ワンダーフォーゲル12月号
P80~81 「雪山の歩き方Q&A」より

雪山の歩き方Q&A雪山登山のプランニングについてのポイントを山のプロにうかがいました!

構成・文/大関直樹 イラスト/上坂元 均
山岳ガイド 佐藤勇介
監修
山岳ガイド 佐藤勇介さん
さとう・ゆうすけ
1979年、山形生まれ。日本山岳ガイド協会認定山岳ガイドステージⅡ。トレッキング、沢登り、雪山登山、バリエーションなどのガイドを行なうかたわら、東京・昭島市にクライミングジム「カメロパルダリス」を開業。国立登山研究所の講師も務める。
Q
雪山登山は、何に気をつけて計画するといいの?
A
夏山とは大きく違うことを頭に入れておきましょう

プランニングの考え方のベースは夏山登山と同じです。しかし、アクセスや山小屋の営業期間、ルートやコースタイムなどが、夏と冬では変わってきます。積雪量や風の強さ、トレースの有無などで難易度が変わるのも特徴で、雪山特有のリスクもあります。「悪天候時はここから先には行かない」「12時までにたどり着けなかったら引き返す」など、さまざまな状況を想定した具体的な計画を立てましょう。必ず登山計画書を作成して、地元の警察署などに提出しましょう。

山選び初心者は、雪山に慣れることから始めましょう

ビギナーは、森林限界以下(標高約2000m以下)で樹林帯に守られたやさしいコースから選ぶといいでしょう。まずは、アイゼンやピッケルなど雪山特有の道具を使いこなす、ウェアリングのコツを覚えるなど、雪山に慣れることが必要です。残雪期の春山は、登山道と雪道が交互に現われ、かえってルートがわかりにくくなるので、初冬や晩冬がおすすめです。

同行者経験豊富なリーダーと行くのが理想的

雪山の経験があるリーダーが同行すると、アドバイスをもらいながら雪山に慣れることができます。経験のあるリーダーがいない場合は、技術や体力がいちばん低いメンバーが、無理をせずに歩けるようなレベルの山を選びましょう。本格的に雪山技術を身につけたいなら、山岳ガイドの雪山講習会に参加してみるのもいいと思います。

アクセス交通機関の運休や道路状況を調べましょう

バスなどの公共交通機関は、夏に比べて運行本数が減っていたり、運行していないこともあるので、事前に調べておきましょう。マイカーで行く場合は、アプローチで使う林道が冬期通行止めになっていて、林道を歩くケースもあるので要チェックです。山行直前に大雪が降ったときは、林道の除雪状況を地元の自治体や山小屋に聞いてみるとよいでしょう。

ルート設定確実に道の状況がわかる往復登山がおすすめです

ルート設定には縦走や周回登山もありますが、雪山に不慣れな場合やワンランク上の山に挑む場合は、往復登山にしましょう。自分のトレースがありますし、地形も把握しているので安心です。エスケープルートも来た道を戻るのがベターです。同じ山でも、東斜面と西斜面では季節風や日照時間の影響で雪質が変わることが多く、縦走などは難易度が上がります。

コースタイム状況により夏山より2~3倍の時間がかかることもあります

場所によっては夏山よりもスムーズに歩けることもありますが、まれなケースです。雪が深くてラッセルを強いられるときや、吹雪など悪天候のときは、コースタイムが夏山の2~3倍もかかることもあります。トレースが期待できる人気ルートでも、1.5倍はかかると考えましょう。ルート上のどこを何時までに通過すべきか、具体的に決めておくことも大事です。

宿泊設備営業期間などが、夏とは違うので要確認です

冬期は営業していない小屋のほうが多く、年末年始や週末、予約が入ったときだけといったイレギュラーの営業形態の小屋もあるので、ネットや電話で事前に確認しましょう。冬期営業している主な山小屋情報はP128でも紹介しています。積雪の状況によっては、営業しているはずの小屋が閉まっているケースもあるので、直前に確認するのがおすすめです。