GORETEX(ゴアテックス)特集 雨の山を楽しむ - あなたの登山を支える防水透湿素材 -

GORE-TEXレインウェアを洗濯せずに使い続けた顛末と、知っておきたいお手入れ方法

文=柏 澄子 写真=杉木よしみ デザイン=yucca イラスト=ヨシイアコ

GORE-TEX レインウェアを洗濯したことがある人は、どれぐらいいるのだろうか。定期的に洗濯をし、汚れを取り除くことが、GORE-TEX レインウェアの機能維持に繋がる、ということは取り扱い説明書やwebなどで紹介されており、多くの人が知っていることだ。それでもなお、「いや、洗濯はちょっと……」とためらうのには、理由がありそうだ。「洗濯が面倒」、「洗濯でほんとうに撥水性などの機能がよみがえるのか」、「ウェアが傷むのではないか」、と言った声も聞かれる。連載「雨の山を楽しむ」最終回では、これらの疑問やためらいにお答えできるよう、メンテナンスについて紹介する。

GORE-TEX

GORE-TEX レインウェアを洗わずに使い続けた結果…

 私自身が、メンテナンスの重要性を肌で実感したのは、登山ガイド中のことだった。

 連日の雨にたたられるなか、縦走していたが、顧客のあるひとりのレインウェアの撥水性がほとんどなくなっていた。GORE-TEX ウェアなので防水性はあるものの、生地表面が濡れた状態になり、身体にまとわりついて不快そうだ。また、生地表面の濡れにより透湿性も落ちてきたのか、ウェアの内側に熱気がこもり、汗もかきやすくなっていた。

 夏山といえども、標高があり、シーズン初め。けっして気温は高くない。この先の縦走路を考えると、心配でもあった。

 あまりの雨続きに、いちど下山し、ユースホステルで1泊した。メンバー全員が、ウェアを洗濯し、テントなどの装備を干すなかで、彼女には、レインウェアの洗濯を提案してみた。7年程使っているもので、洗濯したことがないと話していたし、撥水性低下の原因は汚れのように思えたからだ。宿のランドリーには乾燥機もあり、ひと通りの洗濯を終え、翌日また、私たちは山に戻った。小雨降りしきる中であったが、見事に撥水性が回復し、着心地も快適になったと、彼女に笑顔が戻った。周囲が見ても、その違いは一目瞭然で、これは洗濯した甲斐があったと思った。定期的な洗濯が、GORE-TEX レインウェアの品質を保持するのであって、長期間の放置はよくない。

 しかしそれにしても、こういう経験をすると、GORE-TEX プロダクトのメンテナンスの重要性が身に沁みる――。

GORE-TEX レインウェアが撥水する理由

 そこで、今回はレインウェアの洗濯方法と保管の際の注意事項を紹介しよう。

 まずは、レインウェアについている洗濯取り扱い表示を確認し、その内容に従うこと。ウェアのファスナーやベルクロはすべて止め、収納式のフードは出す。

製品によって取扱い表示は違う。必ずチェックしよう

 次に水、または40℃以下のぬるま湯に、液体の洗濯洗剤を少なめに入れ、生地がからまないようネットに入れて洗濯機で洗う。パンツの裾など汚れがひどい部分があれば、前もって、洗剤を含ませたスポンジを使い、叩くようにして汚れを落とす。すすぎは2回以上、いつもより入念に行なおう。洗剤が残ると、洗剤成分が湿気を呼び寄せて撥水性を低下させるからだ。なお、漂白剤、染み抜き剤、柔軟剤は使わないように。

手洗いの場合、もみ洗いはNG。頑固な汚れには40℃以下のぬるま湯が効果的
洗濯機で洗う場合は、ネットに入れて洗うこと

 洗濯を終えたら、軽く脱水し、日陰で吊り干しするか、標準温度に設定した乾燥機を使う。吊って乾かした場合は、アイロンをかけよう。あて布をして低温に設定。乾燥機を使った場合は、アイロンは不要だ。

日陰で吊り干した後にアイロンをかけるか、乾燥機を使って乾かす

 というのは、レインウェアの表面には、撥水基という、細かいうぶ毛のようなものがある。むろん目には見えない小さなサイズのものだが、この撥水基が整った形でしっかり立っている状態であれば、生地には撥水性がある。うぶ毛の上に、水滴がコロコロと転がるようなイメージだ。けれど、汚れや劣化によって撥水基が不ぞろいになったり、倒れてしまうことがある。洗濯だけでも撥水機能は回復するが、撥水基は熱によって立ち上がる性質を持っているので、アイロンや乾燥機は、一層の効果が期待できる。

撥水基のイメージ。汚れが付着すると撥水基が倒れ、機能が低下してしまう

 GORE-TEX ウェアには、耐久性の高い撥水加工が施されているが、徐々にその機能も低下してくる。洗濯や熱を加えることによっても、撥水性が回復しないと感じたら、アウトドアショップなどで販売されている撥水剤を使おう。

 洗濯したレインウェアは、吊るして保管。収納袋に入れてたたんだままでは折りじわができ、その部分が傷みやすい。クルマのトランクなど湿気の多いところに入れっぱなしにするのも避けよう。

 つぎは、フットウェアのメンテナンスについて。

 はじめに、靴の外側の汚れを落とす。ソールの泥は乾いてから、ブラシで落とすのが効果的で、ジャリも取り除くように。表面については、ファブリック素材の靴であれば、布やブラシを使ってぬるま湯で落とす。革靴は、レザー用のクリーナーや保護オイルを革の表面に塗りこみながら、布を使って汚れを拭きとる。

 その後、自然乾燥する。ウェアのように熱を加える必要はないが、自然対流式の乾燥機は使用してもよい。

 防水ワックスやグリスの使用は、透湿性を阻害するおそれがあるので、ゴア社では推奨していない。フットウェアメーカーが推奨するトリートメント剤、ポリッシュ、コンディショナー、撥水剤を使ってほしい。

 保管は、靴箱にしまいっぱなしにせずに、なるべく湿気の少ないところで。

保管は、なるべく風通しの良い場所で

よいものを長く使うために、日頃のメンテナンスをしっかりと

 以上がGORE-TEX プロダクトのメンテナンス方法になる。

 フットウェアは定期的にメンテナンスしている人が多いようだが、レインウェアは、前述のような理由で洗濯をさける人も多い。ゴア社では、汚れが目立ったとき、汚れたと感じたときはもちろんであるが、使用の度に洗濯することを推奨している。たとえ目に見える汚れがなくとも、着用しただけで、汗や体脂で汚れているからだ。登山から帰ってきたら、登山用のシャツもパンツもみな、洗濯するのと同じこと。私自身も、冒頭で紹介した経験のあとは、レインウェアは使用の度に洗濯するようになった。けれど、洗濯によって傷んだという覚えはない。洗濯機に入れる前にはファスナーを閉めて、なるべくファスナーが生地に当たって傷めないように気を使っている。

 洗濯が面倒に感じることもあるが、もし家族で山に行ったときであれば、家族全員分をいっぺんに洗うとよい。アイロンが苦手であれば、レインウェアをコインランドリーに持っていき、乾燥機にかければ手軽に終えることができる。

 せっかく手に入れたGORE-TEXプロダクト。よいものは長く使いたい。色んな山を共にするうちに愛着も出てくるだろうし、丁寧に使いたい。だからこそ、日ごろのメンテナンスをしっかりやっていこう。

柏 澄子(かしわ・すみこ)


登山全般、世界各地の山岳地域のことをテーマにしたフリーランスライター。(社)日本山岳ガイド協会公認登山ガイド。
著書に『ドキュメント山の突然死』、『山登りはなぜ体にいいのか』(山と溪谷社)など。

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