春から秋にかけて花にあふれる尾瀬。春のミズバショウに始まり、秋のリンドウまで次から次へと花が咲く様子は花リレーといわれる。毎日訪れても違った花を楽しめるほど種類が豊富だ。湿原のイメージが強いが、樹林帯や山にも特徴的な植物が多く見られる。
言わずもがな、尾瀬の象徴的な花。早春の湿原を彩り、春の訪れを告げる。尾瀬ヶ原の研究見本園は花の多い穴場スポット。
湿原を黄色に染める夏の花。大江湿原が最も花数が多い。例年、海の日前後が見頃。近年はシカの食害で数が減っている。
ポワポワとやさしく風に揺れる綿帽子。沼尻休憩所周辺の群落がみごと。白い綿毛は花ではなく果穂だ。花は黄緑色で控えめ。
夏には黄色い花で湿原を埋め尽くし、秋には橙色にきれいに染まり草紅葉の主役にもなる。熊沢田代、アヤメ平の群落が特におすすめ。小さな花が星のよう。
沼山峠に多く見られる。森林内の日当たりのよい木道脇に可憐に咲き、雨で濡れると花弁が透けて美しい。
一見するとキノコのような奇妙な花。葉緑素をもたず、ほかの植物に寄生している腐生植物。別名、ユウレイタケ。
白いブラシのような花の集まりが樹林帯でよく目立つ、春の訪れを告げる花。「サクラ」の名前をもつがサクラとはまったく異なる外見。
至仏山や谷川岳など、限られたエリアだけでしか見られない希少な花。よく似たウスユキソウとともに至仏山東面登山道に多く咲く。
燧ヶ岳、会津駒ヶ岳、至仏山と標高の高い山で見ることができる、淡い色がとても愛らしい花。秋に葉が赤く紅葉した姿もみごと。高い山の草地に多く見られる。
至仏山で見られるキキョウの仲間。青紫がとても鮮やかで、蛇紋岩の茶色によく映える。山頂にも咲いている。
会津駒ヶ岳の群落がみごとで、じゅうたんのように湿原を埋めつくす。特に山頂湿原の駒ノ大池周辺がおすすめ。
夏が終わると花は少なくなりますが、紅葉や植物の実を探したりと、秋ならではの美しい景観や楽しみが待っています。
エゾリンドウと共に秋の湿原に最後まで咲くウメバチソウ。スッと伸びた茎に純白の花を一輪つける。根本にはハート型の葉が一枚あり可愛らしい。
尾瀬の花リレーの最終走者。エゾリンドウが開花すると尾瀬の花々は終わりを迎える。湿原に青色がよく映える。
草紅葉の主役のキンコウカ。橙色に紅葉する葉が湿原をきらきら輝かせてみせる。アヤメ平や燧ヶ岳の熊沢田代、田代山山頂湿原の群落は大変みごと。
池塘で真っ赤に紅葉するヒツジグサ。水面に浮かぶ赤い葉が風に揺れ美しい。沼尻や尾瀬ヶ原の上ノ大堀周辺がおすすめポイント。
花と勘違いされることも多いツリバナの実。真っ赤に熟した実が5つに割れ、種子がぶら下がる姿が特徴的だ。実だけでなく赤く色づく紅葉もみごと。
名前の通り真っ白な実をつける。実はサリチル酸という湿布の成分を含み、スッとした香りがする。尾瀬では沼山峠で多く見ることができる。
写真=浅井理人、萩原浩司 文=浅井理人