村石太郎がニューモデルを体感!
MAMMUT
バックパック「トリオン・スパイン50」
トレッキングブーツ「デュカンHIGH GTX」
  文=村石太郎 写真=逢坂聡 デザイン=a-pexdesign 協力=マムートスポーツグループジャパン
今春、スイス発のアウトドア・ブランド「マムート」から発売された
バックパック「トリオン・スパイン50」とトレッキングブーツ「デュカンHIGH GTX」。
このふたつの新作を手に、アウトドアライターの村石太郎さんが
山梨県大月市にある岩殿山へと向かった。
村石太郎(むらいしたろう)

1970年、東京都生まれ。国内はもとより、世界各地での精力的取材を続けているアウトドアライター。登山専門誌やアウトドア雑誌などの誌面を賑わせるとともに、ライフワークとして過去20年以上にわたって北アラスカの原野での冒険旅行に取り組んでいる。山と溪谷社からは『山岳装備大全』を上梓(共著)している。「ヤマケイオンライン」では、今回が初執筆となる。

 「次の停車駅は、おおつき。大月に停車します」
 東京の新宿駅から、約1時間半。コトン、コトンと鉄輪がレールを打つ心地よい音とともに中央本線の鈍行電車に揺られて、大月駅に到着した。到着したホームを歩いていると、今日登ろうとやってきた岩殿山の大きな岩肌が目前に迫っていた。
 この山の標高は563mと低めだが、約4時間の周回路にはちょっとした岩場などの難所もある。ここへは、マムートが新しく発表したバックパック「トリオン・スパイン50」とトレッキングブーツ「デュカンHIGH GTX」を試そうとやってきた。
 マムートの創業は、1862年。もともとは農業に使うためのロープ作りを始め、その頑丈さが評価されたことから、次第に登山に用いられるようになっていった。以来、150年以上にわたってクライミングギアやアバランチセーフティ・イクイップメントをはじめ、高機能なウェア、フットウェア、バックパックなどを幅広くラインナップし、数々の革新的な製品を生み出してきた。
 そうしたなかで今季新たに生み出されたのが、いま僕が背負っているバックパック「トリオン・スパイン50」だ。

  • 岩殿山の中腹にある丸山公園には桜の名所となっており、開花時期になれば華麗に咲いた桜の花々と美しい富士山を一緒に望むことができるだろう。
  • 岩殿山の山頂はちょっとした休憩所になっていて、大月の街の向こうに富士山を望もうと訪れる人も多い。案内板によると、かつてここには岩殿城が築かれていたという。
  • 岩殿山への山頂へといたる途中には、自然石を利用して作られた城門「揚城戸跡」がある。こうした史跡を楽しみながら歩けるのも、この山の魅力だ。
  • 岩殿山の山頂を踏んだあと、岩場が出てきた。クサリと金属製の足場が作られているが、途中からは木の根などを頼りに登ることになる。

 

可動域が広く、ストレスなく腕がすっと上がる

 同社製バックパック・ラインナップには、多彩な機能性を持たせた「クレオン」シリーズのほか、軽量性を追求した「リチウム」シリーズなどが揃えられている。そうしたなかで、「トリオン」は耐久性を重視しながら、シンプルで使い勝手に優れた機能を備えたラインナップだ。加えて、なによりもこのバックパックを特徴づけているのが新開発した「アクティブ・スパイン・テクノロジー」という人の体の動きにあわせて可動する独自の背面システムだ。
 ショルダーハーネスとヒップベルトが裏側のグラスファイバー製の支柱でつながっていて、これによって、肩と腰が別々に動くのではなく、連結して、肩や腰にかかる荷重を分散させながら可動域を広げることで、負荷を軽減するようになっている。
 今回のルートでは岩殿山の山頂を踏んだあとで、ちょっとした岩場が出てくるのだが、そこでテストのため登り降りを繰り返した。そのとき、大きく両腕を上げながら登っていったのだが、そうした際にもストレスなく腕がすっと上がる。
 正直なところ、僕はこうした可動式の背面システムに対して疑念を抱いていた。すべてというわけではないのだが、可動域が広すぎたり、あまりに抵抗なくスムーズに動いたりすると、荷物の重さによって体の軸がずれて体力を消耗してしまうと感じていたのだ。
 しかし、この「アクティブ・スパイン・テクノロジー」はショルダーハーネスとヒップベルトがグラスファイバー製の支柱で連結されていて、通常の登山活動ではありえない極端な角度には可動しないように、ある程度動きが制限されているのだ。人の肩と腰は、通常の歩行時には逆の方向へ、同じ角度で傾斜するのだが、この動きにあわせてトリオン・スパインのショルダーハーネスとヒップベルトも同じ角度で、逆の方向へと傾斜するように設計されているのだ。これによって肩や腰にかかる加重を分散させながら、可動域を広げることで負荷を軽減するようになっている。

  • ショルダーハーネスの中央部にあるタブを引くと、上下に可動して個々の背面長にあわせて調節することができるようになっている。
  • 右腕側のショルダーハーネスと、右腰側のヒップベルトは連携していて、同じ方向に傾くことはない。このため自然な体の動きに追従するようになっている。
  • 逆U字型のフルフロント・アクセスジッパーを開くと、直接本荷室内の荷物を取り出すことができる。外側にはほとんどポケットもなく、シンプルで非常に使いやすい。
  • 左胸側のショルダーハーネスには、大型ジッパーポケットが装備されている。リップクリームや日焼け止めなどを収納するのに最適であろう。

 

雪や岩の登山だけに特化したモデルではない

 トリオン・スパイン50の荷室側には2本のアイスアックス・ホルダーがあり、サイドパネルにはスキーを担ぐためのサイド・スキーアタッチメントも備わる。これはアルパインクライミングやスキーツーリングに対応した装備であるが、とくに急峻なアルパインエリアを登っていき、山頂付近から滑走するスキーマウンテニアリングにベストな選択となるだろう。耐久性に優れた420デニール・ナイロンクロス・リップストップ素材を用いた本体は、氷壁や岩肌、クライミングギアやスキーエッジなどとの激しい摩擦を考慮したものだ。ちなみに、サイドコンプレッション・バックルは左右で雄と雌が異なるように取りつけられているので、フロント側に回してスノーボードやスノーシューを装着することも可能だ。
 しかし、トリオン・スパイン50は雪と岩を対象にした登山に特化しただけのモデルではないことも強調しておきたい。背面パッドにあるノブを引っ張るだけで素早く、簡単に個々の背面長にあわせて調節ができたり、軽量化のためトップリッドを取り外すことができたりと汎用性も高い。また、正面に備えられた逆U字型のフロント・アクセスジッパーから本荷室内に直接アクセスすることも可能だ。その本荷室内には、ハイドレーションスリーブのほか、小物を収納するのに便利なメッシュポケットなどが備わる。いっぽう荷室の外側には、左側のヒップベルトポケットとショルダーハーネスにジッパーポケットが備わるだけで、サイドポケットなどはすべて省かれている。近年はたくさんのポケットが備わるモデルが人気だが、個人的にはこのくらいシンプルなほうが、どこに荷物を詰めたのか分かりやすくて使いやすいと思っている。比較的厚手の生地を採用しているため、フロント・アクセスジッパーもストレスなく開き、さっと必要な荷物を取りだすことができる。このため、ほかにポケットの必要性も感じることはない。
 トリオン・スパインには、ほかにも35Lと75Lモデルがラインナップされている。小型の35Lモデルは日帰りの登山やバックカントリーツアーなどに、大型の75Lモデルはバックパッキングなどテント装備を持った縦走登山のほか、長期間にわたる遠征などに向いているだろう。今回僕が背負っていた50Lモデルも、比較的大きめに作られているので、近年の軽量コンパクトな道具であればテント泊装備を収納することも十分対応できる。

 今回のルートは、岩殿山の山頂を踏んだあとで進路を西に向けて天神山へと向かい、最後は浅利川の鉄橋を渡って車道へと戻るという行程であった。ここは、9世紀末に天台宗の寺として開山されたと伝えられ、戦国時代には武田氏と小山田氏によって岩殿城が築かれている。山頂に立つと分かるのだが、周囲がすべて絶壁に覆われていて、要塞とするのに最適な地形であることがよく分かる。
 岩殿山の山頂から少し戻り、さきほど通過した分岐点を別の方向へと歩いていく。すると、築坂峠を越えたあたりでちょっとした岩場があらわれた。ここで僕は、デュカンHIGH GTXの靴紐を締め直した。この靴のシュータン(ベロ)は、片側の生地だけが重なった構造になっていて、抜群のフィットを生んでいる。実際に履いたときの心地よさは、通常の靴のように両側の生地が重なっていては味わうことができない感覚だ。
 靴紐を締め直すと、岩に打ち付けられた鉄ハシゴに手を掛けながら、岩の窪みに足を置いて登った。アウトソールのグリップ感は十分だといえる。

  • 高い防水透湿性を確保するGORE-TEXインサートを採用した「デュカンHIGH GTX」。伸縮性に優れた素材を使ってフィット感も高めている。
  • 「デュカンHIGH GTX」のミッドソールには、写真のように独自開発した波状の金属板「スプリングスチールソール」(オレンジ色のプレート)が組み込まれている。
  • 片側の生地だけが重なった「デュカンHIGH GTX」のシュータン。通常のシュータンよりも部材を少なくすることができるので軽く仕上がり、フィット感も高められている。
  • 岩場を登ったり、降りたりを繰り返しながらアウトソールのグリップ力を確かめる。大月駅に向かう道路脇を流れる浅利川では、濡れた岩の上を歩くなどして確かめた。

 

足裏感覚も、しっかり感じられる

 デュカンHIGH GTXは、これまで同社が築きあげてきたラスト(足型)形状を改良しながら、よりよいフィット感を求めるよう務めた意欲作だ。このモデルでは、新しいラストを採用しながら踵と足首、足裏のアーチ(土踏まず)の3つの重要ポイントのホールド感を高めている。とくに踵は大事なポイントで、踵がしっかりとホールドされていれば、足を上げたときにも靴が踵に追従してくる。この状態が一番疲れにくくて、歩きやすいと感じるのだ。
 また、アウトソールの内側には、適度なクッション性を生むEVA製のミッドソール、さらにミッドソールの内側には、金属製のプレート「スプリングスチールソール」が組み込まれている。これは靴の形状を保ちながら、靴底からの突き上げ感を軽減するためのシャンク・ピースの一種で、波状になっているため足の動きにあわせて無理な方向へは曲がらないよう工夫されている。このプレートがインソールのすぐ下に配置されていることで、疲労の原因となる足裏の無理なねじれを軽減し、横方向の安定感を増すことで荒れた路面などでの保持位置を改善しているのだ。
 かといって重登山靴のように路面の状況がまったく分からなくなるようなものではない。トレッキングブーツで大切な足裏感覚も、しっかりと感じられるよう味付けされているのだ。

  • 今回歩いたルートのハイライトともいえる稚児落としの岩場。ここでなにがあったのかは想像するしかないけれど、なんとも表現できない地名だ。
  • 岩場だけでなく、ルート上は靜かな雑木林のなかを歩く道がほとんどだ。また岩場にも、迂回ルートが設けられているところもある。
  • 稚児落とし手前の緩やかな登り坂。このあと左足に「デュカンHIGH GTX」を、右足には私物のトレッキングブーツを履き、少し早足で歩きながら、足裏への負荷を高めた。
  • 浅利川の橋を渡ってから舗装路へと出ると、そこから30分ほどで大月駅に到着する。岩殿山の岩場は、駅のホームからも望むことができる。

 

足裏にストレスをかけないから、疲労感が少ない

 まもなく、兜岩に到着するという頃、若干硬さを感じていたアッパー部が、ここまで歩いてきたことで徐々に足に馴染んできていた。最初は「比較的、細めかな」と感じていた足型も違和感がなくなり、徐々に僕の足にぴったりとあってきたようだった。こうした感覚は、ほとんどの靴で感じるものであり、だからこそ登山靴を選ぶときにはゆっくりと時間を掛けるといいと言われているのだ。
 ここで、僕はバックパックのなかに忍ばせてきた、普段履いている私物のトレッキングブーツを取り出した。この先は違いを確かめるために片足ずつ違う靴を履いて歩く。ちなみに、このモデルはデュカンHIGH GTXに近い部類のトレッキング・モデルだということだけ伝えておこう。
 右足にデュカンHIGH GTXを、左足には別の靴を履いて歩くこと約2時間。徐々にその違いが出てきた。とくに下り坂が続くとデュカンHIGH GTXを履いているほうの足裏には疲労感をほとんど感じていないことがわかる。左足に履いているブーツには、ソール内にTPUプレートが備わっているものの足裏が横方向へ無理に曲がってしまうのだ。
 下山口に到着した僕たちは、朝に出発点とした大月駅へと戻ってきた。デュカンHIGH GTXのいいところは、駅までの舗装路を歩いたときにも快適だと感じることだ。重登山靴のように硬いソールではなく、ある程度のクッション性が備わっているためだ。もちろん、クッション性とはいっても体が飛び跳ねるような感覚はなく、不整地を歩いていても安定感が生まれるように工夫されている。
 大月駅へと到着したのは午後2時をまわったころだった。それに舗装路に出たあたりから急に、お腹が空いてきてしまっていた。駅前の蕎麦屋を見つけると、店内に駆け込むのであった。そしてテーブルに腰掛けた僕は思った。普通の登山靴を履いていたら、今すぐに脱ぎたくなるだろう。でも、足にストレスを掛けないデュカンHIGH GTXなら登山後も、こうして至福の時を過ごせることが幸せなのだと。


MAMMUT TRION SPINE 50

マムート トリオン スパイン 50

価格:42,000円(税別)
容量:50リットル
カラー:2色

※TRION SPINEには、ほかに35リットル、75リットル・モデルも揃う。女性用として、TREA SPINE(トリア スパイン)35と50の2モデルがラインナップされている。

 

MAMMUT DUCAN HIGH GTX

マムート デュカン ハイ GTX

価格:28,000円(税別)
サイズ:24.5cm~29.0cm
カラー:3色

※DUCANシリーズには、ローカットやミッドカットのほか、3D繊維素材を採用したニットハイカットがあり、それぞれに男性用・女性用モデルが揃う。

問い合わせ先 MAMMUT SPORTS GROUP JAPAN マムートスポーツグループジャパン https://www.mammut.jp