1200年の歴史と絶景が待つ
比良比叡トレイルへ
1200年の歴史と絶景が待つ
比良比叡トレイルへ
協力=比良比叡トレイル協議会
Sponsored contents 2023.03.20
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自分の足で歩くからこそ出合える、その土地ならではの自然や文化を満喫しよう!
山頂をめざす登山ではなく、観光地を巡る旅行でもない。ロングトレイルは、山と山をつなぎながら〝歩く旅〞をするものだ。自分の足を動かして、その土地ならではの自然を愛で、文化を味わいながら、また歩みを進める。そんな〝歩く旅〞は、日本では古くから親しまれ、たとえば四国遍路や熊野詣で、お伊勢参りは、信仰であり、一種のレジャーでもあったという。
そして今、古くて新しいハイキングのかたちとしてロングトレイルに注目が集まり、全国各地にトレイルが整備され、日本列島を縦断するJAPAN TRAILのプロジェクトも発足。私たちはその一つ、滋賀県にある比良比叡(ひらひえい)トレイルに向かうことにした。
沖縄・九州から北海道まで、日本各地にあるトレイル。それらの道をつなぎ、日本列島を縦断できる「JAPAN TRAIL」を、日本ロングトレイル協会が提唱。スローガンは、Hiking Nippon(ハイキングニッポン)。
森を抜け、山を越え、海を眺め、人と出会う。そうして日本の魅力を再発見しながら、総距離約1万㎞に及ぶ〝歩く旅〞が楽しめるのだ。
琵琶湖展望の道 ~権現山から蓬莱山へ~
琵琶(びわ)湖の西側にある山々をつなぐ比良比叡トレイル。奈良時代から山岳信仰の霊場だった比叡山と、眼下に琵琶湖が広がる比良山地を結ぶ総距離約55kmのトレイルで、7つのセクションに分かれている。遠目にはひとくくりに見える山地だが、足を踏み入れてみると、それぞれの魅力は好対照。今回は2つのセクションハイクをすることにして、比良比叡トレイル協議会の澤山惠さんと山本信一さんに案内してもらい、まずは絶景が待ち構えるという「ルート03 琵琶湖展望の道」へ。
スタート地点となる還来(もどろぎ)神社は、「故郷に無事還れる」というご神徳から旅の安全を祈願する人が多く、旅する気分が高まる。上龍華(かみりゅうげ)の集落を抜けて林道、さらに霊仙(りょうぜん)山からズコノバンへは急登が続き、日本の低山を見くびるべからずといった風情の、つまり結構きつい山道だ。視界は木々に覆われて、合間から時折チラリと小さく琵琶湖が姿を見せるだけ。そんな絶景おあずけをされながら権現(ごんげん)山山頂までたどり着くと、突如として眺望が開けて、ようやく大きな琵琶湖のお目見えだ。
日本最大の湖である琵琶湖は、南北に63km以上。権現山あたりでは、南北のくびれ部分に架かる琵琶湖大橋を境に、南湖と北湖の両方が眺められる。でもここで、なんて大きいんだろう……と感嘆にふけるのは気が早い。「南湖と北湖の面積比は1対11。この先、琵琶湖の違う表情がまだまだ楽しめますよ」と山本さんに教えられた。
権現山から先は、〝登る〞より〝歩く〞という表現がふさわしい、なだらかなアップダウンの稜線が続く。アセビやドウダンツツジなどの灌木帯で、視界をさえぎるものもない。さらにホッケ山までたどり着くと360度のパノラマビュー。小女郎(こじょろう)峠あたりからは笹原になり、比良比叡トレイルの山々が前に後ろに広がり、京都へと連なる山並みも一望できる。北へと進むにつれスケールが大きくなってくる琵琶湖は、撮影しようとしたカメラマンが「端まで入りきらへん」とつぶやくほどの広大さ! おのずと足取りは軽くなり、対岸にある鈴鹿(すずか)山脈や伊吹(いぶき)山など、滋賀の山の魅力を澤山さんにうかがいながら稜線歩きを楽しんだ。
一気に人が多くなったら、「びわ湖バレイ」がある打見(うちみ)山。ここはロープウェイでも行ける人気観光スポットで、山の絶景を手軽に楽しめる。けれども、手軽さとは真逆の山旅をしてきた私は、歩いてきたトレイルを振り返り、程よい足の疲れを誇らしく思った。
比叡山 祈りの道 ~千日回峰行の道をたどる~
比良比叡トレイルのもう一つの象徴的な道が、「ルート01 比叡山祈りの道」だ。この日は比良比叡トレイル協議会の事務局長である小川隆さんを筆頭に、山本信一さん、柿本秋男さんに案内してもらう。
比叡山といえば、世界文化遺産でもある名刹、延暦(えんりゃく)寺。山全体が広大な境内になっており、山内は東塔(とうどう)・西塔(さいとう)・横川(よかわ)の3つにエリアに分かれ、それぞれ中心となる本堂をはじめ、合計約100もの堂宇がある。「このルートでは3エリアを巡れるのはもちろん、平安時代から行なわれてきた過酷な修行、千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)の道を歩けるのが魅力です」と小川さん。「1日30kmをおよそ7年かけて延べ4万km歩く荒行」と聞けば、ストイックさのかけらもない私は身震いするが、ロングトレイルの醍醐味である奥深い歴史に心が震える。
スタートは無動寺(むどうじ)坂を登って、千日回峰行での出発地点となる明王堂をめざす。ちなみに、回峰行者が出発するのは深夜2時。真っ暗ななか祈りながら歩き、約260カ所で真言を唱え、山内を足早に巡るという。対して私たちは、木漏れ日が気持ちのいい時間に、東塔エリアにある国宝、根本中堂(こんぽんちゅうどう)などを参拝しながらゆっくりと歩く。
西塔エリアへと進む途中にある浄土院では、比叡山に伝わる厳しい修行の一つ、最澄にお仕えする十二年籠山行が現在も行なわれており、声や足音をひそめて静かに歩むことに。修行堂が多い西塔エリアは静謐で、杉並木からこぼれる光が図らずも神々しい。
横川エリアへは山道らしさが増し、寺院色の濃い石段ではなく、土を踏みしめて歩く。眺望がほとんど利かない分、自分自身と向き合いながら歩みを進めるのは、私たちも回峰行者も同じなのだろうか。「延暦寺の3エリアでは、東塔が現在、西塔が過去、横川が未来を表わしているといい、過去を振り返りながら未来に思いを巡らせて歩ける構成になっている」と柿本さん。意味をもって歩くためにつくられた道を歩く。巡礼の旅といえば大袈裟だが、ここでは自分の一歩一歩が、少しだけ特別なものに感じられた。
さらに山道を進んで、再び荘厳な朱塗りのお堂が現われたら、セクションの終点となる横川エリアだ。今回の〝歩く旅〞はここまで。この先は、次のセクションにつなげて全ルートを制覇してもいいし、別の土地の、別の魅力あふれるトレイルに行くのもいい。どんな景色が、どんな文化が待っているのか。JAPAN TRAILの道は、うんと遠くの、日本の端まで続いている。
(取材日=2022年11月8〜9日)
立ち寄り&宿泊スポット
比良山地に行くときに利用したいのが、近江舞子にある「ジェイホッパーズ琵琶湖ゲストハウス」。琵琶湖畔に安価で泊まれ、おしゃれなリビング&キッチンで自炊もできる。比叡山エリアなら、おごと温泉の温泉宿がおすすめ。湖魚など地元食材を堪能するのも旅の楽しみ!
旅の始まりに立ち寄りやすい大津駅観光案内所「OTSURY」で、琵琶湖らしさに気分が上がるサブレや和菓子を購入。ピンバッジは「比叡山峰道レストラン」で販売
比良山地をハイキングした後は、「天然温泉比良とぴあ」へ。JR比良駅への無料送迎も使えて便利。おごと温泉にも、日帰り湯を楽しむ施設がある
※現在、約60%を確認済み
*トレイルのルートが変更されている場合があります。最新情報は各地域の運営事務局などにご確認ください
*日本ロングトレイル協会は、JAPAN TRAILにおいて発生した災害・事故等について一切の責任を負いません