尾瀬の植物たち

春から秋にかけて花にあふれる尾瀬。春のミズバショウに始まり、秋のリンドウまで次から次へと花が咲く様子は花リレーといわれる。毎日訪れても違った花を楽しめるほど種類が豊富だ。湿原のイメージが強いが、樹林帯や山にも特徴的な植物が多く見られる。

湿原の植物

ミズバショウ
春:5月下旬~6月中旬

言わずもがな、尾瀬の象徴的な花。早春の湿原を彩り、春の訪れを告げる。尾瀬ヶ原の研究見本園は花の多い穴場スポット。

ニッコウキスゲ
夏:7月中旬~7月下旬

湿原を黄色に染める夏の花。大江湿原が最も花数が多い。例年、海の日前後が見頃。近年はシカの食害で数が減っている。

ワタスゲ
初夏:6月下旬~7月中旬

ポワポワとやさしく風に揺れる綿帽子。沼尻休憩所周辺の群落がみごと。白い綿毛は花ではなく果穂だ。花は黄緑色で控えめ。

キンコウカ
夏:7月上旬~8月上旬

夏には黄色い花で湿原を埋め尽くし、秋には橙色にきれいに染まり草紅葉の主役にもなる。熊沢田代、アヤメ平の群落が特におすすめ。小さな花が星のよう。

森林の植物

イワナシ
春:5月中旬~6月中旬

沼山峠に多く見られる。森林内の日当たりのよい木道脇に可憐に咲き、雨で濡れると花弁が透けて美しい。

ギンリョウソウ
初夏:6月上旬~7月上旬

一見するとキノコのような奇妙な花。葉緑素をもたず、ほかの植物に寄生している腐生植物。別名、ユウレイタケ。

山の植物

ウワミズザクラ
初夏:6月上旬~下旬

白いブラシのような花の集まりが樹林帯でよく目立つ、春の訪れを告げる花。「サクラ」の名前をもつがサクラとはまったく異なる外見。

ホソバヒナウスユキソウ
夏:7月上旬~中旬

至仏山や谷川岳など、限られたエリアだけでしか見られない希少な花。よく似たウスユキソウとともに至仏山東面登山道に多く咲く。

ハクサンフウロ
夏:7月上旬~中旬

燧ヶ岳、会津駒ヶ岳、至仏山と標高の高い山で見ることができる、淡い色がとても愛らしい花。秋に葉が赤く紅葉した姿もみごと。高い山の草地に多く見られる。

ヒメシャジン
夏:7月中旬~7月下旬

至仏山で見られるキキョウの仲間。青紫がとても鮮やかで、蛇紋岩の茶色によく映える。山頂にも咲いている。

ハクサンコザクラ
夏:7月中旬~8月上旬

会津駒ヶ岳の群落がみごとで、じゅうたんのように湿原を埋めつくす。特に山頂湿原の駒ノ大池周辺がおすすめ。

秋の尾瀬

夏が終わると花は少なくなりますが、紅葉や植物の実を探したりと、秋ならではの美しい景観や楽しみが待っています。

ウメバチソウ
見頃【花】:8月下旬~9月中旬

エゾリンドウと共に秋の湿原に最後まで咲くウメバチソウ。スッと伸びた茎に純白の花を一輪つける。根本にはハート型の葉が一枚あり可愛らしい。

エゾリンドウ
見頃【花】:9月中旬~10月上旬

尾瀬の花リレーの最終走者。エゾリンドウが開花すると尾瀬の花々は終わりを迎える。湿原に青色がよく映える。

キンコウカ
見頃【紅葉】:9月初旬~9月下旬

草紅葉の主役のキンコウカ。橙色に紅葉する葉が湿原をきらきら輝かせてみせる。アヤメ平や燧ヶ岳の熊沢田代、田代山山頂湿原の群落は大変みごと。

ヒツジグサ
見頃【紅葉】:9月中旬~10月初旬

池塘で真っ赤に紅葉するヒツジグサ。水面に浮かぶ赤い葉が風に揺れ美しい。沼尻や尾瀬ヶ原の上ノ大堀周辺がおすすめポイント。

ツリバナ
見頃【実】:9月初旬~9月下旬

花と勘違いされることも多いツリバナの実。真っ赤に熟した実が5つに割れ、種子がぶら下がる姿が特徴的だ。実だけでなく赤く色づく紅葉もみごと。

シラタマノキ
見頃【実】:9月初旬~9月下旬

名前の通り真っ白な実をつける。実はサリチル酸という湿布の成分を含み、スッとした香りがする。尾瀬では沼山峠で多く見ることができる。

写真=浅井理人、萩原浩司 文=浅井理人