登山道整備を考える
登山道整備を考える
「登山道整備プロジェクト」助成金活用レポート
写真=杉村 航 協力=ヴィブラムジャパン
Sponsored contents 2022.12.26
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日本の登山道の多くは人々の善意により維持されている。
自然公園は環境省や都道府県が管理するが、予算や人員は少なく、登山道整備の大部分を山小屋などの山岳関係者が担っているのが現状だ。
登山道は放置すれば荒廃し危険なだけでなく、生態系や景観をも脅かす。
コロナ禍で多くの山小屋が経営難に陥った今、登山を持続可能なものにするため、登山者側の行動が求められている。
ここでは、日本山岳遺産基金とヴィブラムジャパンで取り組んでいる「登山道整備プロジェクト」を紹介するとともに、登山者が参加できる登山道整備団体やプログラムを全国からリストアップした。登山道整備に興味を持ってもらうと共に、自身が登山道整備に関わるきっかけにしてほしい。
日本の登山道整備を支援する
ヴィブラムジャパン
日本山岳遺産基金は、日本の豊かな自然を次世代に残すために設立された基金だ。ヴィブラムは、登山靴のソールにも多く使われているイタリアのソールメーカーで、持続可能な環境保全活動を行なうための「ザ・サステイナブル・ウェイ」への挑戦に取り組んでいる。
この両者が2021年度より始めたのが「日本山岳遺産基金×ヴィブラムジャパン 登山道整備プロジェクト」。ヴィブラムジャパンが国内で登山道整備を行なっている団体に資金を拠出。日本山岳遺産基金を通して助成を希望する団体を募集・選考するというものだ。
2022年度は、「小谷村山案内人組合」「RUN&BEER Forestry」「一般財団法人 白山観光協会」の3つの団体への助成が決まった。今回は助成先団体のうち、「小谷村山案内人組合」の登山道整備活動におじゃました。
栂池から白馬乗鞍岳までを
もっと歩きやすく
約100年の歴史を誇る長野県の小谷村山案内人組合は、構成人数約40名のガイド団体。並行して、長年にわたり登山道整備を行なってきた。現在は夏と秋にそれぞれ2~3日間、白馬岳周辺と雨飾山で活動しており、今回、整備に訪れたのは、白馬岳・天狗原。標高1900mの登山口・栂池自然園から天狗原までの道を整備するという。
白馬大池までのコースで特に整備が必要なのは、比較的斜度が急で荒れやすい白馬乗鞍岳までの区間。過去に何度も補修が行なわれているが、土が流出して段差が大きくなったり、整備に使われた石板が散乱して歩きにくくなっている。また、最近は雨量の増加などにより荒れ方がひどくなっているそうだ。
山道を整備するには、輸送運搬費や資材・物品購入費、人件費などの費用がかかり、今回の助成金もこれらの用途に使われている。整備に使用するのは、耐久性の高い資材。今回購入した丸太は、腐りにくくするために防腐処理が施されており、使いやすいように製材所で細くしてもらったものだった。
近自然工法で長持ちする登山道をめざす
小谷村山案内人組合が行なっている登山道整備の方法は「近自然工法」。以前、雨飾山に「大雪山・山守隊」の岡崎哲三氏を講師に迎えて行なわれた登山道整備技術講習会で教わった手法だ。丸太以外の資材は、登山道周辺のかつて整備に使用された石などをかき集めて再利用している。
杭を打って階段状に整備していた場所だが、杭が雪の重みで押されて歪み、土壌が緩んで崩れてしまっている
水の流れを考慮して丸太を斜めに配置。上写真右下の以前に施工した古い丸太も再利用し、凹凸部分に周囲から拾い集めたかつての石材などを敷いて完成
より安全な新道を計画中
このルートは、最初の尾根筋に出るまでが斜面に作られているため、雪による侵食を受けやすく崩れやすい。現在の道は10年前に崩れた際に新しく付け直された道だが、再び崩れ始めているという。そのため、斜面ではなく尾根筋を通る新道も検討中。一日も早い開通が期待される。
日本山岳遺産基金メンバーも
登山道整備を体験!
「今回の取材で、初めて“登山道整備”を体験しました。何気なく見てきた登山道の姿を整備する側の視点で観察し、実際に自分の手で行なうことで、これまでとまったく違う視点で登山道を「見て」「歩く」ようになりました」(日本山岳遺産基金・堀内孝太郎)
今回認定された他団体
整備山域:東京都・御岳山
整備山域:石川県・白山
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/
ハイクオリティかつハイパフォーマンスのプロダクトをアクティブな生活を送る人々に提供することをビジョンに、それらを何十年も変わることなく追求することをミッションとし、ソールを通じて多くの人々にこの世界の様々な場所を体験して頂けるよう、インスピレーションをもたらす革新的活動を続けている。
ヴィブラムは、アウトドアスポーツの開拓や推進など、私たちの理念に沿った地域社会や非営利組織と数多くのコラボレーションを行なってきました。
同様に、ステークホルダーがますます持続可能な方向へ行動するよう影響を与えるため、長期的なビジョンをもって青少年やサステナビリティの取り組みに投資しています。
ヴィブラムのアイデンティティは、環境保護と人権に強く結びついており、自然との触れ合い、アクティブなライフスタイルの推進、青少年のエンパワーメントなど、ヴィブラムのアイデンティティと一致する非営利組織と連携した活動も実施しています。
登山道整備団体紹介
一般の登山者が参加・協力できる登山道整備団体やプログラムを全国からリストアップした(※2022年12月現在)。実際の登山道整備に参加するのがむずかしい場合は、登山道に関する情報の提供や、ゴミ拾いの手伝い、学習会へ参加するなどの協力の方法もある。
また、もちろんこれ以外にも、地元山岳会やパークボランティア制度など、寄付やボランティアの受け入れ窓口は多数ある。
「登山道の荒廃に登山者は何ができるのか?」
好きな山を守るために、自分にできることを考えてみよう。
『山と溪谷 2023年1月号』より転載