三浦豪太さんが伝授-山でバテない秘訣はコレ!

 父・三浦雄一郎のエベレスト登頂チャレンジの経験を通じて、登山に必要なトレーニングについて考えてきました。今回の講演では、それらの経験を踏まえた、登山でバテないためのトレーニング法を話したいと思います。

 2013年80歳でのエベレスト挑戦を前に父の体を調べてみると、筋力や体力レベルは壮年世代と同じだが、不整脈の影響で心肺能力は低く、トレーニングをしてもなかなか改善しませんでした。様々な戦略を検討した結果、半分の持久力しかないのなら、半分のスピードで進めばよい、と結論に達しました。

 80歳での登頂成功は、この作戦が背景にあります。山登りに必要なのは心肺能力ではなく、長時間の登り・下りに耐えられる筋力なのです。

 登山は誰でも楽しめる気軽なレジャーだという印象を持たれています。しかし、垂直方向に体重を移動させる登山の登りは、水平移動に比べて30倍のエネルギーが必要です。標高差500mと聞くとたいしたことないと思うかもしれませんが、実は15㎞歩いたのと同じエネルギーを消費します。登りだけでなく、下りもまた平地を歩くのに比べ数倍のエネルギーを消費するので、実は登山は非常にキツいスポーツなのです。

 そして、登山でのエネルギー消費にいちばん影響しているのは水平距離ではなく標高差、つまり上下の移動。山の難易度を判断するときは、どのくらいアップダウンするルートかを見るようにしましょう。

 登山のトレーニングにおすすめなのが、階段登り下り。ランニング、自転車、水泳など日常的にできるトレーニングはいくつかあるが、山登りにもっとも効果があるのは階段登り下りでした。階段がない場合はスクワットがいいです。ゆっくり膝を曲げることで、登山道での下りを再現できます。スクワットは、続けていると慣れてくるので、その場合は片足スクワットに挑戦してほしい。登山の下り時は片足で体重を支えている場面が多いので、片足スクワットは非常におすすめです。

 登山は、他のスポーツに比べて、長時間行なえて、体への負担が小さいのが特徴です。調査によると、ジョギングの着地は体重の2.5倍の衝撃がかかるが、階段の登りは1倍程度でした。登山の登りも同じように関節への負担が小さい。しかも有酸素運動で、心肺機能や血管の健康状態の改善、基礎代謝の向上、コレステロール値の改善などよいことづくめ。適切なペースさえしっかり守れば、登山ほど体にいい運動はありません。そう、つまり適正なペースを守ることが、バテずに歩くために最も重要なことなのです。

 1時間で標高差300mを登るのが標準的なペースだといわれています。登山地図のコースタイムもだいたいそういう設定になっています。しかし登山地図と高度計だけでこのペースを維持し続けるのは難しい。でも、登山用ソーラーウオッチ「セイコー プロスペックス アルピニスト」を使うと、ペース管理がとても楽になります。アルピニスト独自の「登高スピード」表示機能は、このペースで1時間歩くと標高差でどのくらい登れるかをリアルタイムで表示してくれるから、登山中のペース管理に非常に役立ちます。安全登山を実現させるためにも、ぜひ活用してほしいですね。

(2016年8月11日 TAKAO599ミュージアムにて)

三浦豪太(みうら・ごうた)

プロスキーヤー、博士(医学)/PhD.
1969年、神奈川県生まれ。三浦ファミリーとしてアフリカ、キリマンジャロを最年少(11歳)登頂など、さまざまな海外遠征に同行する。また、スキーのフリースタイル、モーグル競技で活躍し、長野オリンピック13位、ワールドカップ5位入賞などの成績を残した。
2003年、2013年に父・三浦雄一郎とともにエベレストに登頂した。現在、ミウラ・ドルフィンズ低酸素・高酸素室のトレーニングシステム開発研究所長として低酸素下における遺伝子発現・抑制の研究を行う。また、子どもから高齢者までの幅広い年齢層やアスリート向けのトレーニング及びアウトドアプログラムを国内外で数多く手がけている。(社)アンチエイジングリーダー養成機構・専務理事、NPO法人ナスターレース協会・理事長、国連WFP協会・顧問

 

 高度、気圧、方位などの計測など、登山用腕時計に求められる機能はもちろんのこと、1時間当たりに登れる標高差を示す「登高スピード」計測や、スマートフォンとの連動による登山コースの登録、登山記録の管理などお役立ち機能が満載。

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