カシオから新発売 プロトレックブランドを冠したタフモデル 「WSD-F20」

 ここ数年でGPS機能を搭載したアウトドアウォッチがぐっと増え、ギア好きの登山者のあいだではGPSを活用した山登りの楽しみ方が広がっている。さらにはスマートフォンが普及したため、高度、気圧だけでなく、GPSでの現在地情報などの情報を入手し、確認しながら山に登ることもそう珍しくはなくなってきた。

 今回チェックしたカシオの「スマートアウトドアウォッチ」は、そのジャンルの最新アイテム。スマートフォンで行えるさまざまな機能や表示を“手元”でかなえてくれる便利なギアだ。すべてを使いこすまでに少々コツが必要だが、先代WSD-F10譲りの「機能性」「耐候性」はそのまま、機能と使い勝手がブラッシュアップされ、プロトレックブランドの仲間入りを果たした。

 では、実際のところはどうなのか? スマートウォッチやGPS対応デバイスを普段からよく使うというギア好きライターが1日テストを敢行した。

1979年生まれ。男性向けモノ情報誌の編集者を経て、フリーランスのライターに。国内外の100マイル(160km)レースで入賞するトレイルランナーとしての経験を持ちながら、地元のトレイル整備に参加するほか、一般的な登山や、いわゆるスピードハイクなども楽しむ。それだけに標高差や移動距離には敏感で、普段からGPS機能つきのスマートウォッチや、スマートフォンでのGPSナビゲーションはフル活用している。カシオのスマートアウトドアウォッチを使うのは今回が初。

 本題に入る前にひとこと。今回の日帰りテスト山行では、ついぞ最後まで時計の説明書を読むことはなかった。同行した編集者から簡単なレクチャーは受けたものの、画面の日本語表示をたどるだけで、さまざまな機能がそれなりに使いこなせたのだ。日本の開発チームによる、日本製の、日本語ベースで作られたジャパンプロダクトだからだろう。

 加えて、フルカラー液晶の画面表示が見やすくて使いやすい。地図の描画力はスマートフォンなみ。今までは同系統のウォッチを使っていても、現在地の確認には紙の地図、あるいはザックのポケットからいちいちスマートフォンを取り出していたのだが、これなら手元の時計画面でストレスなく地図が読める。

 またインターネットからのオフライン状態であっても、GPSは生きているため、例えば、連携アプリ「YAMAP」を使って、あらかじめ地図データを時計に移しておけば、GPSと連動して、地図画面上で現在地を正確にチェックできる。

 つけ加えるなら、タッチパネルの反応もじつにクイックでサクサク使えた。今までの他のスマートウォッチでは、反応が鈍くてときにストレスを感じることもあったのだ。

1) 初めての山域でも「この道で間違いない」という安心感。正確な現在地と標高がわかり、「ピークまで何メートル→あと何分くらいかかりそうか」がわかる安全性。山のギアは、使い手となる登山者の山行を「より楽しく、快適かつ安全に」するためのもの。そう考えると、これはまさにお手本のような山道具だ。

2) 「アクティビティ」アプリにおける「トレッキング」モードの画面表示がとくに気に入った。現在の標高に加え、個人的にもっとも重要視している“垂直移動スピード”が一目でわかるのだ(画面左上の351m/hの部分。1時間あたり351m登るペースで進んでいる、という意味)。目的地となるピークを事前登録しておけば、山頂まで残り何mかも表示される。だからあと何分でたどり着けるかがわかる。

 「YAMAP」などのスマートフォンアプリから事前にGPSデータを取得しておけば、実際に山に入ったときにキメ細やかなナビゲーションが受けられる。ただ、そこまで準備しなくても「ロケーションメモリー」アプリを表示させれば、現在地とそれまで辿った軌跡をマップ上に表示できる。繰り返しになるが、このマップがフルカラーで見やすいため、道迷いするというリスクはもうほとんどゼロになるのでは?

1) 本機は音声での操作ができ、これが意外に使いやすかった。「ロケーションメモリー」のボイスメモ機能では、ハイク中に目印となったポイントを音声でメモできる。万が一道迷いしても、軌跡をたどってそのポイントまで戻れるし、下山後、パソコンやスマートフォンの画面で山行を振り返りながら二度楽しめる。

2) スマートフォンのように、さまざまなアプリをダウンロードして使える。興味深かったのが「Go雨!探知機」。この季節、天気の急変には注意しなければならないが、周囲の雨量情報を高精度・リアルタイムで表示してくれる。探知画面もスタイリッシュ。

 スマートフォンのようにといえば、そもそもが時計型デバイス向けのOSであるAndroid Wear™2.0を搭載するため、Androidスマートフォンと同じで多くの便利な機能が使える。メール受信やLINEの通知を表示するほか、腕時計上で簡単な返信も可。Googleのアプリによる音楽プレイヤーや、Googleマップも使える。山だけでなく、街での移動時にも便利だろう。

1) 山にいるときに限って不思議と着信のあるメール。いちいちスマートフォンを取り出さずとも、手元の表示だけで誰から、どんな件名のメールが届いたかが分かるので、急ぎの対応をすべきかどうか判断できる。

2) 「モーメントセッター」アプリは、「高度が100m上がるごと」「消費カロリーが200kcalごと」など、設定した条件になったときにお知らせしてくれる。前モデルではスマートフォンで設定したのに対し、時計本体で設定できるようバージョンアップ。 補給や休憩タイミングの参考になるし、山行中のモチベーションにもなりそうだ。

3) CMでおなじみの音声検索「OK Google」にも対応。今回は下山時の日帰り入浴を調べるために使った。時計に向かって喋りかけるのは、最初は戸惑ったけれど、慣れてしまえばボタン&タッチの操作よりはるかに簡単。ただし、オンライン状態のスマートフォンと接続しておく必要がある。

 今回のワンデイ・インプレッションで感じた「プロトレック スマート WSD-F20」の使用感を○と△でまとめると、こんな感じ。

  ここが○
  • フルカラー画面の見やすさ、地図の描画力がスマホ並み
  • タッチパネルの反応がクイック
  • 登りのスピード&山頂までの残り時間を概算してくれる
  • プロトレック譲りのタフボディ。安心だし、見て、触ってカッコいい
  • この機能で約5万円。「少し頑張って手に入れてみよう」と思える
  ここが△
  • バッテリー。フルに機能を使うと6~8時間なので、念のためモバイルバッテリーが必要
  • 慣れるまでの操作性。とはいえ、音声操作は使ってみれば実に便利

 振り返ってみると、プロトレックが長年培ってきたユーザーインターフェースに感心させられた。この手のギアとしてはずいぶん操作しやすかった。ガジェット的に好奇心そそられるし、プロダクトとしての魅力がある。男心に「この道具を使いたいから、新しい山に行きたい」と思わせてくれる何かがある。このプライスレスなワクワク感、山のギアが好きな人なら頷けるところがあるのでは?

WSD-F20-RG
価格=¥51,000+税
サイズ=H61.7×W57.7×D15.3mm
重量=92g
付属品:ACアダプター、専用充電ケーブル
WSD-F20-BK
価格=¥51,000+税
サイズ=H61.7×W57.7×D15.3mm
重量=92g
付属品:ACアダプター、専用充電ケーブル
WSD-F20S-BK
価格=¥80,000+税
サイズ=H61.7×W57.7×D15.1mm
重量=105g
付属品:ACアダプター、専用充電ケーブル
 
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