五平餅、豆腐、おやき、そば……。山に囲まれた阿智村では、きれいな水や空気によって育まれたグルメが人気を呼んでいます。また、山菜やジビエ、川魚といった山里ならではの食文化もあります。シンプルで素材のよさが引き立つ阿智グルメは、下山後のお腹を満たしてくれること間違いありません!
五平餅(御幣餅)
香ばしく焼かれた五平餅。阿智村ではくるみダレを使ったものが多い
五平餅は、半搗き(はんつき)にしたご飯を串に刺し、タレをつけて焼いた、中部地方の山間部に伝わる郷土料理です。もちもちのご飯と、醤油や味噌、くるみなどを使った甘めのタレが香ばしく、食欲をそそります。
タレは、地域ごと、また家庭ごとによって違い、それぞれ独自の味があるそうです。形も、愛知県は小判型、長野県は団子型と違いがあるようで、阿智村はちょうどその境目に位置していて両方の形があるとのことです。
五平餅は古くから祝い事のときに作られたご馳走でした。名前の由来は、この餅を作ったのが五平(五兵衛)という人物だったという説にちなみ「五平餅」と書くほか、神様に捧げる「御幣」に形が似ているから「御幣餅」とする説もあります。
今でも南信州の人は五平餅が大好きで、食事として食べる家庭も多く、一度に10本、15本と買う方も多いそうです。阿智村では、さまざまな飲食店で五平餅を提供しているほか、お土産店でも真空パックで販売されています。
豆腐
丁寧に手作りされた豆腐は、大豆の味と香りが濃厚
山間部にある阿智村では、きれいな水と空気を使ったおいしい豆腐も、名物のひとつです。地元で栽培されたおいしい大豆に加えて、きれいな水と空気があるため、豆腐作りに最適なのです。手作りで作られた豆腐は、濃厚な風味が楽しめるということで、県内外からわざわざ買いに来る方もいるほどの人気ぶりです。
「信濃比叡 門前屋」では、大豆をまるごと使った濃厚豆腐が絶品。また、清内路の「長田屋商店」では緑大豆を使った寄せ豆腐が有名です。油揚げなども人気で、軽く焼いて醤油を少しつけていただくとたまりません。阿智村の自然によって生み出されたおいしい豆腐、油揚げ、豆乳などをぜひ味わってみてください。
油揚げってこんなにおいしかったっけ?と思うほどの濃厚さ。お土産としても人気
そば
のど越しつるつる、香りゆたかな信州そば
信州グルメの代表格である、そば。その発祥地が南信州だということはご存知でしょうか?奈良時代に、山岳修験者の役小角(えんのおづぬ)が伊那市を訪れた際に、もてなしのお礼として、そばの実と栽培方法を教えたのが信州そばの始まりという説があります。
山間地で高冷地が多く、昼夜の気温差が大きい信州は、そばの栽培に最適な土地柄です。稲作に不向きということもあり、昔からそばの栽培が盛んに行なわれてきました。
阿智村から根羽村までつながる国道153号沿いには、おいしいそばの名店があり、さながら「そば街道」となっています。店によって異なるそばが楽しめ、天ぷらや山菜、ジビエなどの料理も出す店があります。ドライブの途中にぜひ立ち寄ってみてください。
おやき
おいしいうえに、具の種類の豊富さも楽しい「おやき」
信州のソウルフードといえば、おやきです。信州に来たら必ず食べるという方も多いのではないでしょうか。実は、おやきの歴史はとても古く、縄文時代の遺跡からも粉を練って焼いた跡が発見されているそうです。山間部ゆえに、そばや小麦が多く栽培され、信州独自の「粉食文化」が育まれてきました。
おやきと言えば、野沢菜の具を包んだ焼きまんじゅうのようなものをイメージする方も多いと思いますが、おやきに明確なレシピはないのです。皮の材料、具材、調理法などは、地域やお店によってさまざま。具材は自由で、皮には小麦粉のほかに、雑穀、そば、米などが使われ、調理も蒸し、焼き、揚げ、灰焼きなどがあるそうです。
阿智村には、囲炉裏で焼いたおやきが食べられる「炭火焼おやき」の専門店があります。おやつにはもちろん、ハイキングのお供に、散策で小腹が空いたときなどにもどうぞ。
スイーツ
山登りや阿智村めぐりで疲れたら、甘いもので一息してはいかがですか?阿智村のカフェやレストランでは、地元素材を用いた、さまざまなスイーツが楽しめます。
フルーツの産地である阿智村では、イチゴ、もも、りんご、栗といった果物が採れ、一年を通してフルーツが楽しめます。新鮮な果物を使ったケーキやドリンク、栗や柿を使った和菓子は大人気!阿智村のおいしい水で淹れたコーヒーやお茶と一緒に味わえば、登山の疲れも癒されて、憩いのひとときが過ごせます。
昼神キヲスクの「湯けむり温泉プリン」は、温泉の湯気をイメージした綿菓子にキャラメルソースをかけると、一瞬で綿菓子が消えてプリンが現われる楽しいスイーツ。その昔、鉄道のトンネル工事で偶然発見された昼神温泉をイメージして、スコップのスプーンでいただきます。
プリンの上に綿菓子が乗った、昼神キヲスクの「湯けむり温泉プリン」
根羽村産のソフトクリームは、濃厚なのに後味さっぱり(昼神キヲスク)
wafuru南信州菓子工房 阿智駒場店は、地元産の旬のフルーツを使ったケーキが人気。冬のいちごを使ったケーキやアップルパイなど、季節ごとのお菓子に加えて、焼き菓子やパンには南信州菓子工房の人気商品のドライフルーツがふんだんに使われています。飯田市で伝統的な製法で作られてきた飴なども見逃せません。
地元の旬のフルーツをふんだんに使ったケーキが人気
ドライフルーツを練り込んだデニッシュも
名水
冷たくてフレッシュな湧き水。「一番清水」は水量も豊富で、村内各地で利用されている
阿智村では、おいしい水があちこちで湧き出ています。特に旧清内路村(現在の下伊那郡阿智村)を通る国道256号沿いには多くの清水があり、清内路の入口のトンネル傍には「信州の名水・秘水」に選ばれた「一番清水」があります。まろやかで柔らかい口当たりの軟水で、地元の県外から水を汲みに来る人もいるほどの人気です。
阿智村のおいしい豆腐、そば、コーヒーやお茶などは、すべておいしい水によって生み出されています。おいしい水は、阿智村グルメの根源なのです。
焼肉
南信州の焼肉は、さまざまな種類の肉を鉄板で焼くスタイルが一般的
南信州人は焼肉が大好きです。飯田市では人口1万人あたりの焼肉店の数が日本一という統計があるほどで、日常の「おうち焼肉」だけでなく、仲間と大きな鉄板を囲んで肉を焼く「焼肉文化」が根付いています。なんと、精肉店がお肉や野菜だけでなく、ガスボンベやコンロ、鉄板なども届けてくれる「出前焼肉」という風習まであるそうですよ!
昔から馬の飼育や羊毛の生産が盛んだったという南信州では、馬や羊の肉が食されてきました。馬の腸を煮込んだ「おたぐり」という郷土料理もあります。そして、山に囲まれた南信州地域では、狩猟によって得られる鹿や猪の肉も大切なタンパク源でした。
今でも精肉店では、牛、豚、鳥、羊のほか、鹿や猪、馬などの肉が売られていますので、珍しいお肉をお土産に買ってはいかがでしょうか。もちろん登山の前や後は、焼肉店でばっちりパワーチャージです!
フルーツ
秋の阿智村はりんごの季節
山間に広がる阿智村は昼夜の寒暖差が大きく、日照時間が長いため、果樹栽培にもってこいの土地柄。春のさくらんぼに始まり、夏の桃やブルーベリー、秋の柿・りんご、冬のいちごなど、四季を通じてさまざまなフルーツが生産されています。最盛期の果樹園を訪れると、南アルプスなどの山を背景に、たわわにフルーツが実るみごとな景色が広がっています。フルーツのもぎ取りが体験できる観光農園も点在しているので、もぎたてのみずみずしい果実を味わう楽しみも。
村内では渋柿をていねいに干して作る市田柿も生産されているほか、パティスリーでは、地元産のフルーツをふんだんに使ったお菓子を味わうこともできます。阿智村の旬を楽しみながら、おみやげも入手できるフルーツ狩りは絶対はずせません。
取材協力・1
信濃比叡 門前屋
信濃比叡廣拯院の参道前に立つ食事処で、御幣餅や豆腐、そばが味わえます。御幣餅は、店内でごはんを蒸し、くるみと醤油、砂糖を使ったタレを使って、一本一本手作りしています。風味豊かなそばや、大豆をまるごと使った「おからを出さない豆腐」も名物。店内に、金運・開運を運んでくれるという「白蛇様」がいます。
- 所在地
- 長野県下伊那郡阿智村智里3614
- TEL
- 0265-44-2258
- 営業時間
- 10時〜15時
- 定休日
- 毎週水曜定休
- リンク
- https://shinanohiei-monzenya.com
「おからの出ない豆腐」を開発した門前屋の店主、熊谷孝志さん
名物の「門前御前」。豆腐や油揚げ、御幣餅、そばなど人気メニューが味わえる
取材協力・2
昼神キヲスク
空き家だった古民家をリノベーションしたカフェ・お土産店。散策中の休憩にぴったりのお店です。カフェの「湯けむり温泉プリン」は、見た目のインパクト満点! 阿智村をはじめ南信州の食品やお酒、小物も豊富に揃っていますので、お土産選びにも最適です。
- 所在地
- 長野県下伊那郡阿智村
- TEL
- 0265-49-0705
- 営業時間
- 9時30分〜17時
- 定休日
- 木曜日
- リンク
- https://hirugami-kiwosk.com/
空き家だった古民家をリノベーションしたという「昼神キヲスク」
南信州産のシードルやワインなどもずらり
綿菓子をカラメルで溶かす演出が楽しい「湯けむり温泉プリン」
取材協力・3
おやき工房 えんまん
夫婦で営む、手作りおやきの専門店。持ち帰りもできますが、すぐに食べる場合は囲炉裏の炭火でおやきを焼いてくれます。具材は、野沢菜、かぼちゃなどの定番から、ピザ、ブルーベリーチーズといった変わり種まで、バラエティ豊かなおやきがそろっています。炭火焼は午後のみ対応。店内飲食不可。電話でのお取り寄せ注文も可。
- 所在地
- 長野県下伊那郡阿智村智里259-1
- TEL
- 0265-43-4564
- 営業時間
- 7時〜18時(※おやきがなくなり次第終了)
- 定休日
- 不定休
- リンク
- https://oyakienman5.wixsite.com/website
ご主人が囲炉裏に炭をおこして、おやきを焼いてくれます
炭火でこんがり焼き目をつけて。外はカリッと、中はもっちりの食感で、焼きたて熱々がおいしい!
取材協力・5
肥後観光農園
標高約800m、阿智村のなかでもひときわ標高の高い伍和(ごか)地区に位置する果樹園で、日照時間が長く、昼夜の寒暖差と清冽な水がはぐくむ四季折々のフルーツが自慢。さくらんぼ、もも、なし、ブルーベリー、かき、りんごなどを栽培しており、なかでも、農林水産大臣賞などを獲得したりんごは絶品です。ふじ、シナノスイート、つがるなど10品種を育てており、8月中旬から11月下旬までりんご狩りが楽しめます。
- 所在地
- 長野県下伊那郡阿智村伍和5045
- TEL
- 0265-43-3001(阿智☆昼神観光局/9時〜17時30分)
- 定休日
- 不定休
- 阿智☆昼神観光局で予約可能
- https://hirugamionsen.jp/activity/
数々の賞を獲得したりんごを育てる肥後進さん
南アルプスを望む肥後観光農園のりんご園