- 構成・文
- 谷山宏典
- 写真
- 杉村 航
- デザイン
- 谷口みずも
- 協力
- ガーミンジャパン
- [PR]
- 2023.12.01
ガーミンのハンディGPSデバイスの最高峰モデル「GPSMAP67i」が今秋発売された。
スマホの登山地図アプリの利便性は年々向上しており、「山でのナビゲーションや道迷い防止にはスマホで充分」という登山者は多いだろう。だが、電波の届かない「圏外エリア」での通信性能の高さを含めて、GPS 専用デバイスにはさまざまな点で優位性がある。今回、多くの登山者が訪れる人気の山域で、スマホアプリとの違いを確かめながら「GPSMAP67i」を使用してみた。その性能や特長を、山岳ライターの立場から紹介したい。
人気の山域や歩きやすい低山でも遭難が多発している昨今、より安全・安心な登山をするためにも本レポートをぜひ参考にしてほしい。
IMPRESSION
樹林帯や谷間でも
高精度な位置情報を取得
目的地にスムーズに到達する、あるいは道迷いを未然に防ぐには、「自分が今、どこにいるのか」という現在地把握が不可欠だ。ハンディGPSやスマホの登山地図アプリを使えば、地球を周回するナビゲーション衛星からの信号を端末が受信し、瞬時に現在地を教えてくれる。
だが、万能に思えるGPSによる現在地把握にも落とし穴はある。カーナビを使って車の運転をしているとき、トンネルに入ると「GPS信号が失われました」という音声とともに現在地を示すポイントが動かなくなることがあるだろう。同じように山でも、深い谷間に入ったり、頭上が鬱蒼とした樹林に覆われていたりすると、衛星の信号が届きづらくなるため、GPSの精度は落ちてしまう。
また、スマホの場合、GPSだけではなく、周辺のWi-Fiやモバイルネットワークなども複合的に利用して位置情報を特定する仕組みになっている。つまり、山の中の電波が届かないエリアではおのずと位置情報の精度が落ちてしまう。「頼りにしていたスマホの地図アプリが正確に使えない・・・」。そんな不測の事態は、普段気軽に登っている身近な低山でも充分に起こり得るのだ。
しかし、ガーミン社から発売されている「GPSMAP67i」ならば、地形的・植生的に悪条件なルートであったとしても、高精度な位置情報の取得が期待できる。
その理由は、ハンディGPSとして初めて「マルチバンド周波数」機能を搭載しているからだ。この機能のおかげで、ナビゲーション衛星から送信される複数の周波数にアクセスでき、信号が弱かったり、反射したりして受信しづらいエリアでも位置情報の精度を高めることができる。また、アクセス可能なナビゲーション衛星は、従来モデルのGPS(アメリカ)、Galileo(EU)、みちびき(日本・補完信号)に加えて、中国のBeiDouにも対応している。
今回の取材で登った両神山は、登山口から谷沿いの道が続くためか、登り始めてすぐにスマホは携帯電波の圏外となり、位置情報の精度低下が心配された。だからこそ、高精度を誇る「GPSMAP67i」は心強かったし、安心感もあった。
秋の山は、地面が落ち葉に覆われて、登山道の判別がしづらい。両神山のルートは、沢の合流点で道が大きく屈曲する箇所や、沢を横切って対岸に渡らなければならない箇所がところどころにある。そうしたポイントで登山道が不明瞭だとルートから外れてしまうリスクが高まるが、「GPSMAP67i」で現在地を把握し、注意すべき箇所では立ち止まって周囲をよく観察することを心がけたおかげで、ルートを見失うことなく、正確なナビゲーションができた。また、トラックを記録しながら登っていったが、その軌跡が滑らかなのも「GPSMAP67i」ならではの特長だと言える。
見やすい
「日本詳細地形図2500/25000」が
プリインストール
地図データがプリインストールされているのも「GPSMAP67i」の強みだ。
スマホの登山地図アプリを使用する場合、Wi-Fiやモバイルネットワークがつながるところで、登る山の周辺の地図データを事前にキャッシュまたはダウンロードする必要がある。キャッシュ(ダウンロード)しないまま、山中の不通エリアに入ってしまうと、アプリを開いても画面に地図が表示されず、衛星からの信号を受信できたとしても「自分がどこにいるか」はまったくわからない。こうしたキャッシュ(ダウンロード)し忘れによるトラブルは意外に多いと聞く。
「GPSMAP67i」は地図データを標準搭載し、事前のキャッシュやダウンロードの必要はない。また、地図データ自体も、国土地理院地形図のデジタルデータを採用した「日本詳細地形図2500/25000」がインストールされているため、2万5000分の1地形図に近い表示で、とても見やすく、現在地やルートの状況を把握しやすかった。
いつでも、どこでも送れる
メッセージ機能
「GPSMAP67i」は、イリジウム衛星を介した通信機能も備え、スマホの不通エリアでも家族や友人に位置情報つきのメッセージを送れるし、相手からのメッセージを受信することもできる。下山が遅れているときや、家族や友人と急な連絡を取らなければならないときなどに、とても頼りになる機能だ。
もし緊急を要するときは、本体側面のSOSボタンを押せば、SOSアラートが衛星経由で24時間365日体制のGarmin応答センターに送られて、救助要請をすることもできる。
過去には、スマホの電波が届かない場所で道に迷ったり、転・滑落によるケガで動けなくなったりして、救助要請ができないまま亡くなってしまうという遭難事例も数多くある。そうした危機的な事態に陥った場合でも、「GPSMAP67i」があれば家族や友人と連絡を取り合ったり、救助要請ができたりするので、自らの命を自分で守ることができる。
大容量バッテリー搭載で、
長期山行にも対応
山で電子機器を使うとき、最も心配なのがバッテリーの持ち時間だ。
スマホの場合、家を出るときにはフル充電だったとしても、1日持ち歩いて、通話や写真撮影、交通情報や天気予報の確認など、いろいろと使っていれば、あっという間にバッテリーは消費されていく。また、気温低下などの環境によってもバッテリーは消費されやすくなる。
実際、今回の登山では、登山口に着いた時点で70%台まで減っており、行動中は登山地図アプリでトラックの記録などを行なっていたため、昼には40%を下回り、山を下りているときには10%台まで下がっていた(長く使っているスマホのため、電池が劣化し、持ちが悪くなっている面もあるが)。これでは登山中に安心してスマホを使い続けることはできないだろう。もちろん予備のモバイルバッテリーを携行して対応することもできるが、山中で数泊する長期山行になれば、重くかさばることになる。
「GPSMAP67i」の強みはここにもある。大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、通常のGPSモードでは180時間(7.5日)、エクスペディションモードでは840時間(35日)という圧倒的なバッテリー性能を備えているのだ。ガーミンのハンディGPSの従来モデルが通常モード35時間、エクスペディションモード200時間だったので、バッテリーの持ち時間は4~5倍以上に向上している。これだけの稼働時間があれば、日帰り山行はもちろん、長期の縦走でもまったく心配はない。
今回は身近な低山で「GPSMAP67i」を使い、その機能性や利便性をまとめたが、雪山登山や沢登り、バックカントリースキーなど、よりアクティブなシーンでもこのハンディGPSが活躍してくれることは言うまでもない。
道迷いなどのリスク軽減、どこにいても家族や友人とメッセージのやりとりができる安心感、そして圧倒的なバッテリー持続時間を考えれば、自分や一緒に登る仲間の安心・安全のために、スマホに加えてもう1台、「GPSMAP67i」を携行するメリットは大きい。
製品紹介
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ガーミン GPSMAP67i
マルチバンド周波数対応により、より正確な位置情報が取得できるようになったハンディGPS。イリジウム衛星ネットワークを介した双方向通信機能も搭載し、スマホの電波が届かないエリアでもメッセージのやりとりや位置情報の追跡が可能に。バッテリーの持続時間は最大840時間で、長期山行でも安心して使える。
- 価格
- 9万9800円(税込)
- サイズ
(高さ×幅×厚み) - 6.2×16.3×3.5cm
- 本体重量
(電池込) - 230g
- ディスプレイ
- 240×400ピクセル、カラーTFT
- 稼働時間
- 10分のトラッキング送信間隔(inReach有効)で約165時間
- GPSモードで約180時間
- エクスペディションモード(inReach有効)で約425時間
- エクスペディションモードで約840時間
そのほかのポイント
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Point堅牢ボディで、過酷な環境にも対応
防水性、耐衝撃性に優れた堅牢なデザインで、過酷なアウトドア環境でも安心して使用できる。
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Point高度、方位、天気など、登山に必要なさまざまな情報を取得
気圧高度計やコンパスなどのセンサーも搭載。メニューページから「高度」「方位」「天気」など登山に必要なさまざまな情報にアクセスできる。
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Pointアプリやウェブサイトと連動
Garmin Exploreのアプリやウェブサイトと連動させておくことで、スマホやパソコンでルートの作成やトラックの管理、緊急時の連絡先やプリセットメッセージの編集ができる。
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PointMapShareで位置情報を常時共有
MapShare機能をオンにしておくと、衛星を介して10分ごとに位置情報が自動的に発信され、家族や友人はいつでもデバイスの位置をスマホやパソコンで確認できる。
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Point衛星通信にはサブスクリプション契約が必要
inReach衛星通信機能を利用するには、事前にサブスクリプション契約が必要となる。契約プランは3種類。月契約も可能なので、その月の山行頻度に合わせてプランの変更もできる。
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よりコンパクトで軽量なGPSモデル
inReachMini2双方向通信とインタラクティブなSOS発信機能を備えた、コンパクトで軽量な衛星通信コミュニケーター(衛星通信の利用にはサブスクリプション契約が必要)。新たに搭載されたトラックバック機能では、同じルートでスタート地点に戻れるようにナビゲート。10分のトラッキングモードで最大2週間のバッテリー持続時間を実現し、長期山行にも対応可能。
- 価格
- 5万2800円(税込)
- サイズ
(高さ×幅×厚み) - 9.9×5.17×2.61cm
- 本体重量
(電池込) - 100g
- 動作温度
- -20~60℃
- ディスプレイ
- 176×176ピクセル、半透過型TFTモノクロLCD
- 稼働時間
- 10分間のトラッキングで最大14日間
- 30分のトラッキング間隔で最大30日