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パタゴニアの定番ダウンがリニューアル 新設計であったか! 環境負荷もさらに軽減!

パタゴニアの定番ダウンがリニューアル 新設計であったか! 
環境負荷もさらに軽減!

パタゴニアの定番ダウンジャケット「ダウン・セーター(Down Sweater)」がアップデートされた。長年ダウン・セーターを使ってきたホーボージュンさんに、その変遷と魅力について聞いた。記事後半では、リニューアルポイントについても詳しく解説!

構成・文=佐藤慶典 撮影=永易量行(商品写真) 協力=ホーボージュン、パタゴニア日本支社 Sponsored contents 2022.11.11

ダウンでも、セーターでもない
世界観をつくった
『ダウン・セーター』

1989年、パタゴニアから「ダウン・セーター」の名を冠した製品がリリースされた。

ホーボージュン

今でも“ダウンジャケット”と言うと、モコモコしてて、がっつりしたアウターで、“ザ・防寒着”を思い浮かべる人が多いんじゃないかな。一方で、“セーター”って言ったら、ニットの丸首のかぶりもので、防風性のないミドルウェアを想像するでしょう。ダウンとセーターを合わせて『ダウン・セーター』というネーミング。当時、ダウンジャケットは保温用のアウターとして認識されていたけど、これにセーターのようなミドラーとしての役割も持たせようとしていることが、名前からも感じられた。このコンセプトを考えたことがパタゴニアの偉業だったね

リリースされたときのことを、こう振り返るホーボージュンさん。

当時のカタログを見ると、現在のモデルと比べると、バッフル(隔壁)は太く、モコモコした印象がある。

ダウンでも、セーターでもない世界観をつくった『ダウン・セーター』
1989年のカタログより

ダウン・セーターが、現在のようなデザインへと進化したのは2004年のことだった。

ホーボージュン

700FPのダウンを採用して、バッフルが細くなって……、アウターとしてはもちろん、シェルの下に着込むミッドレイヤーとしても使いやすくなった。名前と機能が結びついて、名実ともにダウン・セーターになったな、と。すぐにダウン・セーターは大ヒット。アウターもミドラーも兼ねる保温着の機能性の高さや使い勝手のよさは、アウトドアウェアだけでなく、カジュアルウェアまで変えた。他のアウトドアブランドは、こぞって似たような製品をリリースしたし、大手アパレルブランドまでが真似したことからも分かると思う。初めてシンチラセーター(フリース)を出したときもそうだけど、パタゴニアが世界を一変させた。そこには、これまでのダウンでもなく、セーターでもない、ダウン・セーターという新たな世界観があった

ダウンでも、セーターでもない世界観をつくった『ダウン・セーター』
2004年のカタログより

その後のUL系のダウンや、ナノ・パフ、ナノ・エアの開発・発売は、これまでなかったアウトドアウェアのカテゴリー「インナーダウン」や「アクティブインサレーション」へとつながっている。

また、パタゴニアは、企業として初めてペットボトル再生素材や、消費者から回収・リサイクルされた原料を元にウェアをつくったブランドでもある。ダウン・セーターに至っては、2007年にリサイクルポリエステル50%、2008年には100%を達成している。

ホーボージュン

今回のリニューアルでは、生地に漁網をリサイクルした『ネットプラス(NetPlus)』が使われている。カヤックで海に出ると、プラスチックごみがたくさんあって、その深刻さを目の当たりにする。だから、こういった取り組みは大切だよね

今後は漁網など、廃棄されるものを原材料としたウェアづくりが業界の標準となっていくのかもしれない。未知のものを形にし、新たなスタンダードや世界観をつくりあげるパタゴニア。ダウン・セーターは、それを具現化してきたウェアのひとつである。

パタゴニアの羽毛を封入したダウン製品の中でも、ダウン・セーターは汎用性が高く、定番と言える。

ホーボージュン

気温がそれほど低くなく、登山中のバックアップ用に携行するなら、ダウン・セーターよりも薄手のアルプライトシリーズがあるね。これはクライミングなどにも使えるよう開発されたダウンジャケットで、とんがった製品。ダウン・セーターよりも羽毛の量は少なめで、スリムフィットなど、ある程度使う人を選ぶハイエンドモデル。寒さへの強さなど、個人差はあるけど、登山で使いやすいのはダウン・セーターでしょう。普段使いにもいい。羽毛だから収納時に圧縮できて、ザックのスペースをとらないし、小屋やテント内でも暖かく過ごせる。寒ければシェルを羽織ればいいし、テント泊では、着たまま寝たっていい。デイリーユースでは、暑すぎず寒すぎず、収納にも困らない。もし、行動中も着用するのなら、濡れに強い化繊中綿のナノ・パフシリーズを選択肢に入れるといいと思う。パタゴニアには、ダウン・セーターよりも分厚くて、保温力の高いモデルもあるけど、冬期や高山など、使うシーンが限られる。アウターとミドラーの両刀使いができ、シーズンを通して、幅広いシーンで使えるのが、ダウン・セーターの魅力であり、強みだよね!

ホーボージュン

ホーボージュン

全天候型ライター。ペンネームのHOBOは英語で「放浪者」の意。海から山まで、フィールドを問わない旅を続けている。月刊誌『山と溪谷』にて、最新山岳装備のテスト&レポート記事「GTR」を連載中。

着心地や保温力up&
環境への負荷down

ホーボージュンさんも長年愛用するパタゴニアの定番ダウン「ダウン・セーター」。この秋冬にアップデートされた部分について詳しく見ていこう。

着心地や保温力up&環境への負荷down
メンズ・ダウン・セーター

変更点としては、保温力のアップが挙げられる。封入する羽毛量を、旧モデルに比べ、ジャケットタイプは約26%、フーディタイプに至っては約29%と大幅に増量。羽毛量が増えたことで保温性能が上がっているが、サイズ感は旧モデルとほとんど変わらない。これまで同様、アウターとしてはもちろん、ミッドレイヤーとしても使える。また、収納サイズもコンパクトなままで、重量はほぼ変わらないどころか、減っている。登山に有用な優れた携行性を維持したまま、よりあたたかくなったのだ。

着心地や保温力up&環境への負荷down
ウィメンズ・ダウン・セーター

保温力アップの要因は羽毛の増量だけに留まらない。これまで、体幹部は、前身頃と後ろ身頃の2つのパネルで構成されていたが、両脇下にサイドパネルを設け、4方向から立体的に体を包み込むデザインへ変わった。また、ウィメンズモデルは、女性の体によりフィットするよう、ラグラン袖タイプに変更された。さらに、襟を高くし、首周りからの寒気の浸入をシャットアウト、同時に、襟が自立する程度に羽毛を封入した。これは、熱損失の高い襟部分からの放熱を防ぎ、保温効果を高めるためだ。細かな部分ではあるが、サイドポケットのファスナー部分も、コールドスポットとならないよう、表地で隠れる(羽毛で覆われる)よう工夫されている。

生地がよりソフトになり、袖通し滑らかで、着心地がよくなったのも特筆すべき点だろう。表地には、20デニールの肌触りのいいリサイクルのナイロン素材を採用。耐久性が高く、摩耗にも強く、長く愛用できるこの「ネットプラス」と名付けられた素材は、南米の漁業コミュニティから回収された使用済み漁網から100%リサイクルされている。既存のごみを再利用し、バージンプラスチックの必要性を低減、有害プラスチックが海へ捨てられることを防ぐ、有益な試みといえよう。

着心地や保温力up&環境への負荷down

こういった環境や動物福祉問題に製品づくりを通して積極的に取り組んでいるのもパタゴニアならではだ。たとえば、今回紹介したダウン・セーターであれば、

  1. 海洋プラスチックごみを軽減するネットプラスの使用
  2. レスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)認証済みの羽毛を封入
  3. フッ素化合物不使用の耐久撥水コーティングの採用
  4. 無駄な消費を減らし、ごみの発生を抑えるため耐久性を重視する
  5. 「Hand Me Down(お下がり)パッチ」をつけて、製品を長く使ってもらう
  6. もし生地が破損したら修理できるよう、リペアパッチを付属させる(パタゴニアでは、有料修理サービスも行なっている)

といったことが行なわれている。

また、フェアトレード運動への参加や労働者をサポートする団体Mamataの支援など、サプライチェーンにおける安全で公正かつ合法、人道的な就労を構築するといった社会的な問題解決にも取り組んでいる。

Hand Me Down(お下がり)パッチ
Hand Me Down(お下がり)パッチ
付属のリペア・パッチ
付属のリペア・パッチ

特徴

  1. サイドパネルを加えて、より立体的に

    旧モデル(オレンジ)では、体幹部が前身頃と後ろ身頃の2枚のパネルで構成されていたが、今モデル(グレー)からは、設計を変更。両サイドに細身のバッフル形状を持つパネルを加え、計4枚のパネルで立体的に体にフィットするよう改良された。これにより、着心地がよくなり、保温力もアップ。また、脇下のダウンの膨らみが抑えられたおかげで、着用した際のシルエットがスマートなのも特長。腕振りがしやすい効果も。

    旧モデル
    旧モデル
    今モデル
    今モデル
  2. 設計を見直し、寒気をシャットアウト

    首の周りに隙間があると、暖気が逃げて、本来の保温力を発揮できない。これまでもフィット感がよかったが、今モデルからは、襟をさらに高くし、顎下まで届く形状に変更された。ファスナーを上げると、顎下まで隙間なくフィットするため、寒気をシャットアウトできる。また、襟のバッフル数は、コールドスポットとなる縫い目を減らすため、最小限に。封入するダウン量も多めにし、襟部分からの放熱を抑制する設計になっている。

    設計を見直し、寒気をシャットアウト
  3. ダウンを増量して保温力をアップ

    封入される羽毛は、800フィルパワーの高品質なRDSダウンで、ジャケットは、旧モデルより約26%も増量。これらの物理的な羽毛の増量に加え、均一に羽毛を封入するのではなく、襟などの保温力を必要とする部位に、多めに封入するといった工夫や、既述の設計の見直しなどもあり、保温力が上昇している。内ポケットに収納できるパッカブル仕様で、携行性がよく、また、ダウンの復元力が高く、素早く保温力が回復するのもポイント!

    ダウンを増量して保温力をアップ
  4. 滑らかで高耐久な素材「ネットプラス」

    表地には、独特の光沢があり、滑らかで、肌触りがよく、耐久性に富む100%リサイクル素材「ネットプラス」を使用する。見た目、質感共に使用済みの漁網からリサイクルされた形跡は微塵もない。アウトドアアクティビティや日常生活で気兼ねなく使える耐久撥水コーティングされた丈夫な20デニール生地で、リップストップ加工が施され、引き裂きに強い。万が一、穴を開けてしまったときに、自分で修繕できるリペア・パッチが付属する。

    滑らかで高耐久な素材「ネットプラス」

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