)ほどオーバーラップしている。だから、例えば「自分の身長に最適なのはMかLかわからない」という微妙な体格の人は、どちらを選んでも高いフィット感が保証される。ちなみに、身長177cmの僕が選んだのはサイズMであった。

ショルダーハーネスとバックパック本体の連結部分には三角形の樹脂プレートが使われ、体の動きに追従して角度が変わり、効果的に荷物の重さを支える。この点は旧バルトロも同じだ。だが、旧バルトロはショルダーハーネスの位置を2カ所に付け替えて調整できたのに、新バルトロは1カ所に固定されてしまった。一見すると “退化”に感じられなくもない。

バックパック本体とショルダーハーネスは、樹脂プレートの下の黒い丸の部分で連結。この部分を支点として、ショルダーハーネスの角度が変わる

しかし心配は無用だ。先ほど説明したように、新バルトロは背面長が調整できるようになり、それとともにショルダーハーネスとバックパック本体の連結部分も前後に移動する。そのためにショルダーハーネス自体を調整する必要がなく、1カ所に固定されていてもまったく支障は感じない。

また、ショルダーハーネスのパッドはわずかに幅が広がり、実測で最大8㎝。しかも肉厚になり、ますます荷物の重さを緩和してくれる。

チェストストラップのバックルはホイッスルを兼ね、緊急時に役立つ

背面の構造とともに体へのフィット感を大きく左右するのが、ヒップハーネスだ。この部分にも新バルトロは大きな進化を見せていた。

パネルを出し入れし、片側3.5インチ(約89mm)、左右で合計7インチ(約178mm)の幅で調節可能

それは左右のパッドの長さをそれぞれ調整できる新システムで、“フリー・フロート・ダイナミック・ヒップベルト”という名称。旧バルトロもヒップハーネスの微調整はできたが、新バルトロは引き出すだけのシンプルな仕組みで直感的にわかりやすい。なにより、ますますフィット感が高まっているのが実感できる。

ヒップハーネスを上から見た様子。円状に腰回りが程よく包み込まれる

僕は腰回りが比較的しっかりした体型だ。だが、そんな僕が背負ってもヒップハーネスはかなり余裕がある。だから、パネルをあまり引き出さなくても、充分にフィットさせられた。むしろ一般的な体形の方は、大きいサイズを選ぶとヒップハーネスの長さが余る可能性もある。だがこの部分は長くすることはできるものの、それ以上短くは調整しきれない。そこでサイズを選ぶときは、先に調整の幅が狭いヒップハーネスが腰に合う長さかどうか確認し、それから調整の範囲が広い背面長を見ていくほうが失敗は少ないように思える。

腰回りに余裕があることもあり、ヒップハーネスのストラップはかなり余った。そのままでは歩行中に邪魔になるので、僕はカットしてライターの火であぶって末端を処理。短く調整して使いやすくした。ご参考までにお伝えしておこう。

左が当初の長いままのストラップ。右がカットして短くしたストラップだ

ともあれ、バルトロはこのように背面パネル、ショルダーハーネス、ヒップハーネスが連動し、荷室本体の外周を支えるフレームとともにバックパックをサポートする。これがバルトロの誇る“フリーフロートA3”というシステムだ。

フィット感の調整方法は従来よりも格段にラクになった。もちろん以前からバルトロのフィット感はさすがだったが、そのためには正しいサイズ選びが大優先だった。だから購入後はあまり細かな調整はできず、できる部分であっても調整方法が少し難しく、正直なところ、ちょっと面倒だったのだ。だが新バルトロは多少大雑把にサイズを選んでもあとから調整でき、しかもその調整の方法は簡単である。これは大きな進化だ。

背面長などを合わせ、フィット感を調整すると、すばらしい背負い心地に!

フィット感のチェックの後、僕は歩き始めた。容量65Lのバルトロにテント泊装備を詰め込み、見晴らしのいい山頂を経由して山中のテント場をめざしていく。

バルトロ

歩いて実感。
新バルトロの背負いやすさ、使いやすさ

初夏の山を小一時間も歩いているとさすがに汗ばんでくるが、バルトロは想像以上にさわやかな背負い心地だった。背面パネルや各種ハーネスに目の粗さを変えたメッシュ素材を使いつつ、体へ触れる面積を90%も抑えたオープンエア3D構造の“エアクッション・バックパネル”にすることで、最大限の通気性と吸汗発散性を高めているからである。また、メッシュ部分にはバクテリアの増殖を抑えて防臭効果を発揮する「ポリジン」が使われている。

背面は2種類のメッシュ素材を重ねて作られた3D構造

肝心の荷重分散効果は、やはり上々だ。とくに急斜面で前かがみになったときや、曲道で体が左右に振られたときに、腰や肩への負担が少ないのには感心した。

荷重は背中全体に拡散され、体のどこにも違和感はない

細かいところでいえば、僕がうれしかったのは、背面のいちばん下部にある三角形の“滑り止め”の部分だ。少しべたつく感じのするゴムのような素材で、背負ったときにバックパックが上下左右にずれるのを防ぐ小さなパネルである。

これは旧バルトロにもつけられていたが、その面積が広すぎたために歩行中に着ているウェアが無用にズレ上がる原因になるなど、僕にはむしろ不要だと感じていた部分だった。だが、新バルトロの滑り止めは必要最小限の小さなサイズ。充分な機能を果たしつつも、ウェアがずり上がらず、ストレスがなくなった。この改善はとてもありがたい。

最下部の三角形が“滑り止め”

テント泊装備を背負って急斜面を進んでいると、いくらバルトロの荷重分散力が高くてもさすがに次第に疲れてくる。僕は休憩をはさみながら、さらに標高を上げていった。

バルトロ

休憩中の楽しみのひとつは、好みの行動食をとることだ。僕はいつもバックパックのリッド(雨蓋)のポケットに行動食を入れているが、その点から見てもバルトロは使いやすい。ポケットが大きいだけではなく、内側に明るい色を使っているため、内部のモノが見やすいのだ。また、ポケットが二重になっていて小分けしやすいのもいい。

リッドの表面のポケットは小さめで、財布などを入れるのによい。下のメインポケットはA4サイズほどもあり、立体的で大量のモノが入れられる フロントのサイドにも大型ポケット。左右2つあって縦に長く、内部で仕切られている フロントには大きなメッシュポケット。雨で濡れたウェアなどを入れるのによく、伸縮性もあってヘルメットも収められる

こんなポケットに限らず、バルトロはパッキングもしやすいデザインだ。旧バルトロはバックパック内部にフレームやバックルがむき出しで、それが荷物に引っかかって邪魔になることもあり、僕は少し不満に感じていた。しかし新バルトロは内部がライナーで覆われ、引っ掛かりを防止。スムーズにパッキングできるようになっていた。

バックパック本体へのアクセスも簡単。両手でコードを引っ張るだけで、荷室への入り口が瞬間的に開く

背負い続ける時間が長くなるにつれ、ますますバルトロが僕の体になじんでくるのがわかる。これまでに使ってきた旧バルトロと同じように、新バルトロも信頼できるモデルのようである。

先ほど説明した以外にもポケット類は行動中に使いやすい場所にも複数つけられている。例えばボトル用サイドポケットには伸縮性素材が併用され、ホールド感がアップ。その代わり、ボトルを固定するバンジーコードは省かれているが、今回使った感じではまったく支障はなかった。

ボトル用ポケットは、背負ったままでも取り出しやすい位置。使わないときは畳んで収納もできる

テントサイトや雨中の印象

山頂での景色をたっぷり楽しんだ後、僕はテント場へ向かった。天気は悪化しつつあり、すばやくテントを設営したいところだったが、ここでもバルトロらしい特徴が際だった。荷室へのアクセス方法が考えられており、荷物の取り出しがバツグンにスムーズなのだ。

バルトロ

バルトロはいわゆる二気室構造でバックパック下部にもファスナーがつけられ、そこからも荷物を出すことができる。また、フロントのパネルもU字型に大きく開き、荷室のほぼ全域が露出。そのためにテント泊装備がすぐに取り出せ、おかげで設営時間を短縮できた。

下部のファスナーを開いた状態。なお、僕はいつも内部の仕切りを使わずにパッキングしている 大きく開いたフロントのパネル。バックパック内部も明るいカラーリングで視認性を高めてある

バルトロで運んだ荷物で一晩を明かすと、翌日は残念ながら雨だった。そこで付属のレインカバーをかけて、下山を開始する。

レインカバーのボトム部分には水抜きの孔もあり、必要充分な機能性

レインカバーにはストラップとフックがついており、バックパックに固定すれば強風の際でも吹き飛ばされない。安心感が高いディテールである。

その後、標高を下げると山頂付近を覆っていた雨雲の下に出たらしく、いつしか再び好天に。青空の下で山行を終えられるのは、やはり気分がいいものである。

バルトロ

テスト山行を振り返って

バルトロ

4年ぶりにリニューアルされたバルトロは、期待を裏切らない仕上がりだった。旧バルトロへわずかに感じていた僕の不満も解消され、完成度の高さは間違いない。これから大型バックパックを買ってテント泊登山に挑戦したい人や、他モデルにしっくりきていない人は、一度試してみる価値がありそうだ。旧タイプのバルトロをすでに持っている方もきっと買い直したくなるに違いない。今年の夏山では、新バルトロを背負って長距離縦走へ出る人が多そうだ。

PRODUCT INFORMATION

BALTORO(バルトロ)/MENS

BALTORO 65
BALTORO 65
  • 価 格:44,000円(税込)
  • 容 量:65L(Mサイズ)
  • 重 量:2.23kg(Mサイズ)
  • カラー:アラスカブルー(写真)、オブシダンブラック、
  •     ブリックレッド(BALTORO65のみ)
  • サイズ:S、 M、 L
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BALTORO 75
  • 価 格:48,400円(税込)
  • 容 量:75L(Mサイズ)
  • 重 量:2.26kg(Mサイズ)
  • カラー:BALTORO 65と同様
  • サイズ:BALTORO 65と同様
  • 商品の詳細を見る

DEVA(ディバ)/WOMENS

DEVA(ディバ )/WOMENS
DEVA 60
  • 価 格:44,000円(税込)
  • 容 量:60L(Sサイズ)
  • 重 量:2.10kg(Sサイズ)
  • カラー:エッグプラント(写真)、フォググレー
  • サイズ:XS、 S、 M
  • 商品の詳細を見る
DEVA 70
  • 価 格:48,400円(税込)
  • 容 量:70L(Sサイズ)
  • 重 量:2.13kg(Sサイズ)
  • カラー:DEVA 60と同様
  • サイズ:DEVA 60と同様
  • 商品の詳細を見る

※価格は公開時のものです

お問い合わせ

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www.gregory.jp

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