独立峰である燧ヶ岳の姿は、尾瀬のどこから見ても力強く美しい。4つある登山道のなかでも最も難ルートとされるナデッ窪から山頂をめざそう。
沼山峠から尾瀬沼東岸地区の山小屋をめざす。大江湿原には、燧ヶ岳を一望できるビューポイントもある。翌日は尾瀬沼北岸からナデッ窪登山道へ。御池岳まで急登の岩場が続く。登りは大変だが、そんななかでもぜひ注目してほしいのが、ヒカリゴケだ。大きな岩の隙間にぼんやりと光り輝く姿が美しい。
このコースは眺望もすばらしく、背後に尾瀬沼が広がる高度感がたまらない。御池岳で長英新道と合流し俎嵓に到着する。三角点がある俎嵓からは富士山が見えることも。俎嵓からもうひと踏ん張りで柴安嵓。柴安嵓からは尾瀬ヶ原を一望でき、その広さを実感できる。下山は俎嵓を経由し尾瀬御池へ向かう。熊沢田代まで下りると開放的な湿原が広がる。夏にはキンコウカが美しい天上の楽園だ。池塘に挟まれたベンチで一服してから下山しよう。
稜線を歩いていると、ハイマツの松ぼっくりが散らばっているのを見かけることがある。これは、ホシガラスがハイマツの球果を器用にバラして、中の種子を抜いた跡。ホシガラスは種子をすぐには食べず、隠しためて、冬の餌とすることもある。餌の少ない冬にしっかりと備えているのだ。時間に余裕があるときにハイマツ帯をじっと観察すれば、星模様の美しいホシガラスを見つけることもできるだろう。
写真・文=浅井理人