モデル兼YouTuber
山下舞弓さんと登る!
蛇峠山ハイキング&
トークイベント
Sep.
9~10
阿智セブンサミットのひとつ、蛇峠(じゃとうげ)山(1664m)。雑誌やウェブなどで活躍しているモデルでYouTuberの山下舞弓さんと初秋の蛇峠山に登るイベントが2023年9月9日に開かれました。山下さんは自身初の書籍『わたしの山登りアイデア帳』(山と溪谷社)が発売になったばかり。翌日には著書執筆の裏話などを紹介するトークイベントが開かれ、参加者と山下さんが登山トークを楽しみました。
歴史と展望の山、蛇峠山へ
登山当日は台風13号の影響が心配されていましたが、参加者が集まるころには雲の切れ間から青空も見え始めました。星空観賞会なども行われる治部坂峠近くの浪合パークには関東から関西まで各地から参加者24人が集まりました。登山に同行するのは、山下さんのほか、同行する地元の登山ガイド伊藤賢治さんと若林翔さん、阿智☆昼神観光局の酒井優佳さん。顔合わせの後は準備運動で体をゆっくりほぐして、蛇峠山へ出発です。
戦国時代には武田信玄によって軍道が整備された蛇峠山は、南からも北からも望める山とあって、狼煙台として利用された歴史があります。その見晴らしのよさから、現在は国土地理院の電子基準点や、電波塔、レーダー雨量計などが設置されています。「日本百名山」の著者・深田久弥が茅ヶ岳で急逝する前に、最後に頂を踏んだ山としても知られています。
浪合パークからしばらく舗装路を歩き、歩きやすく整備された登山道に入ります。登り始めてすぐに古い時代に造られた人工池という「亀の池」がありました。伊藤ガイドによれば、蛇峠山の周辺には古代から人が暮らしており、遺跡も多いとのこと。この亀の池も貯水池として掘られた可能性があるそうです。まだ夏の気配が残る森の中をゆっくり歩いていくと、トリカブトの紫色の花が道ばたに揺れていました。
緩やかな登りとはいえ、歩き続けるうちにじんわり汗がにじんできます。休憩のときに山下さんがバックパックから取り出したのは、よく冷やしたシャインマスカット。伊那在住の山下さんは、地元信州のもぎたてブドウをみんなに味わってもらおうと隠し持ってきたそうです。大粒の甘いブドウに元気づけられた参加者は樹林帯の登りをクリアし、一面カヤトの馬の背に到着しました。
草原の広がる馬の背は、南・中央・北アルプスや大川入山が展望できるスポットですが、このときは雲に阻まれて山を見ることができませんでした。帰路に望みを託し、さらに登っていくと、大きなレーダードームのある狼煙台に到着しました。ここからは一部深いササをこぐシーンもありましたが、無事に蛇峠山の山頂に到達しました。山頂の展望台に登ってもガスで見晴らしは得られませんでしたが、それでも山下さんと記念撮影をしながら、登頂の喜びを分かち合いました。
狼煙台まで戻り、ヘリポートの広場でお待ちかねのランチタイムです。パスタを調理したり、サンドイッチをつまんだりと、それぞれ準備してきたランチを味わいます。山下さんはここで山ごはんの調理を実演。この日のメニューは、ドライフルーツやナッツをあしらった蒸しパンです。ポリ袋で溶いた生地をメスティンで蒸すテクニックに一同感心しきり。蓋を開け、生地に練り込んだアールグレイの香りがふわっと漂うと、参加者から歓声が上がりました。奇遇にもこの日が誕生日という参加者には、この特製の蒸しパンならぬ蒸しケーキがプレゼントされました。みんなも少しずつ分け合って試食。ふんわりした食感の生地に甘酸っぱいフルーツとナッツの歯ごたえ、紅茶の香りがプラスされて、山で調理したとは思えない一品でした。
ランチを終えて下山するころにはすこし光が差し始め、馬の背まで戻ると、同じく阿智セブンサミットの大川入山(1908m)の山容が見えてきました。ススキの揺れる草原から森の中を下り、浪合パークへ無事に帰着。バックパックを下ろした参加者を待っていたのは、根羽村産の牛乳で作った、コクのある生ソフトクリームアイスです。登山中すっかり打ち解けた参加者同士、きょうのハイキングを振り返りながら、冷たいアイスクリームで疲れを癒やしました。
夜は南信州焼肉BBQ!
ハイキングの後は希望者が参加する親睦会が開かれました。美肌の湯で知られる昼神温泉で汗を流した参加者は、昼神温泉エリアでさまざまなアクティビティを提供する「ACHI BASE」に集まり、南信州名物の焼肉を堪能しました。地元の新鮮な野菜や鶏・豚・牛・羊とバラエティに富んだお肉をバーベキューグリルで焼き始めると、夜風にのっていい香りが漂い始めます。山下さんを囲み、参加者同士で山の話、山道具の話、地元の山自慢などで盛り上がり、あっという間に時間が過ぎていきました。
山下舞弓さん
トークイベント &
サイン本お渡し会
2日目の会場は再び浪合パーク。初めての著書を刊行したばかりの山下さんが、自身の山登りを振り返り、著書への思いや工夫点などを語りました。
16歳からモデルとして活躍してきた山下さんは、もともとはマラソンが好きだったそうですが、20代後半で登山に出合い、山の魅力にすっかりはまってしまったそうです。登山を続けるうちに、山を仕事にしたいという気持ちが芽生え、ついに『ワンダーフォーゲル』(山と溪谷社)で雑誌デビューを果たします。その後はYouTubeチャンネルでも自身の山登りを紹介するようになり、そのあたたかい人柄が感じられる登山レポートや、さまざまな工夫が凝らされたノウハウ動画であっという間に人気YouTuberとなりました。
トークイベントでは、過去の動画の思い出を振り返り、これまで登ってきた山の魅力について話しました。また、昨年9月に企画が持ち上がったという書籍制作の裏話として、2日がかりで19品を作った山ごはん撮影や、何度も案を出し合ったというタイトル決定の苦労話が紹介されたほか、思いがあふれてレイアウトの指定字数に収まりきれなかったという執筆のエピソードに触れた山下さん。参加者は著書のほか、山下さんお気に入りの写真を妹さんがイラストに描き起こしたという限定の手ぬぐいにもサインをもらって、記念撮影を楽しんでいました。
トークイベントの後は山と溪谷社提供のトレッキングポールミニ講座が開かれ、トレッキングポールを使うメリットや注意点、トレッキングポールの選び方などの解説のほか、最新の商品に実際に触れるお試しコーナーも設けられました。参加者の半数以上がトレッキングポールを持っているものの、活用している人はその半分程度で、それぞれに悩みがある模様。「やっぱりザックの中に入るほうがいいね」「カーボンの軽さは魅力的ですね」と、参加者は製品を試しながら自分に合ったポールの選び方、山での使い方についてのアドバイスに耳を傾けました。
地元のおかあさんたちが手作りしたお弁当でお昼を済ませた後は、阿智セブンサミットの山を紹介している「園原ビジターセンターはゝき木館と」、山下さんもお気に入りという「南信州菓子工房」の展示ブースをめぐり、次の旅の参考にしようとパンフレットを集めたり、ドライフルーツを買い求めました。
午後は参加者同士の交流会が企画されました。「私の三種の神器」として、お気に入りの山道具を参加者が持ち寄って、登山ギアについて語り合いました。ウルトラライトスタイルで装備を追求する人や、登山歴数十年のベテラン、お気に入りのブランドのアイテムでそろえる人など、スタイルもさまざま。バックパック、バーナー、スタッフバッグ、テントなどなど、それぞれの道具のよさや使う際の工夫点、思い入れなどを紹介しました。山下さんも今夏、登山で大活躍したという日傘などおすすめのアイテムを披露。参加者は後で詳しく調べてみようと、使い勝手やブランド名などをメモしていました。
阿智村の山登りイベントは季節ごとに山やプログラムを変えて開催されています。リピーターが多い一方で、初参加の人もあっという間に仲間ができるのも特徴で、イベント以外でも、阿智セブンサミットに通い続けている人もいるそうです。これから秋から冬にかけてのイベントも企画されているそうなので、要チェックです!