革新的なウェアで、登山はさらに進化する 革新的なウェアで、登山はさらに進化する
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前人未到の岩壁に初めて触れるクライマーや、手つかずのクーロワールを狙うスキーヤーはもちろん、どんな登山者にも、それぞれの挑戦があり、進化がある。そうした登山者の進化を後押しするのが、革新的な新素材「フューチャーライト」だ。
FIRST DESCENT
ヒラリー・ネルソン 新素材ウェアで挑んだ世界初のローツェ滑降 ヒマラヤの高峰への登頂と滑降というスタイルで、革新的な登山を続けるスキー登山家、ヒラリー・ネルソン。新素材のウェアで挑んだ彼女のローツェ滑降とは。
ヒラリー・ネルソン 画像
Hilaree Nelson(ヒラリー・ネルソン)
1975年米国生まれ。ザ・ノース・フェイスのグローバルアスリートチームキャプテン。3歳でスキーを始め、シャモニーで経験を積んだのち、チョ・オユー(2005年)、インド・パプスラ峰初滑降(17年)など、登山とスキーの冒険を続ける。
ヒラリー・ネルソン 写真

 ヒマラヤをはじめとする高峰からのスキー滑降を次々に成功させ、高所登山に革新をもたらしているヒラリー・ネルソン。彼女は2018年9月、世界初となる8516mのローツェ山頂からの滑降に挑戦した。不安定な天候で知られるローツェで着用したのは、ザ・ノース・フェイスが新たに開発した、通気する防水素材「フューチャーライト」。ベースキャンプから山頂までの標高差は約3000m。気象や運動量などで刻々と変化するコンディションをこのアウターウェアで乗り切り、パートナーのジム・モリソンとともに、世界初の滑降に成功した。

 ヒラリーが頂上にダイレクトに突き上げる「ローツェクーロワール」に魅了されたのは、24時間でエベレスト・ローツェ縦走を成功させた12年。それから6年、この「ドリームライン」を滑降する日が来ることを夢見ながら、マカルーの女性初滑降(15年)、デナリのカシンリッジ登攀とメスナークーロワール滑降(17年)など、高難度の課題を成功させてきた。彼女にとって、これまでの登攀と滑降の集大成が、去年のローツェだった。
 ヒラリーは、挑戦の時期を登山のオフシーズンといえるポストモンスーンに設定。滑降ルートが雪に覆われていること、登山者が少ないことがその理由だった。9月30日、標高7200mのC3からクーロワールを抜け、一気にローツェに登頂したヒラリーとジムは、約60度の傾斜から始まるこのラインを滑降。最も恐れていたじょうご状の狭い部分は、幅わずか170㎝。スキーを横にすることすらできない箇所だったが、ここが氷雪に覆われていたことで、無事にクーロワールを滑りきることができ、ローツェフェースを滑走してC3に帰還した。

クーロワールを抜けローツェフェースを滑降する
クーロワールを抜け、
ローツェフェースを滑降する

 「長年の夢を成功させてしまった今は、心にぽっかり穴があいてしまったような感じ」と語ったが、スキー滑降の対象になりうる高峰はまだまだある。「未滑降の高山としては、標高ベスト5のうちカンチェンジュンガとマカルーが残っていますが、現実的にはシシャパンマ、ガッシャブルムⅠ峰とⅡ峰が目標です」と、ヒラリーは次なる頂を見つめている。

クーロワールを抜けローツェフェースを滑降する
クーロワールを抜け、
ローツェフェースを滑降する
ヒラリー・ネルソン 写真
TECHNOLOGY
FUTURE LIGHT
想像を超える通気性と柔らかさ。そのルーツは、大胆で斬新な思いつき
そのウェアは呼吸するように熱や蒸れをリリースする。ハードなプッシュもブレイクタイムも同じように快適に過ごせる魔法のような新素材は、どのように生み出されたのか?

 アプローチから稜線、ピークまで、ウェアを脱ぎ着することなく歩き続けることができたら……。気温や行動量の変化に左右されず、つねにグッドコンディションでいられる。そんな夢のようなアウターシェルがこの秋、ザ・ノース・フェイスからリリースされる。

 快適性の核となるのが、独自に開発した新素材「FUTURELIGHT(フューチャーライト)」。最大の特徴は、防水性、透湿性に加え、優れた通気性を獲得したこと。呼吸するようにウェア内の蒸れや熱を追い出してくれるので、体温の上昇や発汗が落ち着き、パフォーマンスをキープ。汗冷えのリスクも大幅に低減できる。雨、雪のなかでアウターシェルを羽織るとき「あぁ、暑くなるのがイヤだな」と思う必要はもうない。

 レイヤリングの常識を覆すイノベーションは、防水透湿素材に使用されるメンブレンの製法をゼロから考え直すことから始まった。そして、幾多のトライ&エラーの末に編み出されたのが「ナノスピニング製法」。ナノレベルのポリウレタン繊維を吹き出し、蜘蛛の巣を重ねるように層にしていくという、まったく新しい手法だ。微細な隙間をもつメンブレンは、防水性と通気性を高水準で両立させた。

 フューチャーライトの登場で、自然のなか、とりわけ厳しい状況でのストレスが解消され、よりセーフティに山を楽しめるようになる。10月1日から発売を開始している。

これがフューチャーライト!

フューチャーライトは1本のポリウレタン繊維から始まる。それは10億分の1mというナノレベルの細さ。スルスルと吹き出された繊維は蜘蛛が巣を張るように広がり、重なっていく。そして、ウェアに内蔵するメンブレンに形作られたとき、繊維の間にある隙間は無数の微細な通気孔となって、フューチャーライトの快適性を支えるのだ。通気孔は水分を通さないサイズに調整され、防水性は従来の素材と同じように機能する。
ナノスピニング製法で吹き出されるポリウレタン繊維
ナノスピニング製法で吹き出されるポリウレタン繊維 →動画でチェック
通気を確保できる密度でメンブレンを形成
通気を確保できる密度でメンブレンを形成
表生地、裏生地をラミネートし、完成した素材を通り抜ける空気(水中で撮影)
表生地、裏生地をラミネートし、完成した素材を通り抜ける空気(水中で撮影)→動画でチェック
厳しいテストと環境への配慮

厳しいテストと環境への配慮

過去2年間にわたり、ザ・ノース・フェイスのグローバルアスリートが世界各地でサンプルをテスト。防水性においては第三者機関UL(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)で、一般的なアウトドアウェアより厳しい基準のもと安全性認証テストを受けている。さらに、表生地、裏生地にはリサイクルポリエステルのみを使用。製造過程でも環境負荷の少ない方法が選ばれている。

どこへ行く? なにをする?用途に合わせて機能を自在にチューニング

アクティビティや着用する環境によって、アウターシェルに求められる機能はさまざま。フューチャーライトはメンブレンを構成する繊維の密度を自在にコントロールできるため、個々のアクティビティに最適な通気性を作り出せる。さらに行動形態に即した表生地、裏生地をセレクトし、機能的なデザインを施すことでウェアとしての完成度を高めていく。

シビアな環境での
アクティビティ

冬季の本格的な登山、アルパインクライミング向けのモデルでは、通気性と防護性のバランスをとる。快適な体温をキープしながら、厳しい天候から身を守り、岩や氷、アイスツールとの干渉も考慮されている。
FL L5ジャケット
77,000円(税別)

運動量が多い
アクティビティ

ときには限界まで心拍数を上げて走り続けるトレイルランニングのために最大限の通気性を確保。高地や夜間のレースで気温が下がっても汗冷えしにくい仕様に。軽く、腕を振りやすいカッティングになっている。
FL フライトトレイルジャケット
35,000円(税別)

フューチャーライトを最大限に活かす、通気性を意識したレイヤリング

フューチャーライトの卓越した通気性。その恩恵にあずかり、最大限に活かすために、レイヤリングするウェアにも気を配りたい。汗を素早く吸い上げて拡散するベースレイヤー、保温性と通気性を併せもつミッドレイヤーはマスト。さらに、気温に応じてダウンパーカをプラス。フューチャーライト+ダウンの組み合わせで、濡れの心配も無用だ。
フューチャーライトを最大限に活かす、通気性を意識したレイヤリングアイテム例
FL L6ダウンビレイパーカ
FL L6ダウンビレイパーカ
66,000円(税別)
フューチャーライトレイヤリング例
1FL L5 LTジャケット
54,000円(税別)
2ベントリックスジャケット
27,000円(税別)
3バーサグリッド
エクスペディションフーディ
16,000円(税別)
FL L6ダウンビレイパーカ
66,000円(税別)
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FL L5 LTジャケット
54,000円(税別)
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ベントリックスジャケット
27,000円(税別)
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バーサグリッド
エクスペディションフーディ
16,000円(税別)
詳しくチェック
ATHLETES × PRODUCTS
求められる通気性とデザインをアクティビティごとに最適化
登山とトレイルランニング、厳冬期と無雪期。山という舞台は同じでも、求められる通気性はさまざま。アスリートの声を聞き、究極の快適性が導き出された。
登山、アルパインクライミング
シビアな環境で限界と向き合う、先鋭的なクライマーのために

FL L5 LTジャケット

高い通気性と軽量性を備えた、アルパインモデル。しなやかさとストレッチ性を備え、核心のムーブも思いのまま。ベンチレーターを設けず、着心地と収納性を向上させている。
54,000円(税別) カラー:メルトグレイ、ファイアリーレッド 計2色
サイズ:XS~L(USサイズ)

FL L5 LTパンツ

高いストレッチ性を誇り、人間工学に基づいた3Dパターンを施すことで、ストレスフリーの着心地に。軽さもあいまってスピーディに行動できる。ケブラーのエッジガードつき。
48,000円(税別) カラー:ブラック 計1色 サイズ:XS~L(USサイズ)
激しく動き続けても蒸れがない。
その違いは、歴然でした。
フューチャーライトを受け取って、終日雨のなかを富士山に登りました。五合目でL5 LTジャケットとパンツを身に着けたときは「レインウェアを着ると暑そうだなぁ」と思ったのですが、意外な結果に。不快な蒸れを感じず、ほぼ同じウェアリングのまま山頂に着いたのです。既存のウェアとは明らかに違う汗抜けのよさを感じました。シェルを着たまま、これだけの標高差を歩き通せるのは、脱ぎ着の手間も省けて非常に便利です。また、とてもしなやかで、激しい動きへの追従性も高い。登攀とビレイで動静を繰り返し、大胆な動きを伴うアルパインクライミングでも、フューチャーライトの通気性と動きやすさはアドバンテージになってくれると思います。
佐藤裕介(さとう・ゆうすけ)
佐藤裕介(さとう・ゆうすけ)
佐藤裕介(さとう・ゆうすけ)
1979年、山梨県甲府市生まれ。高校山岳部 で登山を始め、アルパインクライミングを中心に、フリー、アイス、沢登りなど、幅広く活動。2008年のカランカ北壁ダイレクト初登でピオレドール受賞。日本山岳ガイド協会認定山岳ガイドステージII。
バックカントリー
至福の滑りを支える、最上級の快適性と機能性

ピュリストジャケット

テクニカルなハイク&ライドを高度な通気性と運動性でサポート。ビブにアクセスするファスナー、機能的なポケットなど、プロライダーとの共同開発で行動中の利便性を追求している。
72,000円(税別) カラー:ブルーウィングティール×ウェザードブラック、クロロフィルグリーン×ウェザードブラック 計2色 サイズ:XS~XL(USサイズ)

ピュリストビブ

強度としなやかさ、ストレッチ性を持ち合わせたビブパンツ。優れた通気性とベンチレーションで、寒冷下の激しい行動時も汗冷えを軽減。丈を調節するドローコード、ビーコン用ギアループなども装備している。
60,000円(税別) カラー:ブリティッシュカーキ、ブルーウィングティール 計2色 サイズ:XS~L(USサイズ)
汗だくのハイクアップも難なくクリア。
きれいなシルエットも気に入っています。
昨シーズンの12〜3月、谷川岳に登って雪に埋もれた避難小屋を掘り起こして泊まり、朝日の時間を狙ってマチガ沢を滑るということを繰り返しました。僕は尋常でないほどの汗かきなのですが、フューチャーライトのおかげでシェルを着て登るときの暑さと汗冷えから解放されました。中間着を、濡れると機能が落ちるダウンから、通気性と疎水性をもつ化繊中綿のベントリックスに替えたことで、総合的な通気性も大幅にアップ。吹雪、強風、雨といった悪天候のなかで快適に行動できることは、いちばんの強みだと思います。もうひとつ、不要なダブつきがなく、体のラインや滑りが美しく見えることも、すごく気に入っています。
佐々木 明(ささき・あきら)
佐々木 明(ささき・あきら)
北海道北斗市出身。FISワールドカップ男子回転で3度表彰台に立ったアルペンスキーヤー。現在は大自然に滑りの場を移し、そのすばらしさを広く伝える活動も。パーソナルストレッチルーム「NEUTRALWORKS」で経験に基づいた監修も手がける。

ピュリストジャケット

テクニカルなハイク&ライドを高度な通気性と運動性でサポート。ビブにアクセスするファスナー、機能的なポケットなど、プロライダーとの共同開発で行動中の利便性を追求している。
72,000円(税別) カラー:ブルーウィングティール×ウェザードブラック、クロロフィルグリーン×ウェザードブラック 計2色 サイズ:XS~XL(USサイズ)

ピュリストビブ

強度としなやかさ、ストレッチ性を持ち合わせたビブパンツ。優れた通気性とベンチレーションで、寒冷下の激しい行動時も汗冷えを軽減。丈を調節するドローコード、ビーコン用ギアループなども装備している。
60,000円(税別) カラー:ブリティッシュカーキ、ブルーウィングティール 計2色 サイズ:XS~L(USサイズ)
トレイルランニング
走り続ける人のために、究極の通気性と運動性を

FL フライトトレイルジャケット

長時間のランニングを想定し、通気性を高めたモデル。腰のポケットはパックに干渉しない絶妙な位置。さらにポケッタブル収納でコンパクトに携行可。ボディの縫い目に沿ってリフレクターを配している。
35,000円(税別) カラー:ブラック、クロロフィルグリーン 計2色 サイズ:XS~L(USサイズ)

フライト
エクスプローラー タイツ

フロントに防風、耐水素材を用い、前方からの冷たい風、小雨をブロック。ぴったりしすぎないスタイリッシュなシルエットで、ウエストまわりに配したポケットも機能的。(フューチャーライト非採用)
18,000円(税別) カラー:ブラック 計1色 サイズ:S~XL(日本サイズ)
ヨーロッパアルプスで雨のトレイルラン。
一日中、汗冷えせずに走り通せました。
標高2500mレベルのヨーロッパアルプスでのトレーニング。雨のトレイルランニングで寒さを心配していましたが、フューチャーライトの汗抜けのよさで体が冷えることもなく、ダウンを使用しないまま終えることができました。従来のシェルと比較して透湿性が高く、汗冷えのリスクが大幅に低減していることを実感。発汗量の多いトレイルランにはもってこいで、湿度の高い日本の山にもうれしい製品ですね。軽く、しなやかなので、小さなトレイルランニング用のパックでもラクに収納できることもポイント。世界各国で行なわれるレースにお守り代わりに携行でき、とりわけ荒天時には大いに威力を発揮してくれると思います。
鏑木 毅(かぶらき・つよし)
鏑木 毅(かぶらき・つよし)
1968年、群馬県桐生市生まれ。日本のトレイルランニング黎明期からトップランナーとしてシーンを牽引。2009年に世界最高峰のレース、ウルトラトレイル・デュ・モンブランで第3位。多くのレースをプロデュースしながら、現役ランナーとして活動を続けている。