安曇野ひがし山ってどんなところ?
光城山や長峰山から絶景の北アルプスを撮影する
フォトトレッキング イベントレポート


2023年11月3日(金)、4日(土)、長野県安曇野市にて、「安曇野ひがし山フォトトレッキング」が開催されました。安曇野の里山から北アルプスを一望し、山麓の文化や食も楽しむ贅沢な2日間。イベントの様子をレポートします。

文=山と溪谷オンライン 写真=佐藤大史・イベント参加者・山と溪谷オンライン

ひがし山の長峰山からは北アルプスと安曇野市街を一望できる

ひがし山の長峰山からは北アルプスと安曇野市街を一望できる(撮影=山と溪谷オンライン)

長野県安曇野市は、市街地や田園などの平野部を挟むように、東西にそれぞれ山が連なっています。西を仰げば、常念岳を筆頭に標高3000m近い北アルプスの峰々。その反対側の東に目を向けると、標高900m前後の「ひがし山」と呼ばれる山が広がります。ひがし山は、山中の豊かな自然や北アルプス方面の優れた眺望が特長で、地元の人々に親しまれている里山です。

11月3日(金)~4日(土)、ひがし山の光城山(912m)と長峰山(933m)を舞台に、ネイチャーフォトグラファーの佐藤大史さんによる写真教室が1泊2日で行なわれました。

写真教室は安曇野市役所の
眺望デッキからスタート

安曇野市役所の眺望デッキ(撮影=山と溪谷オンライン)

アラスカの大自然をメインに撮影するネイチャーフォトグラファーの佐藤大史さん。安曇野在住でひがし山の撮影もライフワークの一つ(撮影=山と溪谷オンライン)

 

集まった参加者は、まず安曇野市役所の4階にある眺望デッキへ。デッキからは安曇野市街と北アルプスやひがし山を一望でき、山座同定を楽しみながら地形的な特長や位置関係を学びます。その後、室内に移動し、佐藤さんによる机上講習会が始まりました。

今回のフォトトレッキングでは、一眼レフカメラやミラーレスカメラだけでなく、スマートフォンでの撮影も講習内容のひとつ。スマートフォンでもワンランク上の写真を撮るためにどうすればよいか、佐藤さんの話を聞く参加者たちの表情は真剣でした。

いよいよ、光城山と長峰山へ

11月上旬は、光城山と長峰山の紅葉が見頃を迎える時期。当日は天気に恵まれ、青空の下、真っ赤なカエデ類やケヤキの紅葉黄葉が登山道のあちらこちらで出迎えてくれました。今回は光城山のさくらコースを登り、山中の「天平の森」に一泊、翌朝に長峰山を長峰荘コースで下山し、撮影のフィールドを山麓に変えて観光と写真教室を行なうプランです。

光城山も長峰山も、一般的なコースタイムで登り約2時間程度の手軽な日帰りハイキングコースですが、山中に宿泊することで北アルプスに沈む夕日や満点の星、日の出や、季節によっては雲海などを撮影できます。佐藤さんの指導を受けながら、参加者たちはそれぞれ、カメラやスマートフォンをかまえ、少し進んでは撮影、また少し進んでは撮影を繰り返します。光城山を越え、途中で沈む夕日も撮影し、真っ暗になる前に「天平の森」に到着。行程に余裕のある里山だからこそ、撮影山行をのんびり楽しむことができました。

カメラやスマートフォンを駆使して、教わったテクニックを実践する参加者(撮影=山と溪谷オンライン)


ちょうど見頃を迎えていた光城山の紅葉(撮影=横矢志保さん)

光城山山頂付近から紅葉した木々越しに望む北アルプス(撮影=ななベルさん)

日帰りではなかなか撮れない、光城山から眺める北アルプスに沈む夕日(撮影=白石智恵子さん)

長峰山で星空と日の出を撮影

夕食を終え、21時すぎ、星空と夜景の撮影のため長峰山に移動します。天平の森から長峰山山頂までは徒歩15分ほど。大パノラマの広がる山頂から西側の安曇野市街の夜景や、北アルプスの上にきらめく星、東に登ってきた月などを撮影。しかしながら夜の撮影はやはり難しいもの。三脚をセットし本格的に撮影に取り組む人もいれば、長峰山山頂の草むらに寝転がり夜景や星空の鑑賞に専念する人など、楽しみ方は人それぞれ。夜の風景を満喫したら、翌日に備え、宿に戻りました。

長峰山にて安曇野の夜景を撮影したり、星空を眺めたり(撮影=島 暢さん)

22時ごろ、真っ赤な下弦の月が上がってきた(撮影=島 暢さん)

翌朝5時45分、日の出前に再び長峰山へ。6時10分ごろの日の出を長峰山山頂の展望台でカメラを持って待ちます。しかしながら、何をテーマにするか、写真の撮り方や楽しみ方は昨晩の夜景撮影のように人それぞれ。日の出の直前の雰囲気を被写体にする人、フィルター機能を活用する人、赤く焼けた雲を被写体にする人、日の出を撮影する参加者を被写体にする人など、個性あふれる写真がそろいました。

撮影=Endo Yoichiroさん

撮影=めなりかさん

 

撮影=長谷川恭子さん

撮影=白石智恵子さん

 

廃線敷や大王わさび農場など山麓の撮影へ

長峰山での撮影の後は、「天平の森」に戻って荷物をまとめたら長峰荘コースで山麓に下ります。一般的なコースタイムでわずか1時間ほど。里山ゆえに下山後も時間がたくさんあるので、登山と一緒に山麓散策も同時に楽しめるのがひがし山の特長です。

まず訪れたのは、長峰山の近くにあり、1988(昭和63)年に役目を終え、現在は「旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道」として人気を集める漆久保トンネル。明暗がはっきりと出るノスタルジックなトンネルをどのように撮影するか、光の取り入れ方を工夫し、さまざまな撮影を行ないました。

トンネルの中を写すか、トンネルの先を写すか、トンネルの手前を写すか、目的によってテクニックが変わります(撮影=佐藤大史さん)

撮影=Endo Yoichiroさん

撮影=島 暢さん

 

その後も山麓散策は続きます。昼食には安曇野で採れた新鮮野菜を使ったフランス料理と地ビールの「穂高ビール」が味わえるラトリエ・デ・サンスを訪れ、大王わさび農場では「水の流れ」をテーマに撮影、最後は山岳写真のパイオニアである「田淵行男記念館」を見学しました。下山後の楽しみ方もさまざまですが、今回は自然・食・歴史・文化など、多くの方が観光で重視する要素を一例として取り入れ、それでも1泊2日に収まりました。

ひがし山を下りた後も、短時間でいろいろなスポットを巡れる安曇野市(撮影=長谷川恭子さん)

大王わさび農場で水の流れを撮影(撮影=山と溪谷オンライン)

 

ツアーの最後は田淵行男記念館へ(撮影=横矢志保さん)

山岳写真のパイオニアとしても知られる田淵行男の作品を見学(撮影=山と溪谷オンライン)

ツアーを終えた参加者に感想を聞くと「ただ山に登るだけでなく、安曇野の魅力を堪能できるプランで、いろいろなことを楽しみながら山と触れあうことができ、とても充実した2日間でした」「ひがし山から見た安曇野の平野と北アルプスの美しい景色によって、北アルプスに対する憧憬がより深まりました」など、登山プラスアルファで安曇野の魅力探訪ができる光城山と長峰山をしっかり楽しんだ様子でした。

北アルプスは冬から春にかけて雪に覆われますが、里山であるひがし山はどの季節でも手軽に楽しめます。季節を変えて、何度も訪れたいエリアです。

安曇野フォトトレッキングの参加者(撮影=佐藤大史)