ヤマケイオンライン 山と溪谷社

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クライマー青木達哉の肖像 Alpine climber's Portrait

青木達哉

茨城県在住のクライマー、青木達哉さん。現在は、つくば市にあるクライミングジム「スポーレ」の店長を務める。
青木さんは、東海大学4年生のとき、山岳部のOBと部員から成るK2登山隊に参加。初めてのヒマラヤで世界第二の高峰に登頂し、それは最年少登頂の記録ともなった。また、2013年秋にネパール・クーンブ山域にあるキャシャール(6770m)南ピラーを初登攀し、クライミング界の「アカデミー賞」ともたとえられる、第21回ピオレドール賞を受賞した。
ビックタイトルで知られるようになったクライマーであるが、ただただ山が好きで、クライミングが好きで登り続けてきた15年間。そんな青木さんにとって、いちばん身近にあるフィールド笠間ボルダーを訪ね、青木さんのクライミングについて話を聞いた。
聞き手・文 / 柏澄子 写真 / 杉木よしみ デザイン / yucca

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「もっと山に登りたい」という思いが沸き上がってきたことを、よく覚えています

大学山岳部で登山を始めたのですか。

 高校までサッカーをやっていました。ゴールキーパーでした。大学に入って、なにか別のスポーツをやろうと考えたとき、いくつかの部が頭のなかにあったんですね。山岳部もなんとなくありました。アメリカのレッドロックスだと思いますが、そこでクライミングをしている写真を見たことがあり、クライミングをやってみたいなあと思っていました。けれど、クライミングがどんなものなのか、実際のことは、なにもわかっていませんでしたね。
 それに、小さなころから自然が好きでした。とくに昆虫採集に夢中になっていましたね。今日もこうやって、野外でインタビューを受けることができて、気持ちいいです。いまちょうど風が吹いてきましたが、そんなことを感じられるのは、幸せなことだと思います。
 山岳部に入ったきっかけは、些細なことでした。新入部員勧誘のビラ配りがあり、それを受け取って部室に説明を聞きにいったのが始まりです。クライミングをやってみたかったし、自然が好きだし、だから入ってみようと。
 大学1年のゴールデンウィークに穂高の岳沢へ行きました。僕にとっての初めての合宿で、前穂高岳に登りました。体力に自信はあったんですが、キツかったですね。汗だくになって登りました。山頂に着いたら、年配の方々も登ってきていて、ちょっとショックを受けました。みんな、結構山に登れるんだって思いましたね(笑)。僕ももっと登りたいとも、思いました。
 晴れた穏やかな日で、山頂からの景色がとてもよかったです。360度の眺めが広がり、春の雪山が眩しかったです。その後、日本でもヨーロッパアルプスやヒマラヤでも、たくさんの景色を眺めてきましたが、この時の眺めは忘れられません。あのとき山頂に立って景色を眺めながら、心のなかからじわじわと、「もっと山に登りたい」という思いが沸き上がってきたことを、よく覚えています。
 そこからもうずっと、「山」ですね。

大学4年生のときに「K2最年少登頂」、27歳で「ピオレドール」と、早くから大きなタイトルがつきましたね。

 タイトルはあったけれど、それをねらって登っていたわけではなく、偶然のことでした。登ったら、あとからついてきたような感覚です。
 キャシャール南ピラーを初登攀して、ピオレドールを受賞しました。これは、馬目弘仁さんと花谷泰弘さんと3人で登ったものです。年長は馬目さんで、リーダーは花谷さんでした。僕が年少でした。馬目さんとはその後ももう一度ネパールヒマラヤに遠征に行くのですが、彼と一緒のチームのときはいつも、「リーダーはいても、チーム全員が平等。おなじ一票をもっているんだ。言いたいことはいつでも言い合おう」ということになっています。しかし、この時は僕の経験は圧倒的に少なかったですね。学ぶことばかりでした。僕にとっては、キャシャールを登ってピオレドールを受賞したことよりもなによりも、馬目さん達から学んだことの方が、ずっと大切で貴重です。
 たとえば支点の取り方です。クライマーにとって支点は命を預けるものなので、いかにうまく支点を構築できるかは、重要なことです。

1月の北岳バットレスを登る青木さん。アイガーシリーズの2012年モデルを着用

 馬目さんがリードしていき、僕がビレイポイントに辿りつき、馬目さんの作った支点を見ると、とても勉強になります。僕だったら、どうやって支点を作っていたのだろうか。どこに支点を見いだせたのだろうか。そう考えると、目の前の馬目さんの支点は、いつも学ぶことが多く、キャシャール登攀中も、ひとつひとつの支点を、僕は忘れてはならないと、必死で記憶していました。無事山頂に立ち、下降するときも、支点のことで頭がいっぱいです。懸垂下降していくので、このときこそ、支点がすべてですし。ベースキャンプに戻ってから、気になった支点構築について、日記帳に図解入りでメモしました。いつかあんな場面が来たとき、僕も同じようにできるかわかりませんが、少しずつでも実践していきたいと思っています。すぐに、馬目さんのようなレベルまで追いつけるわけではありませんが、こういう経験ひとつひとつを経て、確実に「引き出し」は多くなったと思います。
 馬目さんは強いクライマーなんです。たとえ状況が悪くなっても、ずっと安定して強いパフォーマンスをみせてくれます。そしてそれは、精神的に強い表れなんだなあと思います。強いけれど、穏やかな口調で、優しい先輩です。山に入ると、厳しいときもあるんですが、いつも彼のオーラを感じます。
 それに自然に対して慈しみがあります。ある岩場にハヤブサが営巣をはじめたため、クライマーが登ると、ハヤブサの生態に影響が出ると、警鐘をならし、クライミング雑誌に記事を書いたことがありました。自分が登ることばかりに夢中になっていると、ほかのことがみえなくなってしまいがちです。けれど、僕たちは自然のなかで登っているのだし、僕自身自然が好きです。その自然を大切にしながら、クライミングを続けていくためには、馬目さんのような視点が大切ですね。
僕にとって馬目さんは、「こんなクライマーになりたい」と思わせてくれる人です。

青木 達哉が語る、マムート最高峰ライン「アイガーエクストリームコレクション」

NORDWAND PRO HS
HOODED JACKET MEN

絶対的な安心感のあるハードシェル。チムニーの登攀など岩との擦れも気にせず使える点も心強い。「アックスを大きく振り上げても、裾が上がらないのもありがたい」と青木さん。両手を挙げた状態でパターンを起こしているため。裾の上がりは、アックスを振り上げることが続くアルパインクライミングにおいて致命的。外気が入り込み体温が奪われたり、不快感も大きい。ジャケット裾内部に取り付けられたフラップは取り外し可能。縁に滑り止めのゴムが配置され、パンツとの相性もよい。外気やラッセル時の雪の侵入を防ぐ。

価格 : 100,000円(+税)

ULTIMATE EISFELD SO
HOODED JACKET MEN

動きやすさが抜群のパターンとストレッチ素材を採用。軽量である点も特筆。GORE® WINDSTOPPER®を搭載し、吸汗速乾性、撥水性、防寒・耐風性を備えたソフトシェル。
春先の好天のなかや夏のヨーロッパアルプスでのアルパインクライミングなどでぜひ使いたい。「動きやすいことは重要」と青木さんも強調するアルパインクライミングのシーンでは欠かせない存在。シンボルカラーのオレンジは、アイガーコレクションにのみ使用することを、GORE-TEX®と契約したオリジナルカラー、視認性も高い。

価格 : 58,000円(+税)

EIGERJOCH ADVANCED IN
HOODED JACKET MEN

550gと軽量ながらも850フィルパワーの良質なグースダウンを使用し、高い保温性を確保。PrimaLoft® Gold Activeを採用している。ヘルメット着用も考えた大きなフード。「アルパインクライミングで厚着をするとしたら、長いビレイの時とビバーク時」と青木さんはいうが、シーンを選べばビレイジャケットにもなる。写真はグレーであるが、内側はアイガーコレクションのオレンジを採用。シーミングやファスナーフラップのデザインなどにもアイガーコレクションのシンボルであるXの形を採用し、全体のイメージを図っている。

価格 : 60,000円(+税)

6年ぶりに完全リニューアル。マムートの最高峰ライン「アイガーエクストリームコレクション」いよいよ登場。