PRODUCT FIELD REPORT
登山用具フィールドレポート

GPSを搭載したウォッチ、SUUNTO「TRAVERSE」。
フィールドでナビゲーション機能を使用してみた。

写真 : 中村英史 文 : 笹倉孝昭 構成 : 池田菜津美

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操作簡単な
ナビゲーションツール

私がスント・アルティマックスを登山用腕時計として選んだのは約15年前のこと。視認性の高さと高機能が気に入って、それ以来ずっとスントの時計を使い続けている。今回は六甲山系、荒地山周辺の変化に富んだ地形で使った感想を踏まえて、スント・トラバースについて紹介しよう。
まずスタート地点の高座の滝で、時計に登録しておいたルートを呼び出し、ナビゲーションを開始する。GPSによる測位や、「ルートの全体図」「高度グラフ」などを簡単なボタン操作で確認し、歩き始める。
登山の準備として、ルートの全体像を把握することは不可欠だ。トラバースは、ムーブスカウントというウェブサービスで事前にルートを作成し、腕時計にインポートできる。それを登山当日にナビとして利用できるのだ。ルート作成は地図上のコースをクリックしてつなげていくだけでよい。この作業は、自分が歩くルートを事前にトレースすることで、自然と当日の行動をイメージすることにつながる。
積雪期やバリエーションルートのように決まった道がない登山では、POI(ポイント・オブ・インタレスト)を登録しておくと安心だ。POIは目的のポイントまでの直線距離と方位を示してくれる機能で、現場で地形を読みながらルートを決めるような山行の際に利用価値が高い。

木が頭上を覆うような登山道でもGPSの測位精度は高かった

これもナビゲーションツール?

メニューの呼び出しなどの操作も簡単。慣れるとほとんど何も考えずにできるほど

使い勝手のよさとシンプルな美しさを兼ね備えたデザイン

PRODUCT INFORMATION
製品説明

SUUNTO
TRAVERSE & TRAVERSE ALPHA
トラバース & トラバース・アルファ

SPECS

スント・トラバース(左)
価格:62,640円
カラー:グラファイト(写真)、アンバー、ブラック、ホワイト
重量:80g

スント・トラバース・アルファ(右)
価格:74,520円
カラー:フォリッジ(写真)、ブラックレッド、ステルス
重量:75g

スント・トラバース(左)は、GPS計測による歩行軌跡の記録のほか、ウェブサービスなどで作成したルートを利用したナビゲーションも可能。ルートを図示したマップオリエンテーションや、現在地の高度をリアルタイムに表わした高度プロファイルビューなど、視認性の高いナビ画面で登山をサポート。目的地までの直線距離や方向を示し、ホワイトアウト時に役立つPOIナビゲーションや、気圧の急激な下降を知らせるストームアラームなど、登山に役立つ機能が満載。スント・トラバース・アルファ(右)は月齢カレンダーや射撃位置記録機能などを追加し、フィッシングやハンティングなどのアクティビティにも対応。

ルートの作成方法はこちらから。

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事前に作成したルートを時計にインポートしておけば、ルートの全体図や高度グラフを表示し、ルートナビゲーションとして利用できる。写真の画面は、累積標高を表示した高度プロファイルビュー。

水深100m(10気圧)の高い防水性で、突然の雨や沢登りなど、どんなシチュエーションでも安心。米国国防総省軍用規格(通称ミルスペック)に沿って製品テストを行ない、耐衝撃性能も高い。

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フラッシュライトモードを搭載。ワンプッシュでバックライトが点灯するので、地図を確認したいときやテント内での探し物などなど、さっと手元を照らしたいときに便利な機能だ。

写真のように、歩行軌跡や行動時間などから山行ルートを3Dマップに落としたムービーを作成できる。歩行軌跡はワイヤレスで時計からスマートフォンへ転送できるので下山後の確認・共有もスムーズ。

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ウェブサービスのムーブスカウントは、ルート作成のほか、下山後に歩行軌跡や高度グラフ、行動時間、温度変化などをデータで保存・管理できる。山行メンバーと共有することも可能。 ※事前にルートをインポートする方法はこちら

子どもの頃、授業をさぼって独りでよく来た六甲山。
町と海を一望できるこの山が好きだ。

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ナビ画面の視認性のよさが
安全性を高める

樹林を歩いていると時計のアラームが鳴った。荒地山の山頂に着いた合図だ。ルートを作成するとき、分岐や山頂など、ルート上でポイントとなる場所を設定しておくと、そこに到着した際にアラームで知らせてくれる。疲れていて分岐を見落とすといったミスを防いでくれるはずだ。
山頂で高度グラフを確認する。累積標高をグラフで表現し、累積上昇高度や残りの累積降下高度も数値で示される。ナビ画面はどれもシンプルなのでひと目で情報を確認できる。このシンプルさは、登山のツールとして高く評価されるべき点だ。登山中は、目線をすばやく動かして、天候や地形、周囲の状況などの情報を瞬時に得て、判断し、行動に反映させる。そのため目で得られる情報は簡素なほうがよい。トラバースの画面デザインは、ナビゲーションに必要な情報を瞬時に確認できるので、登山というアクティビティを深く理解し、作り込まれていると感じる。

また、行動中のパートナーとしてだけでなく、下山後もしっかり活躍してくれる。登山記録をスマートフォンのアプリに保存し、ファイリングすることができるのだ。ルートの軌跡はもちろん、高度グラフや行動時間、温度変化など、詳細な山行記録の蓄積は、次の登山に向けての貴重な資料に、そして、自身の登山レベルの向上に役立つ材料となるだろう。

柔らかく肌になじむバンドは着けていることを忘れる快適さ

画面の標高は「550m」。山頂の標高に腕の位置をプラスした数値が正確に表示されている

1936年、熱心なアウトドア愛好家が
1つのコンパスを作ったことから始まる

1936年、フィンランドで誕生。創業者で、アウトドア愛好家のトーマス・ヴォホロネンが、乾式コンパスの不安定な針の動きや不正確さを解消するため、測定精度の高い溶液充填コンパスを開発したことがはじまり。以来、高精度の計測機能を提供するという信念のもと、アクティビティを楽しみ共有する製品づくりを続ける。

ささくら・たかあき

日本山岳ガイド協会山岳ガイドステージⅡ。1966年神戸市生まれ。国内はもとより、ヨセミテ国立公園でのビッグウォールクライミングなど、幅広く活動する。著書に『高みへ 大人の山岳部』(東京新聞出版部)など