16年目のパタゴニアナノパフ。 ——変わらない温もりと信頼性

文=ホーボージュン デザイン=熊谷篤史
写真=門谷“JUMBO”優(フィールド)・中村英史(スタジオ)
協力=パタゴニア日本支社[PR] 2025.11.14
文=ホーボージュン 写真=門谷“JUMBO”優(フィールド)・中村英史(スタジオ)
デザイン=熊谷篤史 協力=パタゴニア日本支社[PR] 2025.11.14

 Nano Puff Jacket
 Men’s
 Wemen’s

長きにわたり、多くの旅を支えてきたパタゴニアのナノ・パフがこの秋、新しくなって登場。
この大定番シリーズの変わらない機能とアップグレードされた機能を、その思い出とともに紹介する。

旧友ナノ・パフ・ジャケットと
数年ぶりに再会を果たした

「よおっ!久しぶり!元気にしていたか?」
先日、古い友だちと数年ぶりに再会した。
「おお!元気にしてたよ。ジュンは変わらないな」
「オマエもな。……いや、ちょっと太ったか?」
「バカ言え。太ったんじゃなく逞しくなったの。あいかわらず口が悪いな」

軽口を叩きながらハグをかわす。彼の名はナノ・パフ・ジャケット。僕らが最初に会ったのは2009年の秋だったから、もうかれこれ16年の付き合いになる。知り合った当時の彼は超ミニマルなプルオーバースタイルで、ハンドウォーマーすらないストイックな姿だったのだが、いまではフルジッパーを備えたジャケットスタイルとなり、誰にでも好かれる好青年に成長していた。とにかく頑丈で、どんな環境、どんな用途にも使えるので、アルピニストからサーファー、あるいは深夜バスに揺られながら国境を越えるバックパッカーまで、世界中の老若男女に愛されている。いまやパタゴニアを代表する大定番モデルとなっているのだ。

初めて彼に会った当時の印象はかなりビミョーなものだった。なにしろ薄い。僕が当時愛用していたふんわりした「ダウンセーター」に比べるとまるでせんべい布団みたいだった。高密度マイクロファイバーで織られた表地は妙にテラテラしていたし、レンガのようなステッチも僕の好みじゃなかった。

ところが何シーズンか使っているうちに、僕はすっかりナノ・パフが気に入ってしまった。なんというか、まったく気負わず使えるのだ。シェルの生地が頑丈なので岩やコンクリートの擦れも気にせずに使えるし、汚れたら洗濯機でガンガン洗える。以前僕はパタゴニアのウェブサイトにナノ・パフのことを書いたことがあるのだが、当時の彼との付き合い方をこんなふうに記していた。

「瀬戸内海300kmをシーカヤックで7日間かけて無補給横断した時には、168時間一度もナノ・パフを脱がなかった。汗と海水と冷たい雨でグシャグシャになった哀れなナノ・パフは、無人島に上陸するとグリグリ絞り上げられ、焚き火で燻され、強制的に乾かされてまた任務に戻った。また去年の2月に氷点下14℃の燧岳で雪中ビバークしたときには、肉球が凍り付いて身動き出来なくなってしまった可哀想な愛犬のために、丸めてベッドとして使われた」

そんなふうにして僕は16年間もガッツリ使ってきた。たぶん現役で使っているパタゴニア製品の中ではもっとも長い付き合いだと思う。この間にナノ・パフにはジャケットのほかにフーディやベスト、パンツなど多くのバリエーションがうまれたが、プリマロフト社の化繊中綿とマイクロファイバーの表地を組み合わせた基本構造や、特徴的なレンガステッチなどはまったく変わっていない。

パッと見ではわからないが、
フィット感が見直された

しかし一見変わらないようでいても、じつは少しずつ変わっている。僕らの身体が新陳代謝を繰り返しながら成長するように、ナノ・パフも何年もかけてスペックアップを繰り返し、機能を熟成させてきた。じつはこの秋に登場した最新のナノ・パフもこっそりとアップデートを受けているのだ。

それはフィット感が変わったことだ。たぶん普通の人にはわからないと思うが、僕は付き合いが長いのですぐにわかった。これまでのナノ・パフ・ジャケット(僕は2020年製のジャケットモデルを5年も愛用している)よりもアームホールがひとまわり大きくなり、上腕が回しやすくなった。またそれにともなって胸回りや肩甲骨まわりもゆったり感じる。このおかげでより多くの人、より多くの用途にフィットするようになっていたのだ。

個人的にはこれはとても嬉しい変更だった。ナノエアシリーズと違い、ナノ・パフはほとんどストレッチしない。だからガタイのいい人間には少々窮屈で「通常サイズよりワンサイズ上げるか、ダイエットに励むか」の選択を迫られていた。それが通常サイズをそのまま着られるようになった。これはマジでうれしい。

写真=ホーボージュン

参考までに着用カットを載せておく。ブルーのモデルが従来モデルで、グリーンが今季モデル。どちらもレギュラーフィットのMサイズだが、胸回りや上腕にゆとりがあるし、肩や肘回りが立体的になって動きやすくなった。今季モデルは中厚のパーカーの上に着込むこともできるようになった(本人比)ので、アウターとしての使い勝手もだいぶ向上している。ほとんどの人にとってこれはうれしい変更点だと思う。

プリマロフトに変更はないが
環境性能は上がっている

今回のモデルの中綿には「プリマロフト・ゴールド・インサレーション・エコ」が使われている。これは2020年から変わっていないが、製造段階で「P.U.R.E」という環境テクノロジーが使われているのであらためて解説しよう。

「P.U.R.E」は「Produced Using Reduced Emissions」の略で「CO2排出量を削減して製造された」という意味合いをもつ。通常ポリエステル中綿を製造する際には高熱オーブンを使ってファイバー同士を溶融して固定する工程が必要だが、その際に多くのエネルギーを使う。そこで特殊なバインダー(接着材)を用いることで高熱オーブンへの依存を減らし、その結果大幅なCO2削減を行うことができた。

この技術はプリマロフト社によって2019年から実用化されているが、そのブランドパートナーであるパタゴニアはいち早くこの素材の導入を進めた。なお中綿自体の厚み(目付)は60g/㎡で、これまでと変わっていない。

PCRポリエステルと
レンガ模様のキルティング

表地と裏地にはリサイクル・ポリエステルが使われている。パタゴニアは長いあいだ、消費者から回収された(ポスト・コンシューマー・リサイクル)ポリエステルの採用率を高めることに心血を注いできたが、前モデルから表地・裏地ともにみごと100%リサイクル素材となった。

このポリエステル生地とプリマロフト中綿はレンガ模様のキルトパターンでしっかりと縫い合わされる。この独特のキルティングのおかげでモコモコせず、シェルの下に着込んでもすっきりとして嵩張らない。

またこのキルティングのおかげで中綿の片寄りがまったくないし(そもそもプリマロフトは板状中綿なのでバラバラになりにくい)、コインランドリーの高温乾燥機にかけても縮みやヨレが出ない。この頑丈さがナノ・パフの最大の美点だと僕は思っている。インサレーションというのはいろいろ気を使うアイテムだが、このおかげでまるで「ホームセンターで買った作業着」みたいにラフに、情け容赦なく使える。これこそが僕が長年愛用している理由なのだ。

ここぞという場面で
とても頼りになるのだ

じつは今回、新作のテストを兼ねて晩秋の3000m峰に登ってきたのだが、当日は絶好の行楽日和で陽射しがポカポカと温かく、汗ばむほどの季候だった。

ところが森林限界を超えてリッジラインに出たとたん冷たい北風に叩かれ、あっという間に体が冷え始めた。すぐにナノ・パフをザックから取り出して着込んだのだが、こういう環境変化が激しい時ほど、ナノ・パフのありがたみを感じる。

高密度に織られたマイクロファイバーのシェルはきっちりと防風してくれるので、風に叩かれても体温が奪われにくい。最近はナノエアなどのアクティブ・インサレーション(動的保温着)の人気に押され気味だが、こうしてウインドブレーカーの役割をきっちり果たしてくれるのは、スタティック・インサレーション(静的保温着)としての基本設計がきちんとされているからだ。

そのいっぽうでナノエアは軽くて薄いから、ミドルレイヤー(今回はキャプリーン・サーマルを行動着として着ていた)の上に羽織っても動きにくさがなく、また中綿量が少ないので着たまま歩き続けてもオーバーヒートするようなことはない。そのあたりのバランスや味付けが「絶妙」なのだ。

この絶妙なバランス感覚とシンプルなデザインが類い希な汎用性を彼にもたらせている。

「さすがナノ・パフ。あいかわらず頼りになるぜ」
僕は16年来の親友に、そんな風に声をかけた。
「だろ? 任せておけって」

ナノ・パフが笑う。パッと見は地味でどこにでもいる青年だが、ピンチの時はいつもこうして僕を助けてくれる。やっぱりナノ・パフは僕にはなくてはならないバディなのである。

美しいリッジラインを歩きながら僕はそれを再認識したのであった。

ハイロフトが追加されたぞ

この秋冬シーズンに新しくナノ・パフシリーズに加わった新作がある。それが「ハイロフト・ナノ・パフ・フーディ」だ。これはその名が示すとおり中綿量を増大させてハイロフト(高いかさ高)と保温性を備えたモデルである。

内包する中綿は身頃部分が200g/㎡、腕や脇が170g/㎡の「プリマロフト・シルバー・インサレーション・エコ」で、ナノ・パフ・ジャケットとは比べものにならないほどのボリュームがあり(僕の感覚だと3倍ぐらいゴツイ)、圧倒的な保温力がある。カタログには「何ヵ月にもおよぶ冬のロードトリップの酷使にも耐えます」とあるが、まさにそんなキャラクターだ。ダウンジャケットのようにコンパクトにはならないので登山に携行するのは厳しいだろうが、雪中キャンプや厳冬期のビレイパーカにはいいだろう。僕は冬のスキートリップに使ってみようと思っている。

メンズ・ハイロフト・ナノ・パフ・フーディー

価格
46,750円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Clement Blueなど3色
重量
760g

詳細はこちら

ウィメンズ・ハイロフト・ナノ・パフ・フーディー

価格
46,750円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Blackなど2色
重量
697g

詳細はこちら

LINE UP

メンズ・ナノ・パフ・ジャケット

価格
33,550円(税込)
サイズ
XS~XXL
カラー
Old Growth Greenなど5色
重量
369g

ウィメンズ・ナノ・パフ・ジャケット

価格
33,550円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Birch Whiteなど4色
重量
309g

メンズ・ナノ・パフ・フーディ

価格
40,700円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Blackなど3色
重量
400g

ウィメンズ・ナノ・パフ・フーディ

価格
40,700円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Dark Rubyなど3色
重量
349g

メンズ・ナノ・パフ・ベスト

価格
26,400円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Dried Vanillaなど3色
重量
235g

ウィメンズ・ナノ・パフ・ベスト

価格
26,400円(税込)
サイズ
XS~XL
カラー
Brisk Purpleなど3色
重量
207g

問合せ先

  • パタゴニア(Patagonia)
  • https://www.patagonia.jp/
  • 0800-8887-447 *フリーコール・通話料無料
    10:00~16:00(土日祝日・年末年始は休業)