「ふくしま尾瀬3Weeks 2021 Autumn」イベントレポート

本イベントで行なわれた自然体験ツアー、アウトドア体験プログラム、シンポジウムの模様をそれぞれ動画で紹介します。

萩原編集⻑と行く燧ヶ岳登頂と燧裏林道周遊3日間

東北最高峰の燧ヶ岳に登頂し、紅葉を迎える静寂の燧裏林道を歩く

黄金色に輝く湿原と、ナナカマドの赤に彩られる燧ヶ岳の山肌。秋の尾瀬は朝晩きりりと冷気で引き締められ、山全体が鮮やかに染まっていきます。

そうしたなか、萩原編集長が案内するのは尾瀬沼の隣にそびえ立つ燧ヶ岳。長英新道を徐々に高度を上げていった先には尾瀬沼を一望に見下ろす絶景が広がります。さらに岩場を越えて双耳峰のひとつ俎嵓(まないたぐら)へ。ここからは日光連山、となりの最高峰・柴安嵓(しばやすぐら)からは尾瀬ヶ原と至仏山など、眼前に広がるダイナミックな風景をたっぷりと堪能。

打って変わって燧裏林道は静かな森の道。生物オタクの館山ガイドによる樹木、キノコ、野鳥、昆虫のレクチャーを受けながら進んだ先には落差100メートルの三条の滝が! 興奮冷めやらぬまま天神田代、横田代、上田代としっとりとした湿原の道を歩いてクールダウン。尾瀬が見せてくれる様々な表情に感動しきりの一行の旅は、いよいよフィナーレを迎えます。

燧ヶ岳山頂直下のミノブチ岳からの絶景! 眼下に広がるのは尾瀬沼で、右手前に見える建物が沼尻休憩所。沼の向こうに連なる山並みのなか、中央に高くそびえるのは日光白根山だ [00:03 より]
燧ヶ岳の双耳峰のひとつ・柴安嵓上空。尾瀬沼の左側にある湿原が浅湖湿原で、その奥には山小屋がかすかに見える。山小屋の真上に鎮座する山頂の平らな山は男体山 [07:23 より]
朝日にきらめく尾瀬沼沿いの木道を歩いていく。足を止めれば、聞こえてくるのは鳥のさえずりと、沼の上を吹き抜けていく風の音ばかり。早起きのご褒美
燧裏林道は明るい広葉樹の森のなかを縫うように延びる。訪れる人は少なく、静かな山歩きを楽しめる。林道とはいえ、それなりのアップダウンはあるので油断大敵 [13:32より]
燧裏林道のほぼ中間地点にある裏燧橋を渡る。涸れ沢にかかる橋で、下をのぞき込んでもゴロゴロした岩だけが見える。それがまた恐怖心をあおる。揺らさないこと [13:42 より]

渡辺佐智さんと歩く尾瀬沼周遊ハイキング2⽇間

歴史ある長蔵小屋に宿泊し、黄葉の尾瀬沼を周遊する

周囲約9km、最大水深約9.5kmの尾瀬沼は、花の名所として有名ですが、秋には黄金色の草もみじと鮮やかに染まる燧ヶ岳が楽しめます。

今回、渡辺佐智さんが案内してくれるのは、長蔵小屋に宿泊して、尾瀬沼を一周する1泊2日のプラン。沼山峠入口からダケカンバとオオシラビソの樹林を抜けると、視界に広がるのは尾瀬一の広さを誇る大江湿原。風に揺れる黄色のじゅうたんを堪能した後は、宿泊地の長蔵小屋で疲れを癒します。

翌日、メインディッシュの尾瀬沼周遊を楽しみます。大量の水をたたえる尾瀬沼の周りには、浅湖(あざみ)湿原や沼尻平など、高層湿原が点在します。湿原には愛くるしい見た目のヒツジグサが水面に浮かび、さまざまな種類の野鳥が羽を休めています。沼尻平で休憩していると、霧が晴れて燧ヶ岳が雄大な山容を見せてくれました!

樹林帯の紅葉やキノコを楽しんだ後は、長蔵小屋のおしゃれなカフェでまったり。尾瀬沼を満喫した2日間でした。

広大な高層湿原・大江湿原。沼山峠から登り、樹林帯を抜けた先に広がっている。視界が開けて目に飛び込んでくる黄金色のじゅうたんには気持ちが上がる [00:13 より]
尾瀬で最も古い歴史をもつ長蔵小屋には、暖炉のある談話室がある。暖かい空間でコーヒーを飲みながら、山の話に花を咲かせましょう [04:29 より]
尾瀬沼の北岸には「クロベ」というヒノキ科の大木が立ち並ぶ。耐腐朽性が高いので、建築や器具材として広く利用されている [05:40 より]
沼尻平は燧ヶ岳南面の山裾から尾瀬沼の北西岸に向かってなだらかに広がる湿原。点在する大小さまざまな池塘や眼前にそびえる燧ヶ岳の景観を楽しめる [06:40より]
長蔵小屋には別館があり、おしゃれなカフェスペースとなっている。メニューはコーヒーや紅茶、ケーキやスパゲティなど。身も心も休まる [10:49 より]

秋の檜枝岐で体験するアウトドア体験プログラム

豊かな自然のなかで、さまざまなアウトドアレジャーを楽しむ

南会津郡檜枝岐村は、尾瀬への福島県側玄関口に当たります。その名の通り森と水に恵まれた同村では、戦国時代まで遡る歴史と文化が息づき、その豊かな自然のなかでさまざまなアウトドアレジャーを楽しむことができます。ふくしま尾瀬3Weeksの「アウトドア体験プログラム」では、サイクリングツアー、渓流釣り体験、キャンプ場でのアウトドアクッキング講座、焚き火講座、アウトドアギア使いこなし講座という、5つのプログラムを開催しました。

サイクリングミニツアーでは、「ひのえまたツーリズム」の主催者・星 俊秀さんをガイド役に、地域の歴史と文化をテーマにビューポイントを自転車で巡りました。路傍にたたずむ「六地蔵」、木材を組み上げて作った「井籠造り板倉」、子供たちを水難から守ってきた「橋場のばんば」など、解説を聞きながらの興味深いツアーが続きます。圧巻は、なんといっても「檜枝岐歌舞伎の舞台」。江戸時代から続くという奉納歌舞伎の舞台は、どこか神秘的な佇まいをみせ、次回はぜひ実際の舞を見てみたいと期待が膨らむのでした。

渓流釣り体験では、村の釣り愛好家クラブHSCの協力のもと、渓流ルアーフィッシングに初挑戦しました。最初はキャスティングもおぼつかなかった女性2人でしたが、丁寧な指導の甲斐あって良型のイワナを見事にヒット。村内を流れる渓流は透明度も高く、その渓相はとても人里近くとは思えないほど野趣に溢れています。河原で過ごすコーヒータイムが充実した1日を締めくくってくれました。

アウトドアクッキング講座、焚き火講座、アウトドアギア使いこなし講座では、講師に、東京・水道橋にあるアウトドアカフェ&バー「BASE CAMP」の料理人・A-sukeさんを迎えてプログラムを展開しました。アウトドアクッキング講座では、檜枝岐村の名物であるイワナと舞茸を使って、洋風のイワナのホイル焼き、炊き込みご飯のアウトドア料理を体験しました。

焚き火講座では、マッチで擦った小さな火から、徐々に火を育て、安定して火を操るノウハウを学びました。マッチを擦るのも初めてという参加者に、焚き付けから体験をしてもらいました。アウトドアギア使いこなし講座では、基本となるナイフワーク、ロープワークを学び、それを応用して、流木のポールと、レジャーシートを使って日除けスペースを作る、という実践的なノウハウを体験しました。

ミニ尾瀬公園内をレンタル自転車で快走する二人。実川沿いに広がる公園には、湿原や木道、散策路が整備され、気軽に「尾瀬」を体験できる(サイクリングミニツアー) [6:12 より]
豊かな清流の流れる村内には、至るところにフィッシングのスポットがある。実川のキャッチ&リリースエリアはなかでも魚影が濃く、初心者でもフィッシュ・オン!(渓流釣り体験) [8:06 より]
檜枝岐村の特産品、イワナと舞茸を使ったアウトドア料理を、講師のA-sukeさんと作る。ホイル焼きのポイントは、水分のある舞茸を下に敷くこと(アウトドアクッキング講座) [12:26 より]
直火可のキャンプ場で薪を組んで焚き火を起こす。マッチの火から、焚付けの落ち葉、細い薪、太い薪へと徐々に火を育てるノウハウを学び、火起こしを成功させた(焚き火講座) [19:45 より]
アウトドア活動の基本となるのはナイフワークとロープワーク。2種類のロープワークを学び、ロープ、レジャーシート、流木を使ってタープを立てることができた(アウトドアギア使いこなし講座) [25:33 より]

ふくしま尾瀬アウトドアシンポジウム

10月4日(月)午後、福島県檜枝岐村にある「山旅案内所」を会場に、「ふくしま尾瀬アウトドアシンポジウム」をオンライン配信形式で行ないました。

基調講演には、「日本3百名山ひと筆書き グレートトラバース3」を達成したばかりのプロ・アドベンチャーレーサー田中陽希さんが登場し、2019年9月末に訪れた尾瀬地域の三百名山を振り返りながら、ふくしま尾瀬の魅力を語りました。

後半のパネルディスカッションでは、山と溪谷社の神谷有二の進行のもと、田中陽希さん、環境省・檜枝岐自然保護官事務所 国立公園管理官の桑原 大さん、尾瀬ガイド協会・ひのえまたツーリズムの星 俊秀さん、会津駒ヶ岳・駒の小屋の三橋一弘さんが参加し、また途中には、尾瀬沼ビジターセンターの阪路善彦さんとも中継し、「ふくしま尾瀬の魅力と知っておきたいこと10」というテーマで、尾瀬の貴重な自然について語り合いました。