アウトドアで活動するコアなユーザーに愛用されてきたガーミンのinReach。
4月20日に新発売する「inReach Mini 2」は、
小型・軽量ボディはそのままに新たな機能が追加され、
日本語表示にも対応するなど、さらに便利に使いやすく進化している。
その機能性やユーザビリティを体感するため、
昨年12月某日に行なった、ある雪山取材に携行することにした。
山行中にけがや体調不良で動けなくなったり、下山が予定よりも遅れそうなときなど、山の中から緊急の連絡をしたいけれども、スマホが圏外でできない……登山をしていれば、そんな場面に遭遇する可能性はゼロではない。
そんなときに活躍してくれるのが、ガーミンのハンディGPS「inReach Mini 2」だ。
GPSデバイスというと、一般的には「位置情報を知るための道具」として使っている人がほとんどだろう。「inReach Mini 2」も、行動した軌跡(トラック)を記録したり、スマホの専用アプリと連動して地図上で現在地確認をすることができる。特筆すべきは、イリジウム衛星を介した通信機能を備えていることで、スマホの電波が届かないところでも、家族や友人に位置情報つきでメッセージを送ることができるのだ。
今回の雪山取材では、「inReach Mini 2」を使って、東京の編集部と連絡を取り合うことにしていた。まずは登山口で、これから出発することを伝えるメッセージを送る。
メッセージは、事前に登録しておいた「プリセットメッセージ」で送信する。プリセットメッセージならば、デバイスでいちいち文字を入力する必要がなく、ボタンを操作して送りたいメッセージを選択するだけ。厚いグローブをつけている雪山では操作性の面でとても便利だし、余計な時間や手間がかからないのもいい。
メッセージを送る相手(今回はヤマケイオンライン編集部の担当T)のメールアドレスや携帯電話番号もあらかじめ登録しておくことができる。山の中から送信したメッセージは、相手のスマホやパソコンメールアドレスに届く。同時に位置情報も送ることができ、受信者はメッセージとともに、送信者が「今どこにいるか」を知ることができる。なお、通常のメールアドレスと同じなので、受信者側に費用は発生しない。
メッセージの送信を確認したのち、登山を開始する。数日前から強い寒気が南下しており、目的の山の周辺山域でも多くの降雪があったようだ。山の斜面はふかふかの新雪で覆われて、トレースは完全になくなっていた。上部の積雪量によっては山頂までたどり着けないかもしれないが、「ひとまず行けるところまで行ってみよう」と同行者と相談し、ワカンを装着して登りはじめた。
積もったばかりの新雪で、登りはじめからラッセルに苦労させられ、登高スピードはまったく上がらなかった。雪の深さは、だいたい腿あたりだろうか。行動時間は、計画で想定していたよりも倍以上かかってしまう。
途中の休憩時、難航するこちらの状況を知らせるため、再度メッセージを送ることに。事前に登録していないメッセージは、デバイスで文字を打ち込むか、Bluetoothで連動させたスマホで送ることができる。時間と手間を考えれば、後者の方が圧倒的にスムーズだし、楽である。
計画では、12時30分に山頂にたどり着けなかった場合は、往路を引き返すことにしていた。トップを交替しながら、雪をかき分けて必死に登っていく。……が、積もりに積もった新雪のラッセルで徐々に体力が削がれ、ペースはどんどん落ちていく。さらに、天気も悪化し、雪が舞いはじめた。結局、目的のピークに達することなく、引き返し時間となってしまった。
スマホの電波は、登山口では通じていたが、山深くまで入ってきてしまったため、すでに圏外となっていた。けれども、「inReach Mini 2」であれば、何の問題もない。クイックメッセージで、途中で引き返すことを編集部Tに連絡する。Tからもすぐに返信があった。その後は最終バスの時間に遅れないよう、急いで雪の斜面を駆け下っていった。
下山後、メッセージのやりとりをした編集部Tと話をする中で、「inReach Mini 2」を経由して常時連絡が入ってくる「安心感」について次のように語ってくれた。
「当日は大雪の予報でした。こんな日に取材に出て大丈夫かな、とすごく心配をしていたんです。でも、出発時や行動中、引き返し時にメッセージをもらい、しかも位置情報も把握できるので、待っているこちらとしても安心感がありましたね」
自分も、母校の大学山岳部のコーチをしている関係で、学生たちが山に入っている間、緊急時の連絡先窓口を任されることがある。大学の山岳部は長期間山に入り、その間にひどい悪天候が続くと、「学生たちは大丈夫だろうか?」と心配になるし、ときにはほかのOBから「何か連絡は入ってないか?」と問い合わせを受けるたりもする。
しかし、学生たちはたいてスマホの電波が届かない山域に入っているため、待っている側がどれだけ心配しようとも、山の中の状況を知る術はない。そんなとき、双方向通信ができる「inReach Mini 2」があれば、互いに連絡を取り合い、山中の様子や今後の予定などを確認でき、待つ側の不安感はかなり軽減されるだろう。
また、ソロハイカーにとっては、同行者がいないため、自分自身の身に不測の事態(病気やけがで動けない、など)が起こったときには、連絡手段の有無が生死を分ける可能性もある。
スマホの電波状況は年々良くなり、山の中でも通話やメッセージの送受信ができるエリアは広がっている。しかし、当然のことながら、国内のすべての山域を完全に網羅しているわけではない。いざというときのための連絡手段を確実なものとするには、スマホではやはり不充分なのだ。
山に入る登山者自身にとっても、ふもとや街で待つ家族や友人にとっても、山中のどこにいても交信ができる「inReach Mini 2」は、大きな安全と安心をもたらしてくれるギアだと言える。