原始の森
屋久島Destination 1

まるで異空間にやってきたように
濃密な時の流れを感じる屋久島。
太鼓岩の展望が楽しみな白谷雲水峡や
縄文杉へのトレッキングで自然を満喫!

文・写真=大沢成二

原始の森 屋久島
原始の森が広がる白谷雲水峡。森の住民・ヤクシカがこちらをうかがう

洋上アルプスと呼ばれる
屋久島

九州本土南端・佐多岬の先、約60㎞の海上に浮かぶ屋久島は、周囲約130㎞、面積約500平方㎞という淡路島より少し小さな島。その中央には九州最高峰の宮之浦岳をはじめとする多くの峰々がそびえ、その様を人々は洋上アルプスと呼ぶ。

地下で固まったマグマは花崗岩となり、1400万年の時をかけて隆起しながらこの島をつくった。周辺の海は暖かい黒潮で、その上を漂う湿った空気は洋上アルプスの斜面を駆け上がり、雲となって島の上空に多量の雨を降らせる。その雨が屋久島の山肌に深い原始の森をつくってきた。

海岸部には照葉樹の原生林が広がり、1000m付近からは縄文杉など著名な屋久杉(樹齢1000年以上の屋久島に自生する杉)が多く見られる針葉樹林帯、山頂部はヤクザサやシャクナゲが優位になる森林限界へと連続的に変化する。この景観や植生の垂直分布が評価され、屋久島は1993年に世界自然遺産として登録された。

太鼓岩から宮之浦岳(1936m、写真中央やや右)などの山々を見わたす
太鼓岩から宮之浦岳(1936m、写真中央やや右)などの山々を見わたす

幽玄な森が広がる
白谷雲水峡

白谷雲水峡は白谷川に沿って広がる自然休養林で、入り口付近は遊歩道が整備されている。しかし、その先には本格的な登山道が続き、標高約1050mにある太鼓岩まで行けば、屋久島中央の雄大な山岳景色が一望できる。日程や体力の都合でそこまで行けない場合も、歩道の途上には原始の森が広がり、標高850m付近にある「苔むす森」の美しさは屋久島の中でも特別な場所で、一見の価値がある。

木々や苔に覆われた緑の世界・白谷雲水峡
木々や苔に覆われた緑の世界・白谷雲水峡
倒木を乗り越えて根を伸ばすヒメシャラ
倒木を乗り越えて根を伸ばすヒメシャラ

山旅プラン

  1. 1日目

    1. 各地空港
    2. 鹿児島空港
    3. JR鹿児島中央駅
    4. 鹿児島市内
    各地から空路で鹿児島へ。「カゴシマシティビュー」を使って主要観光スポットを周遊。市内のシティホテルに宿泊し、夕食は「さつまち・ぐるめ横丁」をはじめとする豊富なスポットで鹿児島の美食を堪能。
  2. 2日目

    1. 鹿児島中央駅
    2. 鹿児島南埠頭
    3. 屋久島・宮之浦港
    4. 白谷雲水峡トレッキング
    5. 安房
    高速船で屋久島へ。宮之浦港からレンタカーで白谷雲水峡へ向かい、人気のハイキングコースを歩こう。夕食は屋久島ならではのご当地メニューに舌鼓。
  3. 3日目

    1. 安房
    2. 屋久杉自然館
    3. 荒川登山口
    4. 縄文杉トレッキング
    5. 荒川登山口
    6. 安房
    長いトロッコ道や原生の森を歩いて縄文杉に会いに行く。約10時間の本格的トレッキングに挑戦。早朝に出発しよう。
  4. 4日目

    1. 安房
    2. 宮之浦港
    3. 鹿児島南埠頭
    4. 鹿児島空港
    5. 各地空港
    午前中はレンタカーを使って温泉などをめぐり「島時間」を満喫。午後、屋久島をあとに鹿児島へ。鹿児島空港で郷土料理やお土産ショッピングを楽しみ、空路にて各地へ。
山旅プラン MAP

2000年以上の時を紡ぐ
縄文杉

最大の屋久杉とされる縄文杉が広く世に知られるようになったのは1966(昭和41)年のこと。当時は樹齢3000〜4000年とされ、縄文時代から生き続けている可能性があるとして「縄文杉」の名前が定着した。木片の調査によって2000年を超えることが確認されているが、本当の樹齢はわかっていない。

縄文杉は高塚山中腹の標高約1300m地点にあり、標高約600mの荒川登山口から往復で約10時間のロングコース。登山歩道の前半部は森林鉄道の軌道上を歩く。軌道終点の大株歩道入口までは伐採後に再生してきた若い森だが、そこから本格的な登山道になる。ウィルソン株、大王杉、夫婦杉など著名な屋久杉を見ながら進み、世界遺産登録地域に入って最後に縄文杉に着く。

巨木が残るものの、屋久島の森は手つかずの森ではなく、人が伐った後に再生した森だ。50年ほどの若い森から徐々に300年を超える古い森へ至る過程を観察しながら歩けることがこのコース最大の魅力だろう。

長いトロッコ道を歩いていく
長いトロッコ道を歩いていく

魅力いっぱい山麓スポット

屋久島は、里にも多くの魅力的なスポットがある。島の西部には車で行ける世界自然遺産登録エリアが広がり、永田岬の先には1897(明治30)年以来100年点灯している屋久島灯台が目を引く。「日本の滝百選」にも選ばれている大川の滝は、落差約88mで大迫力。また島の南部には湯泊、平内と2つの海中温泉がある。近海ではゴマサバ漁が盛んで、首をポキっと折って鮮度を保った「首折れサバ」の刺し身は絶品だ。名物のトビウオ料理も味わいたい。

大川の滝は滝壺の真下で迫力を感じて
大川の滝は滝壺の真下で迫力を感じて

TREKKING COURSE

縄文杉

歩行時間計
9時間50分
レベル
上級

縄文杉コースは往復で約22㎞、標高差約700m、所要時間は10時間にも及ぶハードなコース。登山口を6時に出発して16時くらいに戻るというのが一般的なモデルケースだ。
技術的には難しくないものの、充分な体力と気力が必要な、本格的登山であることを承知して入山してほしい。ガイドツアーが多く催行されているので、登山初心者はツアーに参加するとよい。自然に詳しい地元ガイドの解説が聞けるので、登山上級者にもおすすめだ。

縄文杉 トレッキングコース MAP

白谷雲水峡

歩行時間計
4時間30分
レベル
中級

白谷雲水峡は入口から最高点の太鼓岩まで往復約10㎞、標高差約400mの中級コース。入口付近には遊歩道が整備されていて、二代大杉や弥生杉などは比較的手軽に見に行ける距離にある。

標高850m付近にある「苔むす森」までなら往復約3時間程度と、日程や体力に合わせてアレンジできるのも魅力。ただし、コース上に複数の徒渉点があり、沢が増水すると閉鎖されることがあるので注意が必要だ。

白谷雲水峡 トレッキングコース MAP
INFORMATION
アクセス
鹿児島空港
空港リムジンバス55分、1300円
南国交通 099-245-4001
鹿児島本港
高速船2時間、1万1600円
種子屋久高速船 099-226-0128
宮之浦港
バス48分、980円
まつばんだ交通
0997-43-5000
屋久杉自然館
バス35分、700円
3~11月のみ運行
種子島・屋久島交通
0997-46-2221
荒川登山口
バス30分、
560円
まつばんだ交通
0997-43-5000
白谷雲水峡

島へはほかに飛行機やフェリーの便もある。島内の移動はレンタカー利用が便利。

登山情報

縄文杉や白谷雲水峡は通年トレッキング可能だが、12〜2月は降雪の可能性がある。屋久島は雨が多いので、レインウェアは防水透湿素材のしっかりしたものを用意したい。縄文杉、白谷雲水峡ともにガイドツアーに参加して、より深く自然に親しもう。縄文杉登山は山岳部環境保全協力金1000円(日帰り)、白谷雲水峡では森林環境整備協力金500円が必要。

観光・宿泊情報

トレッキングはもちろん、ダイビング、シーカヤックなどさまざまなアクティビティのガイドツアーが催行されている。観光協会のウェブサイトなどでチェックしよう。島内には宮之浦や安房を中心とした各集落に宿泊施設がある。リゾート感あふれるホテルやコテージ、郷土料理でもてなしてくれるアットホームな民宿など、選択肢が豊富だ。問合せ先:屋久島観光協会 0997-46-2333